オワリカラ : タカハシヒョウリの「火星から来た漫読家」【第19回】
2014年07月号掲載
なんだかんだで小説からアニメ化して4年間、追いかけ続けてきた『機動戦士ガンダムUC』がついに完結!というので「やっぱり劇場で見たい!」と居ても立ってもいられなくなり公開最終日に映画館に駆け込んで来た。途切れることないガンダム世界に1つの結末を用意しちゃうような気合入りまくりのラスト。正直、何もかもが最高!とは言えない...言えないが、その言えない理由を言い出すと京極夏彦の単行本(ほぼ立方体)くらいの文量になりそうなのでそれも言わないが、やっぱり気合の入ったガンダム作品をスクリーンで見るのは嬉し涙だよ。
満員の映画館の客席を見て驚いたのは、結構女性が多かったことだ。その前に見に行った初代『ゴジラ』リマスターが満員の客席に女性が1人だけで目を疑った直後だったのでより驚きが増した。ガンダムが最初に放映された時は人気がなくて打ち切りになったのだが、そのときに最初にファンになって支えてくれたのは女子たちだったという話を思い出した。美形のシャアやら、ガルマにときめいた今の腐女子のはしりの人たちがキャーキャーとガンダムを支えて後の大ブームの基盤を作ったと聞いたことがある。これはデビッド・ボウイが実験的な作品を出して売り上げが落ちた時に買い支えてくれたのは「中身はともかくボウイさま素敵だわー!」という女性ファンだったという良い話に似ている。後々にその作品は世紀の名盤と評価されたあたりも似ている。
しかし男だって負けていない、とにかく男はガンダムが好きな生物だ。女性諸君は、男を見たらまず「こいつはガンダムが好き」と思った方が良い。会社の上司、東大生、政治家、ボクサー、みんな精巧なゲルググのプラモでも目の前に置けばヒ~ヒ~言って喜ぶのだ。え?何?「俺はガンダムは別に好きじゃない」って?だまってろ!空気を読め!とにかく男はみんなガンダムが好きだ。よくモテるためのテクニックみたいなのがあるが、女性にオススメしたいのは「ガンダム」と「ジョジョ」を知ることだ。これは即効性がある。ただ問題なのは、なぜかどちらも異常に「にわかファン」に厳しい所があるので中途半端に勉強するとにわか扱いされて逆に面倒くせえことになる危険性があることだろうか。諸刃の剣だ。
しかし男がもはや通過儀礼的に少年期にガンダムに心奪われる、これはなぜなんだろうか。ガンダムには「深いキャラクター造詣」「複雑な人間ドラマ」「緻密でリアルな設定」など魅力として語られるポイントはたくさんある。しかし、少年がガンダムを好きになるポイントは1つ。それは「なんか知らないけど大人っぽい!」だ。
やっぱりガンダムは見た目がかっこよくて、それでいて、ちょっぴり大人びている。そこが絶妙な塩梅になっていて、勇者王シリーズや戦隊物のロボで遊ぶ友人たちに「俺、もうガンダムわかるんだぜ」「やっぱり設定がちゃんとしてないとリアリティが無いよね~」と一歩先を行くドヤ顔をしたい。そんな少年の背のび願望が見事に結実する丁度いい位置にいるのがガンダムなんじゃなかろうか。
僕のガンダム入りは『機動武闘伝Gガンダム』で、Gガンダムはリアル路線を捨てた異端のガンダム作品だ。各国代表の派手なガンダム、今で言う「ご当地ガンダム」が殴りあったり蹴りあったりするんだ。ボンボンに連載してたときた洸一のマンガも集めてた。週1で放映されてるアニメを月刊誌に連載するという無謀なマンガで、ほとんどダイジェストだった。それでも大ゴマで描かれる各国のモビルファイターがかっこよくて夢中だった。ついでに連載されてた4コマ『がんばれ!ドモンくん』も好きだった(今読むとこっちの方が面白い)。ところが友人に宇宙世紀シリーズ(よりリアル路線な本家ガンダム)が好きなヤツがいて、そいつに「Gガンはガキ向けだからな~」と言われて、衝撃を受けた。「こいつ、さらに一歩先を行ってる!」と。そして感化された俺は近藤和久のリアル路線のガンダム漫画を片手に「やっぱりガンダムは宇宙世紀だよね」とのたまうクソガキになった。なんだかアホらしいのだが、子どもってそういうもんだ。はやく大人になりたいのだ。
で、実際に大人になった今はどうなったのか。宇宙世紀を舞台にしたハードでリアル路線な『ガンダムサンダーボルト』も、Gガンダムをさらにバカ方面に強化した『超級!機動武闘伝Gガンダム』も、両方買って面白がる大人に育ちました。
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