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INTERVIEW

Japanese

cinema staff

2019年09月号掲載

cinema staff

Member:飯田 瑞規(Vo/Gt) 辻 友貴(Gt) 三島 想平(Ba) 久野 洋平(Dr) 高橋 國光

Interviewer:沖 さやこ

-そして6月20日の夕方に三島さんから電話がきて"26日までに曲が欲しい"と言われ、翌日國光さんは2曲分の1分半のラフを三島さんに送ったと。

高橋:曲を作る気分にならないことがよくあるんですけど、この2曲のデモに関してはすんなり入れて。"俺の中のcinema staffはどんなバンドだろう?"というのを頭に入れながら作りました。三島のベース、辻のギター、瑞規君の声に久野君のドラム。そこに僕がどうギターで入ろうか――こうかな、こうかなと考えながら。それがすごく楽しかった。

-その結果、三島さんが選んだのが「斜陽」のラフだったと。なぜこちらの曲を?

三島:単純に、聴いた瞬間にビートが浮かんできましたね。

高橋:......それめっちゃかっこいいね(笑)。

三島:(笑)僕の場合はコードとビートがセットなので、それが脳内で鳴るといい曲という感覚があって。それで仮メロをつけて、フル尺にして、ギター・コードを解釈して2本にして、ビートをつけて戻しました。

-聴いたときに"メロディは三島さんかな"とは思ったんですけど、やはりそうでしたか。

高橋:これにはちょっと深い話がありまして。僕も自分でメロディをつけるようにはなってきていたので、三島からの仮メロが届いて"これを俺の好きな感じに解釈してみよう"って返したら、夜に瑞規君から電話があって。"ほんっとごめんやけど......"って。

飯田:あの電話で"ほんっとごめんやけど......"ってめっちゃ言った記憶がある(笑)。

高橋:"ほんっとごめんやけど、三島が書いたメロディに戻してくれんかな"って......最初は"マジか"ってなるじゃないですか。でも同時に納得もするんです。瑞規君には10年以上ものヴォーカリストとしての積み重ねがある。そのうえで"俺は三島のこのメロディで歌いたい"と言われたので、じゃあいいかなって。だから三島のメロディの余分なところを切るとか、整理する役割を担ったというか。

飯田:ふたりからデモを貰ったとき、本当に衝撃的で、かっこ良すぎて泣いちゃったくらい胸が熱くなって。"ふたりのバランスが完璧だ"、"これは確実に俺ら5人にしかできない曲だ"とすごく感激したんです。俺は三島の歌詞もアレンジもすごく好きだけど、何よりメロディがとにかく好きで、歌いたくなるんです。これはどのバンドにもそんなに思うものではないし、バンド・メンバーだからというわけでもないんですよ。もし仮に三島が他のバンドの人間だったと考えたとしても、"俺がこれを歌いたい!"と感じると思う。それほど三島のメロディが好きなんです。

-三島さんのメロディは優しくて伸びやかな流れがありますよね。それでいてちょっと風変わりな動きをするところがいいアクセントになっている。國光さんのメロディは音符の玉が動き回ることで、美しさを切り取っていると思います。舞台照明みたいだなと。

飯田:國光の作るメロディは歌というよりは楽器のフレーズ的で、それが面白さだと思います。でも、「斜陽」はそもそもがエモい曲だし、自分の気持ちがガツッと乗るのは三島のメロディだった。國光がは三島のメロディに手を加えて、そこに歌詞をつけた状態で送ってくれてたから言うべきかどうかすごく悩んだんですけど......。お願いをしたら次の日、國光は三島のメロディに歌詞をつけて戻してくれたんです。そのスピードにも驚いたし、ありがたかったですね。ふたりの色がよく表れた、完璧なバランスの曲ができたと思います。

-三島さんと國光さんはリスペクトし合うソングライター同士だと思いますが、共同制作することでお互いの才能に気づくこともあったのではないでしょうか?

三島:めちゃくちゃありましたね。國光の感じに触れたのはめちゃくちゃ久しぶりだったし。......告白しますけど、國光が『無能』(2015年リリースのシングル)を出したときに"何してんだよ!"と思ったし、"ふっと湧いた気持ちでやってんじゃねぇ"とも思った(笑)。

-ははは(笑)。國光さんが表舞台から姿を消してからの、cinema staffの歩みや抱えた気持ちなどを考えると、そういう気持ちは少なからず生まれますよね。

三島:嫉妬と悔しさで、國光のソロも聴かないようにしてたんです。でも最初に2曲デモを貰ったとき、國光が何をやりたいかがすぐわかって。こういう立場になった場合、俺は作曲者の意見が絶対だと思っているので、"全部尊重したうえでプラスのことができるな"と瞬間的に感じましたね。対抗心とか悔しさはなく、どうより良くするかに集中しました。でも、それは今だからできたことだと思います。20代半ばではある脚本に対して演出をすることが楽しいなんて思えなかっただろうし、自分が編曲を楽しいと思える人間なんだというのも改めて感じられたし......。俺がcinema staffで作る曲はガチガチで固いんだなとも思いましたね。

-cinema staffはポップネスを持ちながらも、常に硬派な印象はあります。

三島:感覚の話ではあるけど、國光の作る曲やコードには余地がありますよね。意識的に曖昧にしているところ、作り込んでいるところがあって、彼のそういう演出面には刺激を受けました。自分たちのいいところも見えたし、遊びが足りなかったなとも思ったりして。A、B、サビみたいなものにとらわれる必要もないのかな、すごく展開が多かったとしてもいいんだよなと改めて気づかされましたね。