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INTERVIEW

Japanese

BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNT

Member:田邊 駿一(Vo/Gt) 江口 雄也(Gt) 辻村 勇太(Ba) 高村 佳秀(Dr)

Interviewer:石角 友香

配信シングルを含め、アルバムを6曲の既発曲が占めるという、ある種、この2年のベスト的なアルバムとなった『Q.E.D』。それでいて新曲がこのコロナ禍におけるリアリティを反映しつつ、スムーズにアルバム全体の底流する意識を繋ぎ、強固なものにしているのが現在のBLUE ENCOUNTの意識を表している。まだ現実的に厳しい日々は続くかもしれないし、先を見通すことも難しいかもしれない。だからこそ、人として強くやさしく、正直でいたいというのはあらゆる人の願いなんじゃないだろうか。グッとタフで洗練された本作を聴くと、自分の毎日を大事にしたくなるのでは、と思う。

-収録曲に関して言えば、2018年11月リリースの「FREEDOM」まで遡りますが、それらをアルバム・スケールで、何かひとつテーマを掲げるのは難しかったんじゃないですか?

田邊:だから今回はテーマを作らずに作り始めましたね。言わば今のBLUE ENCOUNTのマインドがテーマというか。じゃあBLUE ENCOUNTのテーマってなんだろうなって考えると、包み隠さず、僕という人間、メンバーひとりひとり、人間としてちゃんと音楽を作っていきたい、メッセージを紡いでいきたいという感覚になったというか。昔だったらこういうシーンに向けてやっていこうだとか、音楽業界が今こうだから、こうやっていこうって感覚でアルバムを作ってましたし。けど、去年『SICK(S)』(2019年リリースのミニ・アルバム)を作ったあたりから、そういうのがどうでも良くなってきたというか。そういうのじゃなくて、自分たちがほんとに最高だと毎回言える楽曲を一曲一曲作っていきたいなと思って、去年からずっと作っていて。それを集めたのが今回のアルバムになったって感じなので、自分たちの精神性というか、そういうものを120パーセント投影したアルバムをここまで作れたのは初だったかなと思いますね。

-アルバムのタイトルが謎だったんですが、数学や哲学用語なんですね。

田邊:そうですね。"証明終了"ということでありつつ、でも、証明終了するよりも、証明したかったことというか、"これが今の僕らのテーマです"という感覚の証明、ではありますね。

-"それは示すべきことだった"という意味のラテン語の頭文字からきてるんですよね。

田邊:はい。自分たちでも作ってみて、"これがBLUE ENCOUNTだわ"って腑に落ちたところもありましたし。今までは作ったものに対して、"じゃあ何がBLUE ENCOUNTだろう"って答え合わせしていったっていうのもあるんですけど。なんか"ツアーやんないとわかんない"みたいなのがあって。今回はこのご時世ですぐライヴもできないっていうのもあるんですけど、でも、この『Q.E.D』というものがBLUE ENCOUNTですって言えるような感じにはなってますね。

-コロナ禍になる前から、じわじわ世の中が続いてるんだなというのがよくわかるというか。

田邊:結局、今まであったおぞましいものとか汚いものが今になって浮き彫りになって見えてて。そういうのってずっとあったことなんですけど、このご時世になって、それが粒立っていったので。だから結局、変わらないものを歌ってるんだなと。今の時代性に向けて作った感はありつつ――もちろん言葉とかは今、自分が感じたことを書いてはいますけど。でも、すべてを通して聴くと、時間が経ったあとでも聴けるものになったかなって思いますし、やっとここからさらなるスタートが切れるって感覚でもあるので。

-なんたって1曲目の「STAY HOPE」が、キャリアを積んでるんだけど若いバンドのような感覚のある曲で。

一同:ははは(笑)。

辻村:でもそれは嬉しいですね。初心は常に持ってたいと思うので。今まではそれがキャリアを積んでる色にはなってなかったから。それを同時に曲として捉えてもらうのは俺らとしてはやりたいことのひとつだったので。だからこそ、ライヴでやりたい気持ちも強くなってきますけど。

-しかも、配信ライヴや熊本支援プロジェクトと同じタイトルで。どっちが先だったんですか?

田邊:そのとき(配信ライヴ)にはできてたんですけど、僕的にタイトルは最後に付けるので、いろいろと考えて。"STAY HOPE"という配信ライヴを経て、僕らの中ではその日がまさに希望をまた取り戻せた日で、さらに希望が見えたというか。ツアーが中止になってしまったっていうのはありましたけど、そんなんじゃなくて、俺たちが頑張ってる、気合を入れてる姿をみんなに示すことによって、少しでも希望を持ってくれたらなっていう、バンドとして正当な意気込みが持てたので。その言葉ってすごく大事だなと思ってて、そのままそれを10月に立ち上げた新プロジェクトの屋号にもしましたし。これはまさに今の俺たちの希望というマインドを引っ張っていける曲になったなと思ったので迷わずこのタイトルを付けましたね。

-BLUE ENCOUNTには逆境の中を進んでいくイメージはずっとありますけど、今は自分の弱さについてじゃないというか。今って言わば全人類で戦うべきときだし――部分的にはSNSで顕在化してきたネガティヴな要素も歌われてるけど、それも言わばあらゆる人が向き合ってることだし。

田邊:そうですね。どうしても今って、戦うことをせずに文句ばっか言っちゃってんなって。自分もそうだったので。戦わない理由を不安とか不満とかにして誰かにぶつけそうになってた自分がいたので、そんなんだったら、これで死んだら何も残んないし。ちゃんと生き切って死にたいなっていう思いがすごくあったんです。それに気づき出したのが去年ぐらいからだったから、こうなる前から、自分のマインドはちょっとずつ変わってきてて。それを示さなければいけないっていうので、音楽活動......音楽活動自体もね、やりたくてもやれない人がいて。俺らは今こうやってメジャーって場所でやらせてもらってるからこそ、これをやりきらないわけにはいかないだろう、こんないろんな人に支えてもらってるからこそ、自分たちが何、尻込みしてんだろうって僕がすごく思っていたときに、ちょうどコロナってものが蔓延してしまって。自分たちのライフワークも散々な目にあったとき、その思いがなかったら、僕は結構沈んでただろうなと。僕はそのマインドに出会ったからこそ、このアルバムを絶対に作んなきゃいけないと思ったんです。変わんないところと変わっていくところがわかんなくなってた時期はあったんですけど、なんかもういいやって。とにかく自分たちの作りたいものを作れば、それが俺たちの今の示し方みたいな感じになるかなと思ったので、楽曲は闇雲に作ったって感じはありますね。

-そうでなかったらこれだけ2年にわたる既発曲が新曲とちゃんと繋がることはないのかなと思います。

辻村:それはやっぱり自分らが表現したい軸っていうのがあって。それは別に話さずともお互い理解してるので、みんなヴィジョンが一緒だったから、そういうところで繋がってるんだろうなっていう。逆に軸がブレてて、いろんな曲をただやってたら感じ方も違うと思いますし。自分らも言葉にして伝えづらいところがあるんですけど、BLUE ENCOUNTっていう軸をやっと音で、曲で証明できるようになってきてるから、今回のアルバムになってるんだろうなと思いますね。

-「STAY HOPE」から続く「バッドパラドックス」や「FREEDOM」に全然、違和感がないというか、むしろすごく繋がってるし。

辻村:「FREEDOM」もそんな前だったんだ? って、未だに感覚的には変わってないところがほとんどなので、あんまり時間の経過を感じない不思議なアルバムではありますよね。

-では、新曲を中心にお聞きしたいんですが、「棘」って珍しいテーマかもしれない。

田邊:そうですね。今回の曲たちの中では異質な存在ですけどね。

-テーマがテーマだからか、ちょっとユニークで。

高村:アレンジしたときには歌詞はまだ完全には決まってなくて。サビの歌詞はあったから、恋愛関係の曲になるだろうなぐらいのイメージの中で、各々が想像を膨らませてアレンジ作って、その上に完全な歌詞が乗った感じですね。

-そして内容や曲調に比べてなんですが、一発録り的な近さを感じるんですよ。

田邊:その感じはすごく大事にしたというか。

辻村:珍しくバッキングを1本でいって。いつもは、音像が欲しいから田邊とかも"バッキング、もう1本重ねようかな"って言うんですけど、重ねなかったもんね。1本でいいかもっていう。けどチープじゃない、ちゃんとまとまってる感じがあったので。

田邊:今回はそういう感じでした。なんだろうな、引き算していくことの良さにこの1年で出会えたというのはあったので。ほんとインディーの頃なんて、超足してたしね?

辻村:足してればいいと思ってたからね(笑)。

田邊:それより、その時間をいい音を出す時間に費やすというか。もちろんどっちも正解だとは思うんですけど、僕らの場合は今回の歌とかには特にその作り方がベストマッチだったなというのはあったので。ほんとにまさにこの曲って、おっしゃっていただいた通り、一発録りな感じ、別れの最後の一瞬、二度と来ない一瞬っていうものを切り取ってるので、それに対して生っぽくやって、ラスサビ前になぜかちょっとギミックっぽい電子的なカットの仕方をしたり、そういうのを逆に入れるっていうことをやってみたりして。これもこれで人間味っていうのを反映してるかなと思うんですけどね。