オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第23回】
2015年03月号掲載
久々にマイナー気味なマンガを紹介しようかと思ったのだけど、予定変更。
ここ最近自分の周りでとある超メジャー級マンガが騒がしいのだ。20代の自分が世代だった作品なのに、最近そのマンガの話をしてくるのが10代だったり、果ては小学生の集団だったりと、その息の長さにものすごく驚かされてしまった(そもそも小学生の集団と話す機会があるのがわけわからんが、ライブ会場で話した)。そのマンガとは『ドラゴンボール』(以下DB)。知らぬ人はいないと思われる国民的世界的マンガだ。
僕が生まれたときにはもうDBは始まっていて、自分よりちょっと「お兄さん」の読んでるマンガだった。なので、僕より上の30代から、20代、10代と来て、さらに小学生にまで人気があるということになる。30年間、途切れること無くファンが増え続けている...これってとんでもないことですよ!10代の彼も一番好きなマンガとして熱く語ってくれたし、小学生たちはDBのカードを大量に持ってて自慢された。そのたびにDBの長過ぎる人気に感心してしまったのだが、一つ気になることがある。
彼らと話していると口を揃えて言うのだ。「好きなキャラはトランクス。かっこいいから。」たしかにトランクスはかっこいい。しかしベジータというツンデレ親父がいるからこそ、息子のトランクスも輝くのではないか、そうではないか。そういう想いをこめて「おれはベジータが好きだけどね。」と言う。すると「えー、ベジータですか(苦笑)」というリアクションだ。さらに「ベジータ、なんか情けなくないですかー?」と来た。
待て。
待て待て待て。
ドラゴンボールは「ベジータ」だろ!トランクスを好きなのは100歩譲って良いとしても、ベジータを認めないなんてなんてことだ。俺はベジータの魅力をここに書きなぐることを決意した。
まったく話がわからない読者に軽く説明すると、ベジータというのは敵として登場し、後に仲間になりながらも主人公・孫悟空に対抗心を燃やし続けるライバルキャラだ。
このベジータ、戦闘民族サイヤ人の王子でエリートでプライドの塊なのだが、地球育ちの下級戦士・孫悟空(サイヤ人名カカロット)に勝てず、常にナンバー2の座に甘んじている。それだけでなく、強敵を前に泣き出したり、強敵の前で「無理だぁ......」と戦意喪失したり、強敵の前にかっこよく登場したのに5秒後にやられて退場したり、とにかくツンデレだったりと、見所が多い。そういう部分を指して「ベジータ(笑)」という風に見えるのかもしれない。
たしかに自分も、そう思ったことはあった。フリーザを前に涙を流すところはフリーザの圧倒的な強さと恐怖の描写を考えると仕方ないのかもしれないが、映画で他の全員が戦おうとしているのに一人だけ戦いを放棄するところは「さすがに頑張れよ!」と突っ込んだ。悟空のピンチに「お前を倒すのはこの俺だからな......」とかっこよく現れて5秒後に「うわァーー!」と叫びながら退場した時は「かっこわるー」と思ったし、調子に乗ってセルを完全体にしてしまい、ぜんぜん敵わなくなってしまうところは泣けるくらい自業自得だった。
でもこの情けなさも、ベジータが誰よりも「人間らしい」からこそなのだ。
ベジータは登場時こそ残忍でクールだが、実は話が進むにつれて感情の動きが一番描かれていくキャラだ。その感情の動きが「情けなさ」になる時もあるが、その反対にベジータには愛の深さも描かれているのだ。息子の成長に恥ずかしいくらい喜び、妻が殴られたら激怒し(映画だが)、家族のことを案じながら強敵相手に自爆する。プライドの高さもサイヤ人の王子としての誇りからなのだ。サイヤ人の誇りを踏みにじられた時、ライバルの悟空に「サイヤ人の手でヤツを倒してくれ」と泣きながら懇願し息絶えるシーンはDB屈指の名場面だ。
読み進めるほどに、実はドライな戦闘狂は悟空の方で、ベジータは情の深い、ある意味「普通の男」なのではないかとすら思えてくる。すると、DBというマンガはベジータ目線で読みたいマンガになるのだ。正直、リアルタイムでDBのクライマックスを読んでいたとき、「ちゃんと終わらせられるのか」と思った。そもそもDBは「ここで終わってもおかしくない!」というタイミングを二度も逃して連載を引き延ばされている印象だった。だけど、その後のブウ編のクライマックス。宇宙の命運をかけて最大の強敵・魔人ブウに最後の戦いを挑む悟空に、ベジータが「がんばれカカロット......おまえがナンバー1だ!!」とエールを送るシーン。ここで、あぁドラゴンボール終われたな、と思った。
それまで自分の誇りのために抗い続けてきた「永遠のナンバー2」が、もっと大きな目的のために悟空を認める。
結局、悟空は常に最強で、誰よりも強く明快なのだ。それと対照的に、いっつも揺れ動きながら、「人間らしさ」を取り戻し、誰よりも成長していたのはベジータだった。
ベジータあってのドラゴンボール、ということわかってもらえただろうか。自分で書いててちょっと泣きそうだ。わかったら、今後はベジータのあとに(笑)を付けるんじゃ無いぞ。でも(笑)が付けられるのがベジータの人間らしさでもある。
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