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LIVE REPORT

Japanese

BLUE ENCOUNT

Skream! マガジン 2025年03月号掲載

2025.02.08 @東京ガーデンシアター

Writer : 石角 友香 Photographer:Yamada Masahiro / 浜野 カズシ

結成20周年を機に開催された"BLUE ENCOUNT 20th anniversary tour 2024-2025「 to B.E. continued 」"を2月8日の東京ガーデンシアターのファイナルで完走したBLUE ENCOUNT。インディーズ時代も含めて全てのレパートリーを披露するという意欲的なアプローチが注目されたが、この日も単なるベスト選曲ではなく、インディーズ時代の楽曲や、CDでしか聴けないレア楽曲から最新シングルまでを盛り込み、バンドのこれまでとこれからを鮮烈に表現してくれた。

ポップ・パンクやエモ等、彼等のルーツが窺えるBGMが流れるなか、ステージ前面に張られた幕にモノクロのグラフィカルな映像が投影され、続いてメンバーのシルエットが現れると、大きな歓声が(東京)ガーデンシアターを包む。ショーの開幕に相応しい田邊駿一(Vo/Gt)の開演のスピーチのようにも聴こえる「LAST HERO」でスタート。幕が落ちると、広いステージでありながら、どこかライヴハウスのように見えるラフなセットが姿を現す。

エンディングからそのまま「DAY×DAY」になだれ込み、歓声とクラップの大きさにこの曲の求心力を再認識させられる。4人の音がそれぞれ際立つ音響も痛快で、特に江口雄也(Gt)のオブリガートのクリアさに耳が惹き付けられる。そして「ワンダーラスト」ではメンバーの表情が左右のスクリーンに映し出され、序盤からロケットスタートを切ったことがヴィヴィッドに伝わった。

一転、鋭いギター・リフが空間を引き裂き、ダーク且つヘヴィな最近のナンバー「有罪布告」へ。罪の重さをまるでベースの質量で表現するような辻村勇太の音作りもいい。ライヴ全体を通して、彼のベースが作り出す空間の質量や色は派手なギミックを排したステージを飽きさせない強さがあった。

さらにそのダークさをリビルドされた「HEART」でも体現。まるで4人で巨大な排出量のバイクに乗っているような演奏で駆けていく。そしてこの日最初の意外な選曲は2013年にブルエン(BLUE ENCOUNT)とMY FIRST STORY、AIR SWELL、SWANKY DANKでリリースしたスプリット・アルバム『BONEDS』収録曲「JOIN」。現在はCDでしか聴くことのできないナンバーで、後のMCで田邊がこのCDを持っているファンに挙手してもらっていたが、その数はごく僅か。筆者もライヴで知ったのだが、田邊がレスポールを弾いていることの意味が伝わる分厚いサウンドや江口のSEめいたギター・サウンド等、全てがユニーク且つ緊張感のある1曲だった。

高濃度なのに冗長なところのない演奏が保たれ、「D.N.K」では曲の途中で田邊がインディーズ盤で弾いた謎のギター・ソロをここで10年ぶりに披露すると宣言。実際、ワンフレーズだったが、本人は非常に緊張したらしい。そこからいい流れで、この日一番の大きなクラップが起きた「VS」へ。ラスサビでハンドマイクにスイッチした田邊がフロアの壮観を確かめていた。そしてこのツアーならではの選曲である江口ナンバー「The Chicken Song」の青春っぽい瑞々しさ。

巧みなフレージングももちろんだが、シンプルな曲での高村佳秀(Dr)のタイトなビートが心地いい。ちなみに江口はツアーの序盤でやると思っていた自分の曲をファイナルにセットされたことに軽く文句をつけていた。このセクションの最後は田邊の生き方とリアル・ストーリーを綴った「city」が、より明快に届くホールという環境でその場にいる人をロック。自分が生きることの意味を発見するプロセスを描いたこの曲に泣いている人も少なくなかった。まさに20周年ツアーのファイナルに欠かせない1曲だと強く感じられた。

緩急のあるセットリストの中盤には聴かせる楽曲を用意。田邊が2017年に豊洲PITで開催した着席スタイルの"静寂の椅子エン"を振り返り、オーディエンスを着席させる。初めは田邊がギターを爪弾きながらの「DESTINY」、ここまでほぼ4人の音で鳴らしてきたライヴにシンセやストリングスの同期を加えたことで景色が変わった「ユメミグサ」、大きなラヴ・ソングでありライフ・ソングでもある「YOU」も、ここまでの流れを受けて、より説得力を増した印象だった。

満たされた表情のメンバーと、フロアから上がるメンバーへのコール。中でもニューヨークから一時帰国し、今回のツアーに参加している辻村の彼の地でのMCは注目の的。音楽を通じていろんなミュージシャンと交流を持っていることを伝え、さらにこの日のオープニングSEを時間のないなか、高村とともに作ったことも明らかに。メンバーの1人が海外で活動するという珍しい状況はむしろ4人が揃って制作やツアーをする時間を輝かせているように映った。

絶妙にこの4人でなければ成り立たない演奏や空気感を確認したところで、畳み掛けるようにライヴは終盤へ。せき立てられるようなリフとビートの重奏感で突っ走り、サビで開放的されていく「chang[e]」、しなるムチのようなビートと危機感を煽るようなギター・リフに磨きを掛けた「バッドパラドックス」もライヴでの求心力を高め、サビでオーディエンスが一斉にジャンプする景色は壮観だ。

間髪入れず「Survivor」に突入。キラーチューンの畳み掛けは続く。マイナー・チューンの連発は「ポラリス」まで続き、ファストでエモーショナルなナンバーの中にあるブルエンならではの展開のキャッチーさと現在のメンバーが出す音と演奏が一体となって、これまで観てきた彼等のライヴの中でもシンプルに圧倒される場面になっていた。アンサンブルの頼もしさなのだろう、田邊のロング・トーンの熱唱も非常に力強かった。

ホールの隅々を見渡しながら、大きな笑顔を見せる田邊は"20年やってても毎回、あなたに驚かされる"と、強い人間ではない自分たちが強くなったと勘違いできるからこそ、バンドのこの先に様々な想像を膨らますことができるのだと。それがバンドを駆動させる答えだと、「ANSWER」を披露した。ブルエンを象徴する曲でもあり、ファンにとって自分の隣で並走してくれるようなこの曲が本編終盤に演奏されたことの意味は大きかった。さらに生きる才能を祝福する「gifted」が加わった2025年という現在地。まだまだこれからライヴで浸透していくであろうこの曲を本編ラストにセットしたことに、ここから続いていくバンドの意思表明を見た思いだ。

アンコールではニュー・アルバム『Alliance of Quintetto』を携えたアルバム・ツアーを発表。田邊が各会場を読み上げるたびにホールのそこここで歓声が上がり、遠征してきたファンの多さを知ることに。次の約束に沸くなか、最新シングル「Bloody Liar」の披露で、新しいツアーへの期待を高め、反町隆史とのコラボで令和に蘇らせた「POISON」を無邪気なニュアンスで披露。そしてラストにはまさに20周年ツアーのファイナルに相応しい「はじまり」で幕を閉じた。テーマが相応しいだけでなく、今が最も4人のアンサンブルの状態がいいこと、それが嬉しかったのだ。

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