オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第24回】
2015年05月号掲載
マンガ原作の実写映画は相変わらず勢いがあります。『寄生獣』『進撃の巨人』『るろうに剣心』『ルパン三世』......。思えば話題作のほとんどはいわゆる実写版じゃなかろうか......と思うくらい。とはいえマンガの実写化は今に始まったことではなく、映画にとってマンガ原作は昔から格好の題材でした。時として「正直やめてくれ」という声や、「死ぬまで許さない」という呪詛が少なくないのも昔から変わりません。そうしたどうしようもない実写版が多い中、マンガの実写版はできることならこれくらいのエネルギーでやりきってほしい。そう思う実写版が......いや超実写版があるので今回はこれを紹介して実写化ブームに一石を投じようと思います。
それは1972年の若山富三郎主演『子連れ狼』映画シリーズ。小池一夫原作・小島剛夕作画の時代劇マンガの実写化です。乳母車の息子を連れて旅する凄腕の刺客というのは、のちにダウンタウンがパロディコントにしたりするくらい国民的な題材だったんですが、この映画を見るとむしろダウンタウンの方が健全なんじゃないか......と思うほどの殺戮映画。『子連れ狼』には萬屋錦之介主演のマイルドなTVドラマ版もあり、そっちの方が有名なんですが、実は若山版の映画とほぼ同じ時期に後追いでTV版がはじまったのです。先に『子連れ狼』映画を始めていた若山先生はこれに激怒して、「どちらが主役の拝一刀にふさわしいか......」と真剣を持って萬屋錦之介のところに果し合いに行こうとしたという狂った実話があります。それを止めたのがカツシンこと勝新太郎という......そうです若山富三郎は勝新太郎の兄貴。さまざまな武道に精通していて、カツシン以上に殺陣がうまいことで有名でした。そんな現代に生きる狂った侍のような男を主演にしたのが映画版の『子連れ狼』シリーズでした。
柳生一族の裏切りによって妻を殺され追放された拝一刀は、息子・大五郎を連れて柳生一族に追われながら復讐のための旅を続ける、子連れの刺客人・子連れ狼として......というのが大雑把なストーリーで、映画の第1作で大体この辺が描かれます。すでに第1作目で吹き飛びまくる腕、首、足。通常の3倍吹き出る血糊というスプラッターの嵐に「この時代劇、普通じゃねーぞ!」という所が存分に出てくるんですが、今日は第2作目の『三途の川の乳母車』を紹介します。映画が始まるといきなり荒野の向こうから柳生の刺客が1人走ってくる......こちら側には拝一刀と乳母車の大五郎。すれ違いざま拝一刀が切りかかって敵の頭に刀がズバーッ!当然、死んだと思うでしょ。しかし敵は両手を使って頭に刺さった刀を握り締めた!......この時点でもう意味わかんないんだけど、頭と手の三点を活用した斬新な白刃取りに誰もが「頭に刺さってる時点でダメじゃん!」と突っ込む超名イントロ。しかし敵刺客は実は命を投げ打っても一刀の動きを止めたかったのだ。その瞬間その後ろに隠れていたもう一人の敵が飛び出し、頭で刀を受け止めダラダラ血流してるヤツの肩の上に立って攻撃してきた!なんだこれは!?これは......あれだ!実写版ジェットストリームアタックだ!しかしヤバイ、刀は三点白刃取りでガッチリ握られていて武器がない!しかしその瞬間、一刀は乳母車の取っ手を外してひねった。すると取っ手の先からシャキンと刃が出てきて無事撃退。なんとこの乳母車は全パーツ凶器の超武装乳母車なのでしたー。ここまで1分30秒。ここでタイトルがドン。『三途の川の乳母車』。そういえばこれ時代劇だった......!この時点でとんでもない映画が始まったことに誰もが気づく。
映画は終始こんな感じで、追いかけてくる柳生一族との死闘死闘死闘とひたすら殺伐とした果たし合いが続く。すごいのがこの拝一刀、全編通してしゃべるシーンが5分も無い。ほとんど眉間にシワを寄せながら黙々と斬りまくっている。敵の柳生一族も相当なもので、今回の敵は女ばかりの「別式女」を送り込んでくる。大道芸人だと思ったら着物の柄で幻惑して斬りかかってきたり(ここの意味不明っぷりはスゴい)、巡礼だと思ったら刃を仕込んだ傘を投げてくる、極め付けは農民の娘たちだと思ったら刀の仕込んだダイコンを投げてくる。しかも大量に。殺伐とした空気の中を飛び交うダイコン。こんなシュールな刺客娘たちもズバズバ斬って捨てる一刀のハードボイルドっぷり。次の敵は「黒鍬衆」という団体さま。一刀の秘策は......。集団の敵めがけて息子が乗った乳母車を突っ込ませる一刀。ひどい!しかし走る乳母車に乗った大五郎が面倒くさそうにスイッチを押すと......出た!車輪から刃!乳母車の車輪に足をズバズバ斬られていく黒鍬衆の皆さん。面倒くさそうな子供と乳母車に負けた。そして最後は強敵・弁天来3兄弟との死闘。最後の一人を斬ると、ヒューヒューと音を立てながら血が霧のように吹き出したあと、絶命の瞬間、ドバーッと「そんなに出るわけねーだろ!」というくらいペンキの血が出る。このシーンはもはやアホらしさを超えて感動の域に達している......気がする。
この映画は全6作作られたんですが、3作以降はさらにぶっ飛び方に拍車がかかり、乳母車の前を開けるとマシンガンが仕込まれていてそれで数百人の敵をバッタバッタとなぎ倒します。「マンガじゃねーか!」と叫びたくなるようなすさまじいシーンの数々を、殺伐とやりきって、実写で見せてくれる『子連れ狼』。これこそが「マンガの実写版」ではないでしょうか!
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