オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第17回】
2014年03月号掲載
2/26に新しいアルバム『サイハテ・ソングス』が発売になった。ひとまずリリースまでが長かったので、ようやっと出たか、という気分だけど、良いアルバムだと思うことには変わりなく、胸ぐら掴んで聴かせたい一枚になった。気分的には次の作りたいものに向かってる。
このアルバムに入ってる『黒歴史にOK!』という曲は、個人的黒歴史の羅列から始まる曲で、そこに並べるエピソードはすべて自分の実話にした(というよりも、なった)。心情吐露とか「この歌詞は実話なんです」とか鬼の首を取ったように言うミュージシャンには共感はあんまりなくて、職人としてむしろもうちょい創作を入れてやりたいという野心もあるんだけど、やっぱりこの曲には経験しかハマらなかった。こういうものに説得力を持たせるには、事実を書くしかなかった。それはある意味、僕の作家的な意味合いでの力量不足でもあると思う。僕にとっての黒歴史であって、一般でいう黒歴史とズレもあるとは思うけどもあまり深く考えず単純に楽しんでほしいし、あと各々の黒歴史をはめ込んで自分流『黒歴史にOK!』を作って絶唱するというのも良いんじゃないかな(カラオケバージョン付いてないけど)。
『黒歴史にOK!』の中で「意味不明のマンガ、マガジンに送り」という部分があるんだけど、これも実体験で、高校生になるまで真剣に漫画家になるのが夢だった。子供の頃から、絵を描くのと、ストーリーやキャラクターを考えるの、そしてそれを友達に見せるのが大好きで、四六時中マンガを描いてた。スポーツに1ミクロンの魅力も見出せなかった小学生男子にとって、それだけが生きているモチベーションだったのを覚えてる。最初のうちは自由帳にマンガを描いていて、だんだんちゃんと製本するようになって、中学生になった頃には原稿用紙にマンガを描いて2度だけマンガ雑誌に投稿もした。その時に投稿先に選んだのが少年マガジンだった。なぜ投稿先にマガジンを選んだのか今となっては疑問だし、理由も覚えてないけど、当時のマガジンはなんか勢いがある感じがあって楽しそうだった。ジャンプに対して二番手ライバルっぽいのも良かった。描いていたマンガのジャンルはめちゃくちゃで、ギャグ物(中学生らしい下ネタが多かった)からいわゆる少年漫画風のやつ、不条理っぽいのまであって、ご多分にもれずほとんど完結までたどり着かなかった。コツコツと親に隠れて(勉強してるふりをして漫画を描いてた)ペンを入れたりトーンを貼ったりして最初に完成して投稿したのは少年漫画風のやつだった。今思い返すと、当時描いてたマンガは掛け値なしにしょうもない物だった。少年漫画風のは、バトルシーンが描きたいだけの、『ARMS』の死ぬほど劣化したパクリだった。これを初投稿したけど、とうぜん引っかかることもなく返送されてきた。儀礼的な通知の紙が一枚。初めての挫折にめちゃくちゃショックだったことを覚えているけど、同時に読み返してそのしょうもない内容に「こりゃダメに決まってるわ」と妙に納得したのも覚えてる。描いている時は「俺は天才だー!」とアドレナリンドパドパ出しながら思っていたけど、冷静になって見ると中学生が趣味で描いた雑なマンガそのものだった。
そのマンガの挫折の反動もあり、同時につげ義春なんかのガロ系のマンガを読み始めたのもモロに影響を受けて次は不条理なマンガを描き始めた。この頃やってたのが、実際に見た変な夢を元にふくらませて一本のマンガにするってやつで、これは容赦なくつげ義春のパクリだった。本物の死体が見たいから、友達と死体が捨てられてると噂のゴミ処理場に向かうっていう内容で、実際に見た夢を脚色したマンガだった。どこからどう見ても少年マガジンにひっかかるわけもないマンガだったし、しかもこのマンガ、どんなに脚色しても10ページくらいまでしか大きくならず、32ページが基本の賞に「もういいや」と無理やり投稿した。当然返送されてきた。意味不明なうえに、ページ数もぜんぜん足りない痛いマンガを受け取った編集者は何を思ったかだけ、ちょっと知りたい。心が折れて、返送されてきた原稿はそっと封印した。僕はマンガを投稿していることを親にも友人にも誰一人言ってなかったので、この二連敗の事実は闇に葬られた。
ちょうどその頃に、ビートルズやドアーズを聴いてはじめて音楽に興味を持った。バンドがやりたいけど楽器もできないので、最初にやったのは作詞だった。そのままなんだかわからずギャーピーとかノイズの宅録もはじめたら楽しくて、そっちに夢中になって今に至る。正直、僕は漫画家としての才能は別に無かったなぁとしみじみ思う。音楽の方が向いている、とは普通に思う。でも「お前がいなけりゃ僕では無かった」とも、本当に思う。
今回は『火星から来た漫読家』ではなく、『火星から来た漫画家(になりたかった男)』の話でした。では、また次回!
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