オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第9回】
2013年07月号掲載
1985年生まれ。僕と同じくらいの世代の人は、たぶんあのマンガが小学生だった僕たちの日常に、彗星のように現れた時の衝撃をわかってくれるんじゃないだろうか。僕たちの世代は、ゲーム黄金世代だった。ファミコンと同時に生を受け、スーファミ、ゲームボーイ、プレステ&セガサターンというゲームの進化にあわせて成長してきた。まさに「東京生まれファミ通育ち」を地でいく世代なんだ。特にドラクエ、FF、ポケモンといった「RPG」はゲームの王様だった。そんなドラクエをはじめとするRPGに夢中だったありふれた小学生にとって、勇者や魔王や魔法やレベルが出てくる世界、RPGでおなじみの要素をおちょくったギャグ、そしてゲーム画面のメッセージウィンドウが突っ込みを入れてくるという卓越したRPGセンスを持っていたこのマンガは、まさに求めていたマンガそのものだった。そのマンガが『魔法陣グルグル』だった。
1994年の夏、僕はいつもの教室で、クラスのゲーム好き数人のあいだで何やら一冊のマンガが盛り上がっているようだと気づいた。タイトルは『魔法陣グルグル』。変ななまえだなー、と思った。しかも掲載誌はガンガン。これも聞き慣れない雑誌だった。当時小学校低学年のマンガ雑誌といえばボンボンかコロコロが関の山。一部のちょっと背伸びした子や、お兄さんのいる子がジャンプを読んでいるくらいだった。ガンガンなんていう雑誌は見たこともなかった。でもタイトルがドラクエのコマンド「ガンガンいこうぜ」に似ているのはちょっと気になった(ガンガンは実際にドラクエと同じ会社の雑誌)。クラスでの情報戦に負けているのが悔しかったので(小学生ってそういうこと気にする)、家に帰っていつものボンボンを見るとアニメ紹介コーナーに『魔法陣グルグル』が載っていた。アニメもやってるのかー、と知った僕は、その週の放送を見てみることにした。 衝撃だった。「こ…こんなアニメを待っていた!」「この世界に今すぐいきたい!」何はなくとも、とにかく面白い。キャラクターはみんな魅力的で、おちゃらけてても決めるときは決める勇者ニケ、一途で天然な魔法使いククリ、そして怪しい踊りを踊る名物ジジイのキタキタおやじ。おなじみの剣と魔法のファンタジー世界だけど、それを逆手にとった絶妙な世界観に夢中になった。「鉄の兜を装備したら重すぎた」という描写も、ゲームでは無視されてるけど「そりゃそうだよな!」っていう喜びに満ちていた。「自分でも入れ込めそうなファンタジーの世界」がグルグルワールドだった。すぐにコミックスを購入し、グルグルワールドにハマりこんだ。腰みの一丁の爺さんが踊るキタキタ踊りをはじめとする壊れた笑いは小学生に効果は抜群だったし、たまに妙に大人びたギャグが出てきたりするのも変に胸が高鳴った。ニケとククリの恋愛模様にときめき、魔法と冒険にドキドキした。とにかくワクワクする漫画だった。原画展にも行ったし、関連グッズも買いまくり、ガムについてる応募券を送るともらえるグルグル電子筆箱をゲットするためにひたすらヨーグルト味のガムだけを食べ続けていた。結局手に入った筆箱が嬉しすぎて、学校の朝の会で自分の宝物を紹介する企画でグルグル筆箱を紹介した。僕にとっての95~96年はグルグル一色だった。そんなグルグルの成功にはアニメ版のクオリティの高さも一躍買っていた。この第一期アニメが同時進行していた4巻くらいまでがグルグルの黄金期だと思う人は多いだろう。実際に僕もこのアニメが終わってから、少しずつグルグルを卒業していった。アニメオリジナルの要素がことごとく成功していたのが素晴らしかった。まずは声優がぴったりだ。主人公2人はもちろん、ウィンドウの突っ込みお姉さんの声が良かった。ゲームのメッセージが出るウィンドウのようなものが画面下に現れると、渋い女性のナレーションで「勇者は業界用語にくわしかった!」などと突っ込みが入る。要するにちびまる子ちゃんの「後篇につづく!」のキートン山田ポジションなのだが、この人の声が最高にぴったりだった。あの人、横尾まりさんっていうのか。初めて知った。あと主題歌、これは外せない。オープニングの『マジックオブラブ』もエンディングの『風にあそばれて』も本当に良い曲で、今でも聴くとオープニングはワクワクと、エンディングはジーンとしてしまう。特に奥井亜紀さんの『風にあそばれて』はすごい名曲で、そこにニケとククリの長い旅の様子が控えめに描かれるエンディングは、めちゃくちゃに感動的だった。とにかく「旅してー!!!」と思わせてくれた最高のエンディング。
グルグルの連載開始から、なんと今年は20年。ここにきてグルグルはまだ生きていることを感じる。グルグルの外伝である『舞勇伝キタキタ』では、大人気のサブキャラだったキタキタおやじが主人公として大暴れ。さらにアニメのED、後期OPを歌っていた奥井亜紀さんのベスト盤もこの夏にリリースされたばかり。もちろんグルグルの主題歌も入っているし、『ターンエーガンダム』の超名曲『月の繭』も入ってる。20年というと、感傷的にならなくたって時の流れを感じずにはいられないけれど、いまだにあのとき感じた「ワクワク」というのは、僕の人生の「楽しいこと」とイコールだ。月の夜が来ると、ニケの歌っていた歌を思い出して口ずさんでしまう。
「ここのババアは良いババア~♪」
魔方陣グルグルが大好きでよかった。
Related Column
- 2016.07.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【最終回】
- 2016.03.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第29回】
- 2016.01.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第28回】
- 2015.11.20 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第27回】
- 2015.09.19 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第26回】
- 2015.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第25回】
- 2015.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第24回】
- 2015.03.09 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第23回】
- 2015.01.06 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第22回】
- 2014.11.12 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第21回】
- 2014.08.31 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第20回】
- 2014.07.04 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第19回】
- 2014.05.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第18回】
- 2014.03.05 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第17回】
- 2014.01.16 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第16回】
- 2013.11.02 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第15回】
- 2013.09.07 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第14回】
- 2013.07.11 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第13回】
- 2013.05.03 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第12回】
- 2013.03.26 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第11回】
- 2013.01.22 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第10回】
- 2012.09.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第9回】
- 2012.07.18 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第8回】
- 2012.05.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第7回】
- 2012.03.13 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第6回】
- 2012.01.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第5回】
- 2011.11.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第4回】
- 2011.09.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第3回】
- 2011.07.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第2回】
- 2011.05.01 Updated
- オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第1回】
LIVE INFO
- 2025.09.18
-
YOASOBI
キュウソネコカミ
LAUSBUB
DYGL
Mirror,Mirror
MONOEYES
終活クラブ
TOOBOE
THE SMASHING PUMPKINS
椎名林檎 / アイナ・ジ・エンド / 岡村靖幸 ほか
打首獄門同好会
the paddles / DeNeel / フリージアン
otona ni nattemo / 南無阿部陀仏 / ウェルビーズ ほか
- 2025.09.19
-
THE ORAL CIGARETTES
a flood of circle
UVERworld
セックスマシーン!!
Bye-Bye-Handの方程式
Redhair Rosy
たかはしほのか(リーガルリリー)
終活クラブ
あたらよ
Aooo
KING BROTHERS
bokula. / 炙りなタウン / Sunny Girl
The Birthday
- 2025.09.20
-
カミナリグモ
Lucky Kilimanjaro
TOOBOE
GRAPEVINE
This is LAST
LACCO TOWER
WtB
キュウソネコカミ
reGretGirl
岸田教団&THE明星ロケッツ
ASH DA HERO
THE SMASHING PUMPKINS
Miyuu
竹内アンナ
ぜんぶ君のせいだ。
PAN / SABOTEN
SHE'S
"イナズマロック フェス 2025"
LAUSBUB
渡會将士
Plastic Tree
ヨルシカ
cinema staff
Broken my toybox
あたらよ
大森靖子
04 Limited Sazabys / 東京スカパラダイスオーケストラ / ザ・クロマニヨンズ / 奥田民生 / ヤングスキニー ほか
ART-SCHOOL
AIRFLIP
"NAKAYOSHI FES.2025"
"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025"
GOOD ON THE REEL
クジラ夜の街 / Dannie May / 終活クラブ / アオイロエウレカ(O.A.)
フラワーカンパニーズ
- 2025.09.21
-
ExWHYZ
HY
豆柴の大群
TOOBOE
カミナリグモ
LACCO TOWER
The Biscats
WtB
キュウソネコカミ
envy × OLEDICKFOGGY
Plastic Tree
Broken my toybox
ぜんぶ君のせいだ。
THE SMASHING PUMPKINS
アルコサイト
ART-SCHOOL
星野源
"イナズマロック フェス 2025"
岸田教団&THE明星ロケッツ
TOKYOてふてふ
ヨルシカ
竹内アンナ
GRAPEVINE
大森靖子
ACIDMAN / GLIM SPANKY / Dragon Ash / go!go!vanillas / Omoinotake ほか
LAUSBUB
Devil ANTHEM.
peeto
KING BROTHERS
"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025"
GOOD ON THE REEL
超☆社会的サンダル / さとう。 / ルサンチマン / SENTIMENTAL KNOWING(O.A.)
PIGGS
- 2025.09.22
-
WtB
reGretGirl
OKAMOTO'S
古墳シスターズ
レイラ
Bye-Bye-Handの方程式
ビレッジマンズストア
Ryu Matsuyama
CENT
- 2025.09.23
-
水曜日のカンパネラ
ART-SCHOOL
Lucky Kilimanjaro
TOOBOE
リュックと添い寝ごはん
古墳シスターズ
Omoinotake
Kroi
TOKYOてふてふ
Plastic Tree
WtB
MUSE / MAN WITH A MISSION / go!go!vanillas
amazarashi
GRAPEVINE
YONA YONA WEEKENDERS
DYGL
cinema staff
Bye-Bye-Handの方程式
Another Diary
adieu
竹内アンナ
Cody・Lee(李)
トゲナシトゲアリ
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.24
-
水曜日のカンパネラ
THE SMASHING PUMPKINS
ドミコ
UVERworld
Kroi
a flood of circle
Hump Back
shallm × sajou no hana
- 2025.09.26
-
This is LAST
the cabs
ドミコ
Age Factory
Aooo
Keishi Tanaka
MONO NO AWARE
トンボコープ
Base Ball Bear × ダウ90000
DYGL
OKAMOTO'S
SUPER BEAVER
otsumami feat.mikan
セックスマシーン!!
YONA YONA WEEKENDERS
- 2025.09.27
-
TOKYOてふてふ
amazarashi
アーバンギャルド
SCOOBIE DO
LACCO TOWER
Academic BANANA
The Birthday / 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ) / 志磨遼平(ドレスコーズ) / GLIM SPANKY / TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU) ほか
ぜんぶ君のせいだ。
センチミリメンタル
LAUSBUB
Awesome City Club
NEE × CLAN QUEEN
Plastic Tree
This is LAST
LOCAL CONNECT
YOASOBI
TOOBOE
MONO NO AWARE
EGO-WRAPPIN' × 大橋トリオ
豆柴の大群
reGretGirl
cowolo
コレサワ
ExWHYZ
レイラ
INORAN
MAPA
LiSA
mudy on the 昨晩
WtB
キタニタツヤ
"ベリテンライブ2025 Special"
藤巻亮太
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.28
-
ナナヲアカリ
NEE × CLAN QUEEN/サイダーガール × トンボコープ
SCOOBIE DO
LACCO TOWER
TOKYOてふてふ
SUPER BEAVER
"いしがきMUSIC FESTIVAL"
cinema staff
ぜんぶ君のせいだ。
YONA YONA WEEKENDERS
コレサワ
SPRISE
Plastic Tree
YOASOBI
リュックと添い寝ごはん
EGO-WRAPPIN' × 大橋トリオ
Age Factory
WtB
TOOBOE
mzsrz
Broken my toybox
古墳シスターズ
RAY
"ベリテンライブ2025 Special"
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.30
-
打首獄門同好会
Hedigan's
緑黄色社会
MONOEYES
Mirror,Mirror
ヨルシカ
"LIVEHOLIC 10th Anniversaryseries~YOU MAY DREAM~"
RELEASE INFO
- 2025.09.19
- 2025.09.24
- 2025.09.26
- 2025.10.01
- 2025.10.03
- 2025.10.05
- 2025.10.08
- 2025.10.10
- 2025.10.11
- 2025.10.12
- 2025.10.13
- 2025.10.14
- 2025.10.15
- 2025.10.17
- 2025.10.22
- 2025.10.24
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
OASIS
Skream! 2025年09月号