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Lenny code fiction

Skream! マガジン 2021年04月号掲載

Lenny code fiction

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the quiet room

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リアクション ザ ブッタ

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Reported by 山口 哲生 Photo by タカハシハンナ / 日吉"JP"純平

残すところもあと1曲となったとき、自分の姿を捉えているカメラに向かって、片桐 航(Vo/Gt)は胸の内を明かした。

"「ツアーが中止になって良かった」とは1ミリも思わないけど、なかったからこそできた今日だと思います。本当にありがとうございました!"

2020年に開催したツアー"Lenny code fiction Presents 5th Single 脳内 Release Tour「ロックの復権」"が、新型コロナウイルスの影響により、一部公演を延期せざるをえない状況になってしまったLenny code fiction。それを受け、今年2月に"Lenny code fiction Presents 5th Single 『脳内』Release Tour『ロックの復権~再演~』"と題したリベンジ・ツアーを予定していたのだが、それも2度目の緊急事態宣言を受け、中止という苦渋の決断をするに至った。しかし、ツアー・ファイナルを予定していた日に、"少しでも何かを届けたい"と立ち上がったのが、今回のストリーミング・ライヴ"THE GUEST"だ。

"THE GUEST"は2部構成で、第1部はゲストを招いたコラボレーション・ライヴ。内容としては、ゲスト・ヴォーカルを招きLenny code fictionの曲を歌ってもらったら、どんな化学反応が生まれるのか? というもの。参加アーティストは、河内健悟(ircle)、石原慎也&せとゆいか(Saucy Dog)、菊池 遼(the quiet room)、岩淵紗貴(MOSHIMO)、ASH DA HERO、佐々木直人(リアクション ザ ブッタ)、杉本 新(THE SIXTH LIE)という、なんとも豪華な顔ぶれ。パフォーマンスの前には、各ゲストとのエピソードをレニー(Lenny code fiction)のメンバーが話す場面もあって、お互いの関係性を窺い知れたり、ゲストの魅力を再認識できるところもあったりと、ライヴとしてだけでなく映像コンテンツとしても見応えのあるものになっていた。


菊池 遼(the quiet room)

ひとり目のゲストは、the quiet roomの菊池 遼。古くからの知り合いということもあって、"早めに名前が出てきた"という彼とは「脳内」を披露。レニー側としては、菊池であり、the quiet roomのイメージから、青いイメージのある曲がいいんじゃないか? という話をしたそうなのだが、菊池本人から"自分のイメージにないからこそ、やってみたい"と話を受け、この曲がチョイスされたとのことだ。ハードなサウンドを不敵な表情を交えながら歌った菊池は、曲を終えると"できたでしょ(笑)?"とひと言。この日、この瞬間でしか観ることができない貴重な演奏は、まさにライヴならではのものになっていた。


河内健悟(ircle)

そんな熱演を受けて登場したのは、ircleの河内健悟。片桐が高校時代にライヴハウスで観たときに衝撃を受け、"あの日、あの人たちの曲を聴いていなかったら自分は曲を作っていなかった"と語るほど、彼にとっても、レニーにとっても多大な影響を与えたバンドであり、そのフロントマンを招いて披露されたのは「Vale tudo【MAKE MY DAY】」だ。笑みを浮かべながら、シャウト交じりの強烈な歌声を轟かせる河内。そして、その歌声を堪能しながら、勢い良く疾走していく4人の音から、今この瞬間を存分に楽しんでいる様が伝わってきた。


岩淵紗貴(MOSHIMO)

"俺たちにない元気さや、明るさを持っている"と紹介されたのは、3番手に登場したMOSHIMOの岩淵紗貴。コラボレーションした「Make my story」は、不屈の闘志を滾らせながらも、レニーの中ではとりわけまばゆい光を放つ曲だが、ソラ(Gt)が"夏感があった"、kazu(Ba)が"明るさが増した"とコメントしていた通り、楽曲が持っているポジティヴィティが強烈なまでにアップ。メンバー全員楽しそうに音を奏でていたが、手を挙げたり頭を振ったり、跳ね回ったりと全身を使って表現していた岩淵も同様で、終わったあとに"またやろうよ!"と興奮気味に話し掛けていた。


ASH DA HERO

"兄弟たちが困ってるって言うから助けに来ました"、"画面の前のお前もかかってこいよ!"と、視聴者を激しく煽ったのはASH DA HERO。5人で繰り広げた「Colors」は、片桐が"配信ライヴを超えた"と話すように、とにかくハイボルテージだ。凄まじいまでの熱を帯びた歌声や、ロックの色気を存分に放つパフォーマンスであり、その立ち姿はKANDAI(Dr)が言う通り、まさに"ロックの化身"。そんな彼に呼応するように、4人のテンションもどんどん上がっていく。アウトロでは"どんなご時世だろうが、諦めずに戦ってるミュージシャンがいる。どんなご時世だろうが、俺たちの歌は終わらない。また必ずライヴハウスで会おうぜ"と熱い言葉を届け、ステージを締めくくった。


杉本 新(THE SIXTH LIE)

第1部もいよいよ後半戦に突入。続いて登場したのは、THE SIXTH LIEのArataこと、杉本 新だ。"温泉に2時間ぐらい浸かりながら、将来の話をしていた"と、片桐とソラが楽しそうに思い出話に花を咲かせていたところからも、お互いを深く知る間柄でもある両者。披露した「Key -bring it on, my Destiny-」について、レニー側としては、"この曲をまっすぐに歌ってほしいと思った"という思惑があったとのこと。事実、シリアスな雰囲気をたたえた熱のあるサウンドと、伸びやかで透明感がありながらも芯の強い新の歌声の相性は、とにかく抜群。演奏中に片桐と新が笑顔でお互いに視線を送り合う場面もあり、その仲の良さが垣間見えた。


佐々木直人(リアクション ザ ブッタ)

続いて登場したのは、リアクション ザ ブッタの佐々木直人。コラボ曲としてチョイスされた「Flower」で、佐々木は伸びやかなロング・トーンを響かせていたのだが、以前kazuがリアクション ザ ブッタとコラボをしたときに、佐々木の歌い方は後ろ乗りなところがあると言われたそう。しかし、そのタイム感が"航と似ていて違和感がなかった"と話していて、改めて聴いてみるとたしかに納得。それだけでなく、ハーモニーの相性も非常に良く、温かな手触りのあるミディアム・ナンバーを、より力強いものにしていた。


石原慎也&せとゆいか(Saucy Dog)

そして、豪華共演を締めくくったのは、Saucy Dogの石原慎也とせとゆいかのふたり。Saucy Dogの魅力として、楽曲のメロディを挙げ、彼らの歌についてレニーのメンバーが話していたが、披露されたのはそんなふたりの歌声がとにかく美しく映える曲であり、レニーの中でも珍しいスロウ・バラード「the last words」だった。3人で美麗なハーモニーを響かせれば、石原は圧巻のハイトーン・ヴォイスを轟かせ、落ちサビではせとがソロをとる場面も。豪華なパフォーマンスの連続で視聴者を魅了し続けたプログラムを締めくくるに相応しい、ドラマチックな名演となった。



曲を終え、和気藹々と話していたSaucy Dogのふたりを送り出すと、ステージをあとにするレニーの4人。そのまま第2部であるLenny code fictionのワンマン・ライヴが始まった。メンバーが肩慣らしをするように鳴らし始めたリズム・セッションから、1曲目の「脳内」へ。ギラギラとしたバンド・サウンドを叩きつけると、続く「KISS」のクラップとダンス・ビートが高揚感を激しく高めていく。グルーヴィ且つ艶のあるプレイを繰り広げると、そのまま間髪開けずに「Alabama」に突入。"ツアーができなかった鬱憤をここですべて!"と片桐が叫ぶ場面もあったが、4人が4人共同じ気持ちだっただろう。とにかく凄まじい熱量を放ちながら駆け抜けていった。

他にも、片桐が拡声器型のマイクで煽り倒した「Snatch」から、豪快なアンサンブルで揺さぶっていく「欲を纏う」に繋げていくなど、怒濤の勢いでライヴを繰り広げていく4人。そんな空気をガラリと変えたのが、「Memento」だ。メロウな響きのシンセサイザーを生かしたチルいパートと、ずっしりとしたリフを湛えたハードなパートを行き来するミディアム・ナンバーは、KANDAIのダイナミックなドラミングや、kazuが要所で入れてくる印象的なベース、静と動それぞれのパートを見事に色づけしていくソラのギターに、時に儚く時に振り絞るように声を届ける片桐の歌と、彼らそれぞれの魅力であり、Lenny code fictionの真骨頂が見事に凝縮されたものになっていて、早くこれを生で体感したい! と、心の底から思える瞬間だった。

もちろん、4人も自分たちの音を生で届けたいという想いが強かった。いや、その想いしかなかったと思う。一度延期に追い込まれたツアーのリベンジ公演が中止になり、自分たちの思うように動けない状況は、ただただ歯がゆさや悔しさしかなかっただろう。しかし、ツアー中止の発表から今回の配信ライヴまで3週間という短期間でありながらも、これだけのアーティストが自分たちのために集まってくれたことに、ソラは"僕らは本当に幸せ者です"と感謝を告げていた。冒頭に記した片桐のひと言は、そんな彼らの心境そのものだったと思う。悔しい気持ちは間違いなくある。だけど、こんなにも素晴らしい1日が生まれたのだ。

この日のラスト・ナンバーに選ばれたのは「世界について」。悔しさに飲み込まれそうなときも、先が見えなくて打ちひしがれてしまいそうなときも、どこかに幸せは必ずある。だから、"この世界を今日も愛してる"と歌う、なんともエモーショナルなエンディングとなった。エンドロールでは、5月30日には同世代とのツーマン・ライヴ"YUTORORE"を、6月20日には先輩とのツーマン・ライヴ"讃咬-SANGAMI-"を開催することを発表。"本気で、心の中から、素敵な世界と言える日を待ちましょう!"と最後に叫んだ片桐。その気持ちがある限り、彼らはきっと前に進み続けてくれるだろう。

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