オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第16回】
2014年01月号掲載
新年おめでとうございます。まずはご挨拶。
明けましてついに今年、1年9ヶ月ぶりの新しいアルバムが出ます。2014年2月26日。『サイハテ・ソングス』という、強い強いアルバム。洋邦問わず僕の愛したロックの突破力を持った誠実なアルバムを作りたかったし、それができたと思う。こいつには、戦って勝って君のところまで行って欲しいと思ってる。強い子だから。込めて込めて込めました、聴いてください。
さてさて、アルバムとマンガにまつわる話があるので、それを書こう。収録曲の中に『SINIBASYO A GO!GO!』という曲がある。アグレッシブな曲が多い中でも、特にハードな曲の1つで、もはやハードロックだ。
SINIBASYOはイコール死に場所で、つまりは「死に場所を目指す」ということになる。そりゃ、誰だって死ぬからさ、死は目指さなくてももれなくやってくるわけだけど、それでも死に場所へ突き進んでいくような「動体」としての生を歌った。生命はやっぱり止まってないんだ、動いてる。リード曲のような存在ではないけど、狂おしさと、詩がとても気に入っている曲だ。
このアルバムは全曲がアルバムを背負うメッセージをタトゥーのように持っているんだ。
で、この曲の中で「手塚治虫」という人名を、とても良い形で歌詞に入れられたと喜んでいるので、『漫読家』でくらいはちょっと自慢したい。手塚治虫は、もちろんマンガの神様の手塚治虫だ。彼の名前を自然に曲に入れられたとき、なんか28年来のパズルを解いたような感じがした。
僕は、手塚治虫が非常に好きだ。マンガはもちろん好きだけど、その情念の渦巻くような人となりを知ってますます好きになった。
手塚治虫は、なぜか世間的にヒューマニストで紳士、ずーっと頂点にいた神様だというイメージがある。僕も最初はそういうイメージを持っていて、立派で偉大な人だってイメージがすごく強かった(医者だし)。
でも本当の手塚治虫は、人間らしい負の感情を多く抱えた男で、嫉妬や不満の塊で、漫画のためにはあらゆる物をかえりみず、そのうえ人気だって一度はどん底まで落ちて「手塚は時代遅れ」とまで言われた。
それを知ったときは「神様マジかよ!」とかなりビックリしたと同時に、手塚マンガに渦巻いている怪しさやイビツさのような物の正体がわかったような感じがした。
一度人気が無くなり、自ら編集部に持込に行っても連載が決まらなかったという暗黒期から、それでもマンガを描き続け『ブラックジャック』のヒットで再生を果たした。
マンガを描いて描いて描きまくりアニメを作って作って作りまくり、止まることなく生き抜いて「死に場所」まで走り続けた「動体」の人だった。
最近、『ブラックジャック創作秘話』という手塚治虫の評伝マンガが連載していて、手塚治虫のいろいろなエピソードが読める手塚治虫ファンには大事なマンガだ。
その中で、1つ衝撃的だったエピソードがある。『ムウ』の連載時、原稿の一部が間に合わず白いままで雑誌に載ってしまったことがあった。手塚治虫のOKを待たずに、編集者が印刷に回してしまったのだ。その雑誌に掲載された自分の漫画の白いコマを見たとき、手塚治虫は悔しさで涙を流していたという。それを見たスタッフは手塚のマンガへの執念に驚かされたという。
もう1つ。手塚治虫の映像でとても印象に残ってるヤツがある。晩年の手塚が紙にペンで丸を描いている映像だ。丸をスッと描いて、手塚は「もう腕の力が衰えて、綺麗な丸が描けない」と悔しそうにもらす。「昔は描けたんだけどな」と。
その寂しそうな、悔しそうな姿が眼に焼きついて離れない。
まだ求めているんだ、この人は。最後の最後まで求めていたんだ。だから描いて描いて描いて死んだ。
『SINIBASYO A GO!GO!』の一部分の歌詞はこうだ。
「生きてくための秘訣なんてバカ、あるわけがないだろ
何度でも明日が来るまで今日を行くしつこさ、ただそれだけだろう(中略)たぶんヅッカ ヅッカ 手塚治虫とか」
誰もが何かを求めてさまよっている。渇望の感情に身を引き裂かれる。でもその狂おしさとか、苦しさも含めて、生であると信じたいんだ。
Related Column
- 2016.07.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【最終回】
- 2016.03.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第29回】
- 2016.01.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第28回】
- 2015.11.20 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第27回】
- 2015.09.19 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第26回】
- 2015.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第25回】
- 2015.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第24回】
- 2015.03.09 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第23回】
- 2015.01.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第22回】
- 2014.11.12 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第21回】
- 2014.08.31 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第20回】
- 2014.07.04 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第19回】
- 2014.05.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第18回】
- 2014.03.05 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第17回】
- 2014.01.16 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第16回】
- 2013.11.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第15回】
- 2013.09.07 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第14回】
- 2013.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第13回】
- 2013.05.03 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第12回】
- 2013.03.26 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第11回】
- 2013.01.22 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第10回】
- 2012.09.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第9回】
- 2012.07.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第8回】
- 2012.05.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第7回】
- 2012.03.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第6回】
- 2012.01.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第5回】
- 2011.11.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第4回】
- 2011.09.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第3回】
- 2011.07.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第2回】
- 2011.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第1回】
LIVE INFO
- 2025.12.12
-
Hump Back
VII DAYS REASON
Chimothy→
崎山蒼志
LiSA
Another Diary
凛として時雨
TOMOO
Nikoん
BIGMAMA
PENGUIN RESEARCH
moon drop
ねぐせ。
私立恵比寿中学
くるり
PEDRO
サカナクション / Creepy Nuts / 羊文学 / ちゃんみな ほか
flumpool
the shes gone
VOI SQUARE CAT
SAKANAMON / Broken my toybox / SPRINGMAN / KEPURA
BRADIO
ザ・クロマニヨンズ
僕には通じない
LONGMAN
- 2025.12.13
-
MONOEYES
"DUKE×GREENS presents わちゃごなどぅ -whatcha gonna do-"
ぜんぶ君のせいだ。
VII DAYS REASON
Vaundy / THE ORAL CIGARETTES / sumika / マカロニえんぴつ ほか
UVERworld
eill
フラワーカンパニーズ
LITE
DURAN
SHERBETS
清 竜人
ポルカドットスティングレイ
moon drop
Nikoん
石崎ひゅーい
吉井和哉
9mm Parabellum Bullet
Cody・Lee(李)
flumpool
東京スカパラダイスオーケストラ × HEY-SMITH
[Alexandros]
Appare!
秋山黄色
藤沢アユミ
キタニタツヤ
THE SPELLBOUND
- 2025.12.14
-
downy / toe / unripe / aieum
(sic)boy
VII DAYS REASON
LiSA
ねぐせ。
10-FEET / クリープハイプ / go!go!vanillas / Saucy Dog ほか
UVERworld
ぜんぶ君のせいだ。
Devil ANTHEM.
フラワーカンパニーズ
TOMOO
NEE
"DUKE×GREENS presents わちゃごなどぅ -whatcha gonna do-"
OAU
PEDRO
Nikoん
石崎ひゅーい
kobore / Suspended 4th / ザ・シスターズハイ / ザ・シスターズハイ ほか
鶴
SHERBETS
RADWIMPS
9mm Parabellum Bullet
PENGUIN RESEARCH
MOSHIMO
スカート
PHALUX
Bimi
ASP
22/7
古墳シスターズ
クジラ夜の街
[Alexandros]
キタニタツヤ
- 2025.12.15
-
MONOEYES
Kroi
GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR
anewhite
山田将司(THE BACK HORN)/ 大木伸夫(ACIDMAN)/ 内澤崇仁(androp)/ 村松 拓(Nothing's Carved In Stone) ほか
TOOBOE
Mrs. GREEN APPLE
Hump Back
- 2025.12.16
-
くるり
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
優里
YOURNESS
GANG PARADE
ザ・クロマニヨンズ
GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR
Mrs. GREEN APPLE
- 2025.12.18
-
桃色ドロシー
あいみょん
くるり
Nikoん
東京初期衝動
The Ravens
リーガルリリー
ザ・クロマニヨンズ
点染テンセイ少女。
渡會将士
高岩 遼
カメレオン・ライム・ウーピーパイ
Homecomings
PompadollS
- 2025.12.19
-
(sic)boy
Helsinki Lambda Club
桃色ドロシー
ガラスの靴は落とさない
Nikoん
flumpool
吉井和哉
東京初期衝動
LiSA
BIGMAMA / THE BOYS&GIRLS / KALMA / オレンジスパイニクラブ / ハク。
SHERBETS
VII DAYS REASON
キノコホテル
羊文学
僕には通じない
Mrs. GREEN APPLE
BLUE ENCOUNT
- 2025.12.20
-
NANIMONO
PENGUIN RESEARCH
LACCO TOWER
RADWIMPS
ポルカドットスティングレイ
ぜんぶ君のせいだ。
The Cheserasera
flumpool
ハシリコミーズ
ZOCX
クジラ夜の街
ExWHYZ
浪漫革命
mudy on the 昨晩
"MERRY ROCK PARADE 2025"
ザ・クロマニヨンズ
Awesome City Club
LUCY
アイナ・ジ・エンド
め組
ACIDMAN
UVERworld
パピプペポは難しい
eastern youth
Mrs. GREEN APPLE
優里
- 2025.12.21
-
NANIMONO
The Biscats
桃色ドロシー
クジラ夜の街
RADWIMPS
LACCO TOWER
NEE
東京スカパラダイスオーケストラ
GLIM SPANKY
フラワーカンパニーズ
MOSHIMO
DURAN
(sic)boy
"MERRY ROCK PARADE 2025"
VII DAYS REASON
ザ・クロマニヨンズ
LiSA
Appare!
Newspeak
齋藤知輝(Academic BANANA)
Keishi Tanaka
鶴
清 竜人25
MONOEYES
暴動クラブ
UVERworld
OKAMOTO'S
優里
- 2025.12.22
-
DOES
東京スカパラダイスオーケストラ
フラワーカンパニーズ
Kroi
FINLANDS
アーバンギャルド × 氣志團
あいみょん
RELEASE INFO
- 2025.12.12
- 2025.12.17
- 2025.12.19
- 2025.12.20
- 2025.12.21
- 2025.12.22
- 2025.12.24
- 2025.12.26
- 2025.12.29
- 2026.01.01
- 2026.01.04
- 2026.01.06
- 2026.01.07
- 2026.01.09
- 2026.01.11
- 2026.01.14
FREE MAGAZINE

-
Cover Artists
ZOCX
Skream! 2025年12月号










