Japanese
BLUE ENCOUNT
2018年11月号掲載
Member:田邊 駿一(Vo/Gt) 江口 雄也(Gt) 辻村 勇太(Ba) 高村 佳秀(Dr)
Interviewer:石角 友香
アルバム『VECTOR』を携えたツアー、そして夏フェス・シーズンを手応え十分に走り抜いてきたBLUE ENCOUNT。彼らから届いたニュー・シングルは、従来のシングル表題曲のイメージを刷新する、ソリッドで今の世界標準のサウンドスケープを伴ったものだった。加えて、歌詞の大半を英語詞が占めているのも特徴的だ。ノンフィクションだがリアリティ溢れる名作"BANANA FISH"のTVアニメ版第2クールのオープニング・テーマとしてすでに話題のこの曲。今の彼らのスタンスを如実に表し、ライヴも大いに楽しみになる強力な武器と言えるだろう。この楽曲が生まれた背景を含めてインタビューした。
-今回の「FREEDOM」はいきなり聴いてもハッとするような曲で。もちろん"BANANA FISH"のオープニング・テーマというお題もありつつだし、アニメの公式サイトでの田邊さんのコメントの熱さも相当なものがありましたが(笑)。
田邊:ハッとされたなら嬉しいです(笑)。もう言いたいことはあのコメントのままなので。最初お話が来たとき、すごい嬉しくて。ただ、その内容的には"むしろBLUE ENCOUNTらしさを殺してほしいです。ソリッドなものを作ってほしい"ということで。"なるほど、逆に言うとこの制作陣の方たちはBLUE ENCOUNTに対してキャッチーだというイメージを持ってくれてるんだな"と思ったんですよ。これまでシングル化してきた曲がキャッチーなものだったんで、そういうものがバンドのパブリック・イメージになってると思うし、逆にそう思ってもらってるからこそ、そういうお題が来たのは嬉しいなと思ってたんですね。でも、むしろ僕らは今回のリクエストみたいなところが得意分野だったりするんですよ。それこそ、注目してもらったのは「HALO」(2012年リリースの2ndミニ・アルバム『HALO EFFECT』収録)って曲だし、わりと洋ものな楽曲は大好物で、高校のときからそういう曲を作ってるバンドだったので。先方からしたら"できます?"みたいな感覚だったと思うんですけど(笑)、すぐ作らせてもらって第1稿で歌詞も曲も決まったし、向こうからしても"なるほど"と思っていただけたんじゃないかなと思いますね。
-それがさらに奇しくも大好きな作品のタイアップだったんですね。
田邊:そうなんです。なので話は早かったですね。言いたいことも全部出せたんで。ここまで無欲に言葉を紡げたというのは、シングルとしてはなかなか異例なんじゃないかなとも思うし、正直「もっと光を」(2015年リリースのメジャー1stシングル表題曲)以来なんじゃないかな、ぐらいの。やっぱアニメの舞台がリアルだから、自分的にもそこに対してグッとフォーカスを当てられて。僕は映画も大好きで、ちっちゃいころから何本も観てます。一番好きなのはリアルな現代劇で、サスペンスとかアクションも好きなんです。そういうのを観て育った人間からしたら純粋に嬉しい話だったので、より書きやすかったですね。このアニメも原作もそれぞれ"守りたい"ものがあって、それがひとつになって......みたいなことなんですけど、この曲もどんどん噛み砕いていくとブルエン(BLUE ENCOUNT)サイドのメッセージにもなるんですよね。Cメロで歌ってる"独りじゃない。と気づけた 僕の「昨日」も"だったり、想いをちゃんと頭に入れて走っていかなきゃいけないんだなっていうのが、メジャー4周年にしてちゃんと自分たちから言える決意でもあるんで。そういう意味で、とても熱い曲なんです。
-スタジアムでやるようなバンドの音像はこういう感じじゃないですか。それをわりと素直にやってる感じはしました。
田邊:結局、自分たちがかっこいいと思ったものを、ライヴハウスでもアリーナとか大きいとこでも好きに鳴らせばいいんだなと思うようになってきたんで。アリーナでやるために作る曲なんてないですからね。"武道館でやるために作る曲ってなんなん?"みたいなこともちょっと思うようになってきて。そういう意味で『VECTOR』(2018年3月リリースの3rdアルバム)を出してからはかなり原点に帰れた感じはしますね。"かっこ良ければなんでもいいよ"って感じで。
-『VECTOR』のツアー(2018年6月から10月にかけて開催した"BLUE ENCOUNT TOUR 2018 Choice Your 「→」")で掴んだ確信がある、と。
田邊:結局すげぇ残酷なんですよね。アーティストがどんなにいいものを作ったって、それに付随してツアーのキャパが埋まるアーティストもいれば、埋まんないアーティストもいて。逆に、いいライヴしたからってCDが売れるバンドもいれば、売れないバンドもいて。だからもう、今は自分たちがやりたいことを明確にしないと、このご時世やっていけないのかなって、より思うんですよね。たぶん、確固たる意志にファンがついてくるというふうになったんで。でも、2年前くらいは"楽しくてなんぼ"みたいなものに人が集まってきていて、今ももちろん入り口はそこでいいと思うんですけど、その入り口を手に入れたバンドっていうのは、4人の演奏とか、僕のヴォーカルに意志が見えてないと人が離れていくと思うんですよね。前回のツアーでは、それがちゃんとできたっていう自信がこの曲にも反映されているかなと。カップリングにもそれが如実に表れてるし、こんなにも表情が違う3曲を入れられたっていうのもなかなかないことでしたし。
-得意中の得意な楽曲だというのもあるのでは?
辻村:そうかもしれないですね。あと、昔よりメンバー各々のやりたいことがなんとなくわかるようになって、"ここはたぶんこうくるだろうな"と思ったら、前まではそこで立ち止まって"じゃあどうする?"ってなってたんですけど、"あ、どうぞ"っていう押し引きが前よりもできるようになってきたので。長年やってきたからこそのメンバー同士の距離感やフレーズ力が出てきたんじゃないかと思いますね。
-下手すると大味になりそうなんですけど、細かいところまでアレンジが効いてますよね。
辻村:洋楽の意識はどこかにルーツ的にあるのかもしれないけど、でも昇華の仕方はBLUE ENCOUNTらしいっていうのが一番だと思うので。
-ここまで英詞の多い歌詞は、従来のシングル曲しか知らない人には驚きでしょうね。
田邊:そういう人が"この曲が好き"ってなったら、これまでの俺らの曲で似た曲を探してほしい。それもひとつ楽しいじゃないですか。自分にとってエルレ(ELLEGARDEN)もそうだったんですよね。最初「スターフィッシュ」で大好きになって、その次にバリバリ英詞の曲を聴いたときにびっくりしたんです。そのあと、それに似た曲を探していって、そこから英詞の曲を好きになっていったりして。それが一番純粋なバンドの聴き方であり、好きになる方法かなと思うんですよ。自分の好きな曲があったら、それに似た曲をどんどん掘り下げていく。それが旧譜を聴いていくことにも繋がると思うので。
-すごくいいタイミングで今回のお題が来た感じですね。
田邊:うん。みんなの中でテーマが最初からあって、"ブルエンらしくないものを作ってください"ってことだから、ほんとにそうしようぜ、みたいな。レコーディングでは最初の英語のAメロのところも何回も歌って、マイクも何回も変えてこだわって。アニメを観てる人がオープニングの1秒目から"これ誰だろう?"って思って、テロップを見て"BLUE ENCOUNTか、面白いなこいつら"みたいに思ってくれれば一番いいと思って。だから、今回は仮レコーディングの段階でもうこの構成になってました。面白いですよね、何年もメジャーでやらせてもらってても未だに"どうしても聴いてほしいんです"って思える。この感覚があるから楽しいし、これを燃料にやっていけたらなと思いますよね。
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