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INTERVIEW

Japanese

cinema staff

2017年05月号掲載

cinema staff

Member:飯田 瑞規(Vo/Gt) 辻 友貴(Gt) 三島 想平(Ba) 久野 洋平(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-ここで、このイマジネイティヴで、余韻のある歌詞を乗せたのは、アルバムとしてのまとめも考えたところがあるんですか。

三島:でも当時から、アドリブながらもこのようなことは歌っていたんです。儚さを抽象的に描いているというか。歌詞は特に深く考えたわけではなく、ポンと出てきたワードを繋いだだけみたいな感じはありますね。この曲に関しては、具体的に描くつもりはあまりなかったし。アルバムに入る云々というのもなかったんですよね。自分が10年前に書いた曲だから、これを世に出していいのかな? っていう思いがあって。ちゃんと世に出す作品にするのに、ある程度のところに達していないと後悔するなという気持ちがあったから。その足りないピースをなんとか歌詞で埋めようっていうのはありましたね。アルバムどうこうというより、自分の中での納得できるところを目指しました。

-また面白いなと思った曲が、先ほど挙がった「メーヴェの帰還」で。歌、メロディでグイグイと引っ張っていく、新鮮な曲ですね。

飯田:たしかに、結果的に歌い詰めな曲になりましたね。この曲は、作っているときから言ってましたけど、"ここがサビだ"っていうサビがないというか。全体を通して、AメロかBメロか、というのが連なっていくので、変わった曲ですね。

-でも、とても印象に残る曲です。曲のきっかけとしてはどんなふうに生まれたんでしょう。

三島:これ、なんで書いたんでしょうね(笑)。変なシンコペーションを使った頭のリフを思いついて、そのままバーッと書いたんですけど。自由にやってくれっていうテーマがあって、その最初の方に手をつけた曲なので、家でポロポロとデモを作っているときにバッと思いついて、それこそキャッチーさとかは何も考えずに書いたらこうなったみたいな。ベースもあまりルートで弾かずに、ずっと動いていたりとか。そういうのを試してみて、できたっていう感じですかね。

飯田:モード的にこういう曲が出てきたのは、久しぶりな感じがしたんです。さっき三島が言っていたように、以前のやり方に立ち返って曲作りをしたときに、どんな曲が出てくるのか聴いてみたいっていうところから、この曲が上がってきて、すごくワクワクしたんです。アルバムを作ってるときも思いましたけど、自由にやる方が三島に合ってるなって。相当大変で、いろいろ悩んではいたでしょうけどね。もしかしたら、このあともプロデューサーを立てることがあるかもしれないけど、三島から自然と出てくるものがcinema staffにとってかっこいいものだっていうのを感じてしまっているので。こういうアルバムになってよかったし、この先のためにもいいタイミングだったなと思うんです。

-ナチュラルに自由に作って、こういった曲がポンと出てくるんですもんね。

飯田:そうなんですよね。普通、ポンと出てくるタイプの曲ではないじゃないですか(笑)。

-アルバムのオープニングでありタイトル曲でもある「熱源」(Track.1)はどうでしょう。いきなり変則的であって心地いいドラム・ビートで始まるところが、このアルバムを象徴しているようにも思います。

三島:あのドラム・パターンには、エネルギーを溜めて溜めて、ドンッと出すっていうイメージがあったんですよね。ビート自体は淡々としていて、そこまで熱源感というか、派手さはないんですけど。今やりたいイメージ、ビートの感じ、ギターの感じっていうのがこれかなって思ったんですよね。

-このドラムのビートが肝ですね。

久野:そうですね。

飯田:うるさいくらいに練習してましたよ、"まだやっとるか!"っていうくらい(笑)。

久野:デモの段階だと、現実的ではない部分もあるので。それを、うまく自分の自然な手順みたいなものに直すというか。それに沿ってないと、気持ちよく音を出せないので、その手順を変えているくらいですね。

三島:僕自身、ドラムの細かいことはわからないんですよ。ただ、デモでそこを整理しだしちゃうと、きっと面白くないから。俺は、わりとむちゃくちゃ作って、久野に矯正してもらう方が面白いんです。リニア・ビートっぽいものがすごく好きで。"ドタツトツト、タタツトツト"みたいな、downyがやってるようなビートっていうか。最近だとskillkillsとかの感じ。そういうビートの構築が好きで、ドラムは打ち込んでいて。それをバンドっぽくしていくというか。

久野:どういう作り方をしてるのか僕は知らないんですけど、そのイメージを壊さないように、一番気持ちよく聞こえる形にしていくという感じですね。今回は、全編そうです。

-アルバムの1曲目としても、またライヴでもインパクトがある曲になると思います。歌については、何か意識したところもありますか。

飯田:歌としては、「熱源」は今までの流れですかね。でも例えば、このアルバムでcinema staffを初めて聴く人を考えたときに、試聴で聴くのって1、2曲目だと思うので。1曲だけでわかるようなバンドじゃないと自分たちでもわかっているし、1曲で判断されるのはイヤだなという思いもあるんですけど。でもそのなかで、この「熱源」がドラムから入って、来るぞ来るぞっていう始まり方は、1曲でもちろん戦えるものだし、「熱源」からの流れを聴いてくれれば、アルバムを手にしてもらえるんじゃないかなと思えるので。決して派手ではないんですけどね。でも、どっしりとした、30歳の年に出すアルバムの1曲目として、相応しい曲だなと思います。

-またこれぞというのが、流れるようなメロディアスな歌と美しいアンサンブルで響かせる「波動」(Track.6)。

三島:これはギターとドラムの兼ね合いがいい曲で、アレンジも任せていますね。

飯田:そもそも三島の作ってきたデモが、もう少しバラード調だったんです。スタジオに入ったときに久野が、"『Vektor E.P.』でこれだけ攻めた3曲を出したところで、このアレンジは違うんじゃないか"と言ったところから始まって。曲自体なしになりそうな雰囲気もありつつ、もう一度アレンジをしてみようかとなった曲でしたね。

久野:これが一番、今までのアレンジの仕方に近いですね。スタジオでやることが多かった。

辻:そうですね。特にこれは、ギター2本の絡みを聴かせたいっていうのがあったので。そこはかなり練りました。

飯田:結果的にこの「波動」も、ある種のバラードではあると思うんです。歌メロが立っているし、歌詞も、生まれてくるものに対してのあたたかさや称賛もあって。その気持ちのいい流れがありながらも、このオケはcinema staffでしかないなっていう。どの曲もそう思えるところはありますけど、この曲はわかりやすくそれが出ているなと思います。