オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【最終回】
連載開始から、早5年経つこのコラム『火星から来た漫読家』。
わたくしオワリカラ・タカハシヒョウリにとって人生初の「連載」というものでした。
「連載」、正直言って、嬉しかったな。
15歳でバンド音楽に出会うまで、漫画を読むのも描くのも好きで「漫画家になる!」と公言してやまなかった「漫画家志望の中学生」だった。
その頃は「いつか連載を持つ」っていう事は、夢そのものだった。
それは漫画家志望の中学生でなくなった今も変わらず、この『火星から来た漫読家』でこうして漫画にかかわるテーマで「連載」をやれるってことは、そりゃもう嬉しかったわけです。
漫画を描く人でなく、漫画を読む人として連載を持つとは、ちょっと予想外だったけども。
しかし連載がはじまったら、かならずやってくるのはその連載の終わり。
連載は終わる。
今続いてる漫画も、いつかかならず終わる。
連載には必ず終わりが来る。
「連載終了」という終わりが。
そんなわけで今回紹介するのは、漫画の終わりを描いた巻来功士先生の書き下ろし新作『連載終了!』という漫画です。
「巻来功士」って言われてもあまり知らない~という人が多いと思うんだけど、この『連載終了!』のサブタイトルに『少年ジャンプ黄金期の舞台裏』とあるように、
80年代・まさにピッカピカの黄金期を迎えていた週刊少年ジャンプに連載していた漫画家で、代表作は神と悪魔の戦いを描いた『ゴッドサイダー』やサイボーグによる復讐劇『メタルK』。
独特の緻密で安定した画力(つまりうまい)と、少年誌とは思えぬエログロでショッキングな作風(つまり変)の漫画でジャンプ黄金期を支える柱の1本となった。
しかし、その異色っぷりが「少年誌に合わん!」と判断されて、彼の作品はほとんどが「連載終了!」を告げられ短命で終わり、のちに青年漫画に活動の場を移したのだ。
そんな自身の少年漫画家時代を、編集者とのやりとりまで赤裸々に振り返った自伝的漫画がこの『連載終了!』だ。
もちろんただの「挫折の記録」ではなく、この漫画が面白いのは2人の漫画家の存在がこの漫画を運命的にしているからだ。
1人は、『北斗の拳』で社会現象級の人気を獲得した原哲夫。もう1人が今も続く人気シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦。
この2人は巻来功士と同じ時期に週刊少年ジャンプに連載を持って交流していた同期の漫画家。
それだけでなく、緻密で安定した画力、ホラーの要素を含んだ異色なアクション漫画、とそれぞれと似た要素を持った「同じジャンルの漫画家」なのだ。
そして、『北斗の拳』『ジョジョの奇妙な冒険』は今でも誰もが知っているような漫画になり、『ゴッドサイダー』は地道な人気を獲得しながらもその影で「連載終了」となった。
その運命の皮肉を最も現しているシーンがこの漫画には出てくる。
巻来功士の担当編集者が「1つの雑誌にホラー漫画は2つもいらない。ジョジョとゴッドサイダー、人気が無い方は終わっちゃうよ」と巻来功士に伝えるシーンだ。
『ゴッドサイダー』は『ジョジョ』のライバルだったのだ。
しかし2つの漫画は、結果的にまったく違う道を歩んでいく。
このシーンは『ジョジョ』という大人気漫画(僕も死ぬほど好きですが)の裏で、数多の漫画が淘汰されてきた漫画界の残酷さや、芸事の世界の厳しさを鮮やかに見せつけてくれる。
ジョジョを読んでるときはもちろん「この裏でゴッドサイダーが打ち切られたんだなー!」なんてことは考えることはないけども、そんな今まで考えた事もないような視点からの映像を見せられたようなシーンだった。
僕たちの知らない裏側でどんな悲喜劇が繰り広げられているのか覗ける、漫画好きにはぜひ読んでほしい「漫画の終わり」の物語。
さて、このコラム『火星から来た漫読家』も、今回で「連載終了!」となります。
区切り良く5年目の30回、HUNTER×HUNTERも連載再開して冨樫先生も仕事してるってことで、ある意味良い時期だから、ここはおとなしく退場して隠居を......というほどしおらしい性格でも無いので、またどこかで続きをやれたらなーと思っている。
なぜなら、漫画好きだから。
このコラムが無くても、これからも変わらず探して読むし、漫画の話がしたい。
だから、火星から来た漫読家志望はまだ火星には帰らず、しばらく地球で真の漫読家を目指して読み続けようと思います。
またどこかで、こんな風に漫画の話をしよう。
漫画の話って最高だよな。
そんな最高の空間を作ってくれたSkream!に心から感謝しています。
そして読んでくれてた、物好きなあなた。
たぶん僕の音楽活動からここにたどり着いて読んでくれてた人が多いと思う。
僕は5年間経った今も変わらずオワリカラのバンド活動や音楽活動に夢中霧中の毎日だ。
大変さは変わらないどころか、日を増してマシマシになってる気すらする。
周りには無くなったバンドがたくさんいて、同世代にはすごく有名になったバンドもいると思う。
オワリカラは結成8年目の今年に、メジャーデビューしたりと、何やら不思議な裏道を歩いているみたいだ。
『連載終了!』の中にこんなイメージシーンがある。
巻来功士がニワトリの姿で地面を耕しながら暮らしていると、頭上を無数の鳥たちが華やかに飛び去っていく。
かれらの身体には、あの漫画やあの漫画......天下を取った漫画たちのイメージが浮かぶ。
天に昇れぬニワトリは、「オレにはオレの道がある」とつぶやいて地面を耕す。
僕にはまだ、「オレにはオレの道がある」とつぶやく気はない。
天を目指して目指して目指しきった人だけに許されるセリフだと思うから、それは。
まだまだバタバタ羽ばたく日々が続きそうだ。
その息抜きは、その活力は、漫画を読んでチャージするのだ。
それでは、また会う日まで。良き漫読家ライフを。
読んでくれて、ありがとう!
すべての漫画と漫画家に敬意を込めて
タカハシヒョウリ
ご愛読ありがとうございました!
タカハシヒョウリ先生の次回作にご期待ください!
Related Column
- 2016.07.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【最終回】
- 2016.03.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第29回】
- 2016.01.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第28回】
- 2015.11.20 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第27回】
- 2015.09.19 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第26回】
- 2015.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第25回】
- 2015.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第24回】
- 2015.03.09 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第23回】
- 2015.01.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第22回】
- 2014.11.12 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第21回】
- 2014.08.31 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第20回】
- 2014.07.04 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第19回】
- 2014.05.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第18回】
- 2014.03.05 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第17回】
- 2014.01.16 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第16回】
- 2013.11.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第15回】
- 2013.09.07 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第14回】
- 2013.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第13回】
- 2013.05.03 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第12回】
- 2013.03.26 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第11回】
- 2013.01.22 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第10回】
- 2012.09.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第9回】
- 2012.07.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第8回】
- 2012.05.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第7回】
- 2012.03.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第6回】
- 2012.01.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第5回】
- 2011.11.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第4回】
- 2011.09.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第3回】
- 2011.07.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第2回】
- 2011.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第1回】
LIVE INFO
- 2025.03.04
-
片平里菜
三四少女
礼賛
輪廻 / マリンブルーデージー / CARAMEL CANDiD / サブマリンオルカ号
ZOCX
This is LAST / the shes gone / reGretGirl
サティフォ(ONIGAWARA)
- 2025.03.05
-
Apes
アイナ・ジ・エンド
Yogee New Waves
マカロニえんぴつ
Cody・Lee(李) / 浪漫革命 / SKRYU
SIX LOUNGE
UNISON SQUARE GARDEN
- 2025.03.06
-
片平里菜
Yogee New Waves
マリンブルーデージー
三浦透子
アイナ・ジ・エンド
a flood of circle
マカロニえんぴつ
荒谷翔大 × 鈴木真海子(chelmico)
SAKANAMON
UNISON SQUARE GARDEN
- 2025.03.07
-
フラワーカンパニーズ
四星球
THE YELLOW MONKEY
ビレッジマンズストア
kobore
礼賛
カメレオン・ライム・ウーピーパイ
SCANDAL
THE BACK HORN
OKAMOTO'S
w.o.d.
ズーカラデル
ザ・ダービーズ
YAJICO GIRL
リュックと添い寝ごはん
レイラ
- 2025.03.08
-
Lucky Kilimanjaro
never young beach
四星球
リアクション ザ ブッタ
a flood of circle
サカナクション
GRAPEVINE
SUPER BEAVER / 東京スカパラダイスオーケストラ / WurtS ほか
片平里菜
WONK
MAN WITH A MISSION
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
moon drop
礼賛
osage
GLIM SPANKY
秀吉
SCANDAL
おいしくるメロンパン
OKAMOTO'S
w.o.d.
mzsrz
BLUE ENCOUNT / 崎山蒼志 / CHiCO ほか
PIGGS
FINLANDS
sumika
緑黄色社会
Nornis
go!go!vanillas
Aimer
- 2025.03.09
-
さとうもか
四星球
a flood of circle
サカナクション
マカロニえんぴつ / Saucy Dog / ヤングスキニー ほか
osage
君島大空
yama
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
moon drop
KALMA
kobore
リアクション ザ ブッタ
4s4ki
THE BACK HORN
GLIM SPANKY
OKAMOTO'S
ズーカラデル
FUNKIST
Co shu Nie / 七海うらら ほか
FINLANDS
SCOOBIE DO
Base Ball Bear / 橋本絵莉子
miwa
藤巻亮太
go!go!vanillas
Aimer
- 2025.03.10
-
Panorama Panama Town
Jack White
秋山黄色
SCOOBIE DO
三浦透子
- 2025.03.11
-
Panorama Panama Town
ACIDMAN
SCANDAL
MOGWAI
a flood of circle
SILENT SIREN
THE SPELLBOUND
神聖かまってちゃん
4s4ki
フクシア / MAKKURAGE / ジンバジ / goat Life / BUA
- 2025.03.13
-
yama
礼賛
フラワーカンパニーズ
マカロニえんぴつ
Jack White
GANG PARADE × RED in BLUE
挫・人間
04 Limited Sazabys × WurtS
伊東歌詞太郎
Wisteria
大橋ちっぽけ
- 2025.03.14
-
HY × Anly
yama
GLIM SPANKY
サカナクション
マカロニえんぴつ
OKAMOTO'S
SCANDAL
荒谷翔大 × 鈴木真海子(chelmico)
NOT WONK
おいしくるメロンパン
FUNKIST
THE YELLOW MONKEY
カメレオン・ライム・ウーピーパイ
伊東歌詞太郎
緑黄色社会
- 2025.03.15
-
HY / LiSA / BURNOUT SYNDROMES ほか
MAN WITH A MISSION
SCANDAL
フラワーカンパニーズ
サカナクション
さとうもか
GLIM SPANKY
sumika
リアクション ザ ブッタ
OKAMOTO'S
Kroi × BREIMEN
THE ORAL CIGARETTES
Re:name
BRADIO
This is LAST / NEE / シンガーズハイ ほか
Hump Back / ヨネダ2000
FUNKIST
East Of Eden
NOT WONK
moon drop
原因は自分にある。
kobore
GRAPEVINE
ExWHYZ / Tani Yuuki / cross-dominance
INORAN
LEGO BIG MORL
藍坊主
ジュウ
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
ラックライフ
Galileo Galilei
キタニタツヤ
"DreamARK presents 『D-FES』"
TENDOUJI
Jack White
- 2025.03.16
-
HY / SUPER BEAVER / Saucy Dog ほか
フラワーカンパニーズ
さとうもか
"machioto2025"
sumika
ヒトリエ
OKAMOTO'S
TENDRE / Chilli Beans. / iri
ビレッジマンズストア
GANG PARADE × BiTE A SHOCK
ズーカラデル
PIGGS
East Of Eden
礼賛
FUNKIST
原因は自分にある。
osage
Appare!
AIRFLIP
ぜんぶ君のせいだ。× TOKYOてふてふ
moon drop
JYOCHO
ART-SCHOOL
a flood of circle
キタニタツヤ
w.o.d.
THE BACK HORN
RELEASE INFO
- 2025.03.04
- 2025.03.05
- 2025.03.06
- 2025.03.07
- 2025.03.12
- 2025.03.14
- 2025.03.19
- 2025.03.26
- 2025.03.28
- 2025.04.01
- 2025.04.02
- 2025.04.04
- 2025.04.09
- 2025.04.11
- 2025.04.15
- 2025.04.16
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
フラワーカンパニーズ
Skream! 2025年02月号