Japanese
KEYTALK
Skream! マガジン 2022年04月号掲載
2023.03.01 @日本武道館
Writer : 蜂須賀 ちなみ Photographer:後藤壮太郎、高田梓、木村泰之
"新曲やります!"
KEYTALK約7年半ぶりの日本武道館公演は、予想外のひと言と「君とサマー」から始まった。前週にリリースされたばかりの新曲だが、そうとは思えない馴染みよう。過去にリリースした夏曲を彷彿とさせるオールスター版にしてアップデート版と言える曲だけに、観客もすぐに順応、またメンバーも早速1番から歌詞を"武道館"に替えている。
このオープニングから、4人は気張らずフラットなテンションだった。まっすぐな歌声を堂々と響かせる寺中友将。声の抜けが素晴らしくヴォーカリストとして進化している最中の首藤義勝。8キロ減量の甲斐もあってか、プレイも身のこなしも軽やかな小野武正(Gt/MC/Cho)。この日のために新調したドラム・セットで臨んだ八木優樹。彼らは年齢も経験も重ねたが、以前よりむしろ健やかでピュアになっているではないか。そして自分たちを大きく見せようとしないライヴによって、バンドの特異性がかえって浮き彫りになっている。例えば、ジャズ/フュージョン的なアンサンブルを現代のギター・ロックとして再構築した初期の名曲「fiction escape」。ひたすらに疾走するポップ・パンクながら、転調が彩りをもたらす構成はJ-POP的な「Cheers!」。1曲に数曲分のアイディアを注ぎ込む過剰とも言える奔放さ、最終的にポップでキャッチーな音楽に落とし込む手腕、すべてを支える4人のプレイヤビリティに改めて驚愕させられる瞬間の連続だ。さらに特筆したいのは、八木、首藤、小野のソロ回しが見せ場の「MATSURI BAYASHI」。ここで小野は、最初の数小節はあえてワウを踏むだけで済ませ、メロディを弾くターンに入ると花道へ駆けだしギター・ヒーローっぷりを炸裂させた。膨大な情報と共に楽しさを生み出すだけに留まらない、抜け感と遊び心も兼ね備えているのが今のKEYTALKの強さだ。
キャリアの節目を彩った曲=「コースター」、「スターリングスター」、「BUBBLE-GUM MAGIC」を過去の映像と共に鳴らす感動の演出の前に、"(メジャー・デビューからの)10年間いろいろなことがありました。リーダー 小野武正の脱退......"(首藤)、"タケちゃんはやめへんよ!"(小野)、"巨匠(寺中)のホワイトニング......(白い歯の寺中がカメラに抜かれる)これからも3人で頑張っていきます!"(首藤)、"おい!"(八木)とやりとりするなど、冗談を言って笑い合うのもいつも通り。一方、ファンから募った写真をバックに「照れ隠し」を届ける、首藤が2度も武道館に立てたのはみんなのおかげと語りながら"自慢のファンのみんなだと思ってますよ"と言う、寺中が"普通な自分だからこそ歌える歌"として新曲「未来の音」を披露するなど、愛と感謝を飾らずに伝える場面も目立った。「黄昏シンフォニー」、「桜花爛漫」、「Monday Traveller」からなるブロックは、今の自分で今までの自分を認め、未来へ進むことがテーマになっていたのでは。
結成当初を振り返ったあと、小野がギターをかき鳴らしながら"今日があるってことは、3回目の武道館もあると思ってます。これからもよろしくお願いします!"と叫び、「太陽系リフレイン」、「MONSTER DANCE」などによるエンディングへ。KEYTALKらしい祭り騒ぎのなか、特に心に残ったのが「shall we dance?」だ。組曲並みの多展開に"やはりこのバンドは突き抜けていて面白い"と笑わされる。同時になんだか泣けたのは、2010年代半ばのバンド・シーンを象徴する存在として登場した彼らが、なぜ身も心も踊れる音楽を志向し続けたのか、その根源が鳴っていたからだ。"踊る皆に幸あれ"。10年後も、20年後も、その願いがKEYTALKと私たちを結んでくれているに違いない。
[setlist]
1. 君とサマー
2. 大脱走
3. 夜の蝶
4. MATSURI BAYASHI
5. fiction escape
6. Cheers!
7. Love me
8. YURAMEKI SUMMER
9. コースター
10. スターリングスター
11. BUBBLE-GUM MAGIC
12. 照れ隠し13. バイバイアイミスユー
14. 未来の音
15. 黄昏シンフォニー
16. 桜花爛漫
17. Monday Traveller
18. 太陽系リフレイン
19. DROP2
20. 夕映えの街、今
21. MONSTER DANCE
En1. shall we dance?
En2. Summer Venus
En3. アワーワールド
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