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INTERVIEW

Japanese

THE BACK HORN

 

THE BACK HORN

Member:山田 将司(Vo) 菅波 栄純(Gt) 岡峰 光舟(Ba) 松田 晋二(Dr)

Interviewer:石角 友香 Photo by 新倉 映見

最近、誰が書いた歌詞や曲なのか予測しづらいぐらいバンドとして純度が高まってる


-ところで山田さんにはどんなお題があったんですか?

山田:俺は"バックホーンのど直球な、ストレートなロックの曲を作ってくれ"と。

菅波:"ハードルだけ上げた"みたいなお題で(笑)。

山田:それと"童謡っぽい、ちょっと妖しくてバックホーンにしかできないような曲"っていうのもあって、それもハードル上げてる(笑)。

-(笑)まぁ、これまでもそういうタイプの印象的な曲はあるし。

山田:そうそう。過去曲の例も挙げて"例えばこういう感じの曲、他のバンドはやらないけど、バックホーンの滑稽な感じと妖しさがあるよね"って、お題に応じるように完全にそこは狙って作りましたね。

-ディレクションが徹底してるとも言いますが、欲張りな作り方でもありますね。

菅波:ほんとに(笑)。

松田:今までは合宿とかでそういうお題を掲げて、みんなでイチからやってた部分もあったんですよね。それをやるたびにそれぞれがその1曲にいろいろなイメージを持ち寄ってきて、まとまんないときもあれば、出口が見つかんないときもある。ひとりが全部作って歌って歌詞も書くわけじゃないんで、いろんな要素が入る余白は結果どっちのやり方にもあるんですよ。

-菅波さんがみなさんにお題を振ったのは、最初のアイディアがなるべく尖ったままのほうがいいってことなのかな? と思ったんですが。

菅波:あぁ、そうかもしれないですね。

岡峰:でも取材とか受けてきて言われて"なるほど"と思ったのが、最近、どの曲は誰が書いたとか、どの詞は誰の詞っていうのがちょっと予測しづらいぐらいに、いい感じにバックホーンとして純度が高まってきたのかなっていうことで。

菅波:うん。言われるよね。

岡峰:個性が立ってるんだけど、バンドとしての個性になってきてる。

菅波:それぞれの作家としての個性とバックホーン印みたいなものが、面白く融合すればいいなってアイディアではありました。

-では各々の曲についてお聞きしていきます。「金輪際」の歌詞の主人公は、今の20代を思わせます。

菅波:この曲はちょっと物語仕立てというか、ロック・ファンが週末にライヴあるから頑張ろうと思ってるときの曲なんです。

-「鎖」は山田さんの詞曲ですが、伝統的な感じがします。

山田:これがあれですね。"ストレートな曲を作ってくれ"と言われた答えです。

-ちょっとグランジな感じがしました。

山田:Aメロとかは少しグランジな感じで、サビで開けてちょっと硬質なギター・リフがあってみたいな。

-岡峰さんの「フューチャーワールド」は歌詞がストレートですね。

岡峰:そうなんですよ。現代っぽくもありながら、ちょっと取り残された感もありつつ。

-岡峰さんがこういうテーマで書くのかという驚きもありました。

菅波:「胡散」(『運命開花』収録曲)ぐらいから始まってるのかな。

-SNSが主題な感じもしながら、時代全体の描写でもあって。

岡峰:もとには戻れないですから。インターネットなしの時代にはならないし。ガキの頃はトランシーバーとかあったら最強じゃんと思ってたけど。

菅波:たしかに。トランシーバーのおもちゃあったもんね。

岡峰:今じゃ当たり前に携帯電話があって、もう通話なんかしないっていうね。空中のパイプの中を車が走ってないだけで、思ってた未来にほぼなってるので。

菅波:もう超えちゃってる。

岡峰:超えちゃってるから、そういう感じを歌詞にしましたね。

-そして「ソーダ水の泡沫」は面白い取り合わせですね。松田さんの歌詞に岡峰さんの曲。

松田:これ、ほんとに曲の雰囲気から想像して書いた感じで。思い起こすと『運命開花』のあと、ベストがあったりして、しばらくそんなに歌詞を書いてなかった時期が続いてたなと思ったんですよ。今回、最初から曲を割り振る話になったことで、テーマをひとつ自分の中で決めて臨むのもありかなと考えて。今まで聴く人を意識して書くっていうのはあんまり自覚的にはなかったんですよ。曲の世界観に潜り込んでいったり、自分の中で旬な感じを注ぎ込んだりする感じだったんですけど、どこかで相手というか、それが"あなた"であったり"君"であったり、自分の中の誰かでもあるし、自分たちの音楽を聴いてくれる誰かでもあるっていうことを、そろそろ意識してやってみてもいいかなと思って。

-バックホーンの作品としては挑戦ですね。

松田:これまではあんまりそれを意識すると、歌詞が個人的なものになってしまうっていう観念があったんですよ。その距離感やフォーマットで書く歌詞がありふれたものになるっていうか。そのフォーマットに挑む/挑まないの線引きが自分の中にあって書き出してたところがあって。でも1回そのフォーマットに自分もトライしてみて、誰かがいる、誰かと過ごしてるっていうのを意識してる主人公の歌を書いてみようと思ったんですね。まぁ、誰もが生きてるからそのはずなんですけど。それで、この「ソーダ水の泡沫」に関しては、若かりし頃に"今って最高だよな"って言いながら泣いたり笑ったりはしゃいだりして、でも薄々"これって永遠なはずじゃないんだよな"って思ってる切なさっていうのが、この夏の湿り気感とともにやってきた感じですね。

-少年時代の渦中では書けないものだし。

松田:それはほんとにそうですね。それでやっぱ20年かかったんですね(笑)。

-「ソーダ水の泡沫」から「ペトリコール」は物語シリーズというか、いい流れです。

岡峰:いいですし、不思議ですよね。シラフなのか酔っ払ってるのかわからないような歌詞を山田は書くので(笑)。

菅波:映像の中に入り込んでるよね。

岡峰:"裸のまんま"とか、聴いてると物語を聴いてる感じになる。

山田:やっぱ自分が歌うからメロと言葉の乗り方がわかるし、こういう表情で俺は歌うんだろうなとかわかりながら歌詞を書いてるから、出てくる言葉が限られてきちゃうんじゃない?

松田:逆にそこが一番でしょうね。ほかのメンバーの誰にもできないことだから。

山田:だけど決めちゃってるから違う言葉を置きにくいんですよ。ここは"裸のまんま"っていうメロとの相性は最高だったから、絶対この言葉は使いたいってとこから書き出してるので。

-でも本当に雨が降って土や木々が匂い立つようで、イメージが広がる曲です。

山田:最後はだいぶ壮大なとこまで行きますからね(笑)。