Japanese
THE BACK HORN
2015年09月号掲載
Member:山田 将司(Vo) 菅波 栄純(Gt) 岡峰 光舟(Ba) 松田 晋二(Dr)
Interviewer:天野 史彬
-僕も、この「悪人」の最後には救いがあるというか、闇があるからこそ光を目指す感覚が描かれているんじゃないかと思ったんですけど、それは、もうひとつの表題曲である「その先へ」にも通じることで。この曲はTHE BACK HORNというバンドの歩んできた道のりの中に、闇から光へ進んでいく感覚が描かれた曲だと思ったんです。
菅波:「その先へ」は、ある意味、バンドの自伝的な曲ですけど、サビの頭に出てくる"君の声"っていうフレーズが書けたときに"あ、曲になった!"って自分の中で思ったんです。自分たちが歩いている姿だけを描くことに全然ピンときてなかったんだけど、"君の声"でピンときた。ここでの"君"っていうのは、応援してくれているファンの人かもしれないし、バンドマンの仲間かもしれないし、スタッフの人たちかもしれないし、初期衝動を持った、かつての自分かもしれなくて。"いけ!いけ!"って自分の背中に言ってくれる、自分たちを進めてくれるすべてを"君"って書いたんです。
-そもそも、バンドの自伝的な要素が詞に出てきたのは、どうしてだと思いますか?
菅波:なんでだろう......ほんと、振り返らない性格なんですけどね(笑)。ただ、最初にも言ったように、リアルなものが描きたいっていう気持ちが今回はすごくあって。自分がバンドを通じて感じてきたことも、やっぱりリアルなものだよなって思ったんですよね。この曲は、ギター・リフが最初にできたんですけど、このリフが呼んだっていう感じもするんですよ。このギター・リフ自体には、俺にとってのロックへのロマンというか、自分の中のロックのギラギラ感を込めたんです(笑)。めっちゃシンプルだけど、でも、"ロック・バンドを描けばいいんじゃないか"って、このリフが導いてくれたというか。
-この曲で歌われる"バンドと君"の物語は、みなさん全員が見てきた景色なのかなって思うんですけど、菅波さんからこの曲が出てきたとき、どう思いましたか?
松田:"リハスタの喫煙所"っていう部分で、昔、すげぇタバコ吸ってたなぁ......って思い出しました。
-ははは(笑)。
松田:やっぱり、原点回帰したり、昔を振り返って何かを懐かしむっていうことが好きじゃないんですよ。そこからは何も生まれないから。昔を思い出すこと自体は、自分たちの道しるべを測るうえで大事なことだと思うんですけど、照らし合わせる場所として昔のことを思い出しても、向かうべき場所は今よりも先だっていう、それがTHE BACK HORNとしての時間軸の捉え方なんですよね。先じゃなくても、今を照らすために、今をリアルに感じるために、旅が始まったころの出発点を思い出すことはあるというか。そういう意味では、昔を振り返ることは多いと思うんですけど、でも、そこにこうやってバンドが活動し始めたころの景色が混ざり合ったことは、今までにもあまりなかったなって思いましたね。 岡峰:俺はバンドの最初期からいたわけではないんですけど、この曲に出てくる"1998"っていう単語は、THE BACK HORNが結成された年でもあり、自分が東京に出てくるのと同じタイミングでもあるんですよ。だから、自分にも照らし合わせることのできる曲だなって思いましたね。東京に出てきて、もがいて、食らいついている......その感覚って、自分もそうだし、バンドもそうだし、もちろん、いろんな人にあるだろうし。でも、それが今の原動力には絶対になっているんだろうって思う。スコーンと何もかも上手くいっていたら、こんな曲は生まれないわけで。初期衝動はすごく感じましたね。
-山田さんはどうでした?
山田:この曲は、今のTHE BACK HORNだから歌えるんですよ。闇をひとりで抱えてきて、それが爆発したのが昔のTHE BACK HORNだったけど、今は"共にゆこう"って力強く歌うことができる。"いろいろある。だけど行こう"って。
-やっぱり、"だけど"の部分は重要だなって思いますか?
山田:うん、そこが力強いんだと思う。綺麗事じゃないから。
-「その先へ」にはバンドの初期衝動がある。でも、それは懐古目的ではなくて、バンドの今と未来を照らすためのものでもある――さっきの「悪人」の話も合わせて考えると、このシングル自体が、THE BACK HORNの核を表現したうえで未来を示す、エポックな作品だと言うことができると思うんです。みなさんの中で、初期衝動っていうのは、常に更新されていくものとして存在していると思いますか?
山田:その瞬間を自分が思うように生きていくのが、結局、1番いいんだろうって思うけど、でも衝動って、絶対に薄れるし、廃れるから。衝動が輝きだとしたら、それを光らせ続けるためには、アクションとして何かをし続けなければいけない。そのために新鮮なものに触れたり、失っていた視野を取り戻すことが重要なんじゃないですかね。 松田:うん。更新されたら、それはもう初期衝動ではないけど、でも絶対、別のものにはなっているんだと思う。俺の場合は、なんかもう、意地に変わっていくというか(笑)。いい意味で自分を縛りつけるものとして存在し続けるんだと思います。でも、それもやっぱり、ひとつのパワーじゃないですか。初期衝動が瞬間の輝きであったとするなら、その最初の火種を光らせ続けるのは、意地という力なんですよね。自分も、東京に出てこようと思ったのが初期衝動なら、なにがなんでも東京にしがみついて、東京で死んでやろうという......それはもう、意地ですよね。初期衝動は一瞬のものだけど、それが意地に変わっていくし、その続いていく力の方が、俺は強いと思う。
-衝動があり、意地があり、それが今を作っているのだとすれば、"THE BACK HORNらしさ"を追求した今回のシングルも、現在進行形、最先端のTHE BACK HORNの作品として生み出されたということですよね。
松田:うん、やっぱり新しいものとして生まれていると思います。そもそも、1分1秒と時間が進んでいる以上、同じようなものなんて生まれないと思うんですよ。今までの歩みの中で、"なんなんだろう?"っていう、わからない状態をそのまま形にした作品もあったと思うし、渦の中でもがきながら作ったものもあると思う。そうやっていろんな作品を作ってきて、結成から時間を経た今のタイミングで、THE BACK HORNっていうバンドの始まり、そして自分たち自身を見つめた結果として、このシングルはできていると思うんですよ。もちろん、このシングルを聴いて"THE BACK HORNって、やっぱりこういう感じだよね"って思う人もいると思うけど、でも、それ以上に新しいものとして提示できるんじゃないかと思いますね。
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