Japanese
GRIOTTO
Skream! マガジン 2021年04月号掲載
2021.02.26 @渋谷TSUTAYA O-EAST
Writer 三木 あゆみ Photo by 石原汰一
2021年2月26日、TSUTAYA O-EASTにてライヴハウス愛に満ち溢れた対バン・イベントが行われた。TSUTAYA O-Crestのブッカーであるもりただいち氏が、5年前から続けているというこの"GRIOTTO"というイベントは、"かっこいいバンドを集めた、かっこいいイベント"(※ライヴ後のもりた氏の挨拶より)。シンプルだけれども、ライヴハウスに遊びに来る人たちが一番求めているのはきっとそれだ。この日出演したのはKEYTALKとNovelbright。世代もアプローチも違えど、両者共に熱いライヴが魅力のバンドだ。コロナ禍でありながら、ソールド・アウトとなった同公演。大きな声を出せないなど、制限もあるなかでの開催になったが、ライヴハウスは最高だという純粋な想いがひとつの輪になって繋がったイベントだった。

先行はKEYTALK。お馴染みの「物販」をSEに気合十分な様子でメンバーがステージに現れると、みるみるうちにフロアの手が挙がっていく。MC内で小野武正(Gt/MC/Cho)も話していたのだが、KEYTALKはこの日が今年初ライヴであり、コロナ禍になってから初のライヴハウスでのライヴだそう。それもあってか、メンバー全員喜びを隠しきれない表情であり、なおかつやる気満々なオーラを放っている。そして一発、バシッと爆音を鳴らしたあと、寺中友将(Vo/Gt)が"今日は決められたルールの中で、精一杯楽しんでいきましょう!"と声高に放ち、1曲目「桜花爛漫」へ。煌めくサウンドとどこか切なさを感じさせるグッド・メロディを響かせる。そのまま続けて、オレンジ色の光に包まれた「黄昏シンフォニー」、爽やかで瑞々しく、サビでの寺中の深みのある歌声に胸がキュッとなる「アオイウタ」を披露。寺中は久々のライヴということもあり、"最初の3曲、かなりグッときたね。もう、お酒も入っているので泣きそうです"と想いを語っていたが、観客も同じ思いに浸っているように見える。八木優樹(Dr/Cho)の疾走感溢れるハイハットの細かい刻みが痛快な「sympathy」では、小野がステージ内を駆け回り、自由度の高いギター・ソロで魅せる。「MABOROSHI SUMMER」では、普段のような掛け声はできなかったが、観客は手を挙げたり踊ったりして全身でリアクション。また、この曲中、八木がスティックを飛ばしてしまったのだが、それを拾った小野がシンバルを激しく叩き出すパフォーマンスをし、場を盛り上げていたのも楽しく、彼らのライヴの空気感をもろに感じた瞬間だったような気がした。そのまま畳み掛けるようにして「トラベリング」に突入。イントロのギターのリフが鳴ると、"待ってました"と言わんばかりに観客の熱が上昇したのを肌で感じる。首藤義勝(Vo/Ba)の清涼感のある歌声を乗せたキャッチーなメロディと、エネルギッシュでアッパーな縦ノリのサウンドに、踊らずにはいられなかった。メンバーの雑談で笑いを誘ったMCの中、ファンにとってはお決まりの小野による"ぺーいコール"を今回は心の声で行うことに。声を出せない代わりに大きな手拍子が会場に鳴り響き、いつもとは違った一体感を生み出した。そこからラストスパート「パラレル」へなだれ込む。八木はドラム・セットの椅子から立ち上がる勢いで力いっぱいに叩き、首藤と寺中によるツイン・ヴォーカルの掛け合いも熱くエモーショナルだ。そして最後はぶち上がりライヴ・チューン「MONSTER DANCE」。小野はセンターのお立ち台でダンスし、メンバー全員テンションMAXで駆け抜けていく。最高潮の盛り上がりを見せたクライマックスで寺中は、ステージ中央で缶ビールを一気飲み。その空き缶を潰して天に掲げ、清々しい表情で去っていき、ただならぬ熱気のまま、次のNovelbrightにバトンを繋いだ。

後攻はNovelbright。ライヴハウスの中に一気に爽快な風を吹かせるかのように「Sunny drop」から幕開けた。竹中雄大の突き抜ける歌声が冒頭から観客をグッと惹きつける。煌びやかなサウンドの深部に、熱を帯びたロックなバンド・サウンドがしっかりと感じられるのもまたいい。そこから口笛の世界大会で優勝経験のある竹中による口笛のパートが鮮烈だった「Count on me」、雄々しい演奏を聴かせた「おはようワールド」を続投。早くも、その振り幅の広さを存分に観客に見せつける。MCで竹中が、情熱を持ってぶつかり合うことができる対バン・ライヴを"非常に欲していました"と語っていたが、この日の彼らからは、対バン相手のファンをも巻き込んでいくほど凄まじいパワーがビシビシと感じられた。次いで、胸が締めつけられるような美しいメロディと、哀愁のギター・フレーズが刺さる「夢花火」、ピアノの音とより切なさを増した竹中の声が心を震わせる「ツキミソウ」と、バラード2曲を連続で聴かせる。一瞬、時が止まってしまったかと思うくらいに、彼らの演奏に集中し、のめり込んでしまった。Novelbrightはイベント主催のもりた氏と昔からの友人であるという。イベントの規模を大きくするという目標を持つ彼が、その第一歩としてO-EASTでイベントを行うこと、そこに自分たちが出演していることについて、竹中は"感慨深い"と話す。メンバーとの懐かしい思い出も語られたあと歌われた「Walking with you」では、様々な想いも乗せられていただろうか。天にどこまでも響いていきそうな歌声は圧巻だ。さらに、新曲「フェアリーテール」をライヴで初披露。彼らのまっすぐな気持ちを受け取った観客も負けじと拳を掲げて応えていた。"まだまだ俺らは叶えたい夢があるし、主催のだいちはSTUDIO COASTでイベントやりたいらしいから、そのときは俺らも出ようと思ってます"と語り、一緒に夢を追える仲間がいることが幸せだということ、こうして来てくれている観客に向けての想いを伝える。ラストは「拝啓、親愛なる君へ」。大きな声でシンガロングはできないが、ここにいる全員の心の歌声がライヴハウスに充満していることを感じる。眩い光に包まれ、大きな拍手が彼らに送られるなか、彼らはステージをあとにした。
2組の出番が終わったあと、主催のもりた氏がステージに登場。そして、今にも溢れそうな涙をなんとか堪えながらこのイベントについての想いを語った。"こんな若造がライヴハウスは対策をしっかりして安全だって言っても何も響かないかもしれない。でも、僕がただひとつ言いたいのは、ライヴハウスは楽しい場所だってこと。それが伝わったら嬉しい"と熱く言い、観客は熱い拍手を返した。アーティストはもちろんだが、イベントを作り上げる人々もまた、情熱を持って音楽の素晴らしさを守り、伝えているのだと改めて実感したイベントだった。最後にもりた氏は"GRIOTTO、新木場STUDIO COASTで絶対にやるんで、覚えておいてくれたら嬉しいです!!"と伝え、イベントは幕を閉じた。
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