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INTERVIEW

Japanese

ircle

2020年06月号掲載

ircle

Member:河内 健悟(Vo/Gt) 仲道 良(Gt/Cho) 伊井 宏介(Ba/Cho) ショウダケイト(Dr)

Interviewer:山口 智男

ircleが4年半ぶりとなるフル・アルバム『こころの℃』(読み:ココロノオンド)を完成させた。リリースはほぼ毎年続けてきたが、コンセプチュアルだったミニ・アルバムから一転、全員が持てるものをすべて、全力で注ぎこみながらハードコアもバラードも飲み込んだ多彩な全10曲は、結果バンドの底力を改めてアピールするものに。新たな挑戦も含め、メンバーたちも相当な手応えを感じている。新レーベル"MURO_RECORDS"のリリース第1弾で、メンバー自ら"より裸のircle"と言う『こころの℃』。後々までircleの代表作として記憶されるに違いない。


今一番かっこいいみたいな空気は、自分たちでも出ているって思います(笑)


-『こころの℃』、とても聴き応えがあるうえに、聴きながら制作の舞台裏のことにまであれこれ想像が膨らむ、とても興味深いアルバムでした。どんな作品を作ろうと考えたのでしょう?

河内:とにかくいい曲を詰め込もうって。毎度毎度そうなんですけど、今回はアルバムのタイトルが決まってから加速というか、歌詞、音作り共に速くはなかったですけど、レコーディングの場面でもたくさんの刺激があったアルバムになりました。

-タイトルの"こころの℃"は、2曲目「エヴァーグリーン」の"心の温度で/繋げた"という歌詞からきているんじゃないかと思うのですが、ってことは「エヴァーグリーン」ができてからタイトルを含め、アルバムの方向性が決まったんですか?

河内:それが違うんですよ。"こころの℃"というタイトルが決まってから、「エヴァーグリーン」に"心の温度"という言葉を入れたんです。

-では、"こころの℃"というタイトルはどこから?

河内:5~6年くらい前からタイトルに"c"を入れることはすでに決まっていて――

仲道:フル・アルバムのタイトルは"i しかないとか"(2014年リリースの1stフル・アルバム)、"我輩は人間で r"(2015年リリースの2ndフル・アルバム)というふうにircleの1文字を順番に入れていくという縛りがあるんです。それで今回は"c"だったという。

河内:だから、僕の携帯のメモ帳にはずっとあったんですよ。それをタイトルの話になったときに提案したら、みんなが"いいんじゃないか"と言ってくれたんで、作り始めていた曲を、そこから"こころの℃"というタイトルにまとまるように詰めていったんです。

ショウダ:僕らとしては珍しいパターンですよね。だいたいタイトルは最後に決めるんですけど、前回『Cosmic City』(2019年リリースのミニ・アルバム)を作った流れもあると思います。『Cosmic City』でヒューマンな部分、人の心の中を歌ったという流れがあったので、河内が"こころの℃"にしようって持ってきたとき、メンバー的にも腑に落ちたというか、"次に歌うことは、こういうことだよな"ってすんなり納得できたというか。

-「エヴァーグリーン」を聴いて、"心の温度で繋げた"のはircleとお客さん、ircleと仲間のバンドの関係だと思ったのですが、『こころの℃』で歌っている"心の温度"はもちろんそれだけにとどまらないわけですよね?

河内:そうです。いろいろなタイプの"心の温度"を歌っています。まぁ、なんのことを歌っても、結局は"心の温度"に返ると思うんですけど(笑)、今回はそれをもうちょっと明確にというか、深くというか、詰めていったんです。

-曲順も興味深いものになっています。前半は仲道さん作曲の曲が並び、バンド名義の「B.N.S.」を挟んでからの後半は河内さん作曲の曲が並んでいる。そういう並び方になっているせいか、仲道さんと河内さんが作る曲のカラーが出ていて、仲道さんの曲はウェルメイドで、河内さんの曲はもう剥き出しというか、河内さんそのものっていう作り方の違いがよりはっきりしたところが面白い。

河内:そういうところもあるかもしれないけど、僕が思うにこのアルバムの面白さって、パキっと分かれているようで、やっぱりバンドなので、ダマになるところというか。良が作ってきた曲の歌詞を僕が書き換えることで劇的に良くなったり、逆に僕が作った、ただただシンプルな曲がバンド・アレンジで劇的に変わったり、そういうところなんじゃないかと。それぞれのパートがあることで、二面性もありながら、そこには共通する面白さもあるという気がしています。

-仲道さんが作ってきた曲の歌詞を河内さんが書き換えたことで劇的に良くなったのは、例えば、どの曲ですか?

河内:もちろん変えていないものもあるんですけど、劇的に変えたのは「ホワイトタイガーオベーション」と「ハミングバード」。動物系の2曲ですね(笑)。

仲道:「ハミングバード」はすごく良くなりましたね。"Gibson hummingbird"っていうアコギを買って、早速家で弾いていたら冒頭のアルペジオが出てきて。そこから曲を作ったらちょっと寂しい雰囲気になったので、"ちょっと寂しい曲だよ"って河内君に渡したら、最終的に希望どころか、全世界を救うぐらいの歌詞を書いてくれたんです(笑)。

河内:もともと良かったんですよ。結構かっちり作ってきてくれて、そのままでもいい曲にできると思ったんですけど、そこは僕ももうひと磨き掛けられないとやっぱり悔しいじゃないですか。

-曲もいいし、歌詞の物語もいい。でも、別れの歌ですよね?

河内:明るい方向に行ってほしいって感じです。

-なんだか、歌を歌っていた女の子と別れたのかなぁって(笑)。

河内:はははは(笑)、そういう解釈もありですが。

-「ホワイトタイガーオベーション」の歌詞は、どんなふうに変わったんですか?

河内:そんなには変わってないんですけど、はっきりとホワイトタイガーの話にしました。

仲道:視点が変わったんです。僕が持っていった段階ではホワイトタイガーを飼っている人や、それを見ている人の視点だったんですよ。それが河内君の手によってホワイトタイガーの気持ちに変わった。

-これ、今のircleのステートメントですよね?

ショウダ:そうですね。より開会宣言っぽいものにはなりました。

河内:たしかに今一番かっこいいみたいな空気は、自分たちでも出ているって思います(笑)。

仲道:"喰い殺すぞ"って歌ってるもんね。

河内:サウンドもそう聴こえてきましたよね。吠えているというか。

ショウダ:ベースもガンガン吠えてるし。

河内:狭苦しいところからどうにか解放してほしいという気持ちを歌いました。"おりゃぁ、こんなところから出しやがれ"っていう。

仲道:曲の成り立ちもそんな感じで。2年ぐらい前から僕らの中で、速くて攻撃的な曲が多くなってきていたんですけど、ベテランのバンドさんのライヴを観に行ったとき、そんなに速くない曲でも、十分にノれたんです。長くやってるバンドってやっぱりかっこいいと思いながら、そういうバンドもどこかでターニング・ポイントがあったんだろうなって。曲のテイストというか、リズムに1回テコ入れする時期があったんじゃないかと考えるようになったんです。僕らもだんだんバンドのキャリアが長くなってきたので、ちゃんとお客さんをノせることができる曲というか、曲だけでもしっかり持っていける曲が必要だと思いました。プラス、それがリフものであればなおさらいい。このテンポのアレンジにしたっていうのはそういう理由からなんです。だから、「ホワイトタイガーオベーション」は、これまで自分たちがやってきたことに対するカウンターでもあるというか、さらに新しい曲作りが俺らにもできるんじゃないかという1曲なんですよ。そういう作り方に歌詞が引っ張られたっていうところもあると思います。人によって感じ方はいろいろあるかもしれないですね。人から閉じ込められているのか、それとも自分で閉じこもっちゃっているのかっていう。

-そういう曲を1曲目に持ってきたところが新しいし、バンドの自信が感じられるし。

河内:そうですね。その曲の終わりではもう檻から出てますからね(笑)。

-演奏のグルーヴを考えるとリズム隊の役割は大きかったんじゃないですか?

ショウダ:どれだけircleのノリを作れるかってことだけ意識したので、そんなに細かいことはしてないんですけど、バンドが最初にオールインするまでが勝負かなと思って、レコーディングには臨みましたね。

伊井:ベースは実験的なことをやりました。最近モータウンを含め、オールディーズの曲を聴くようになったんですけど、インプットの方法を変えていくことがircleにどう還元されるか試してみましたね。ノリも今までとはちょっと違うんですよ。

-間奏でホーンみたいに鳴っている音はギターなんですか?

仲道:ギターですね。トータル5本ぐらい同じフレーズを弾いているんですけど、それぞれに違うエフェクトを掛けているんです。人の声みたいになるエフェクトとか、ストリングスっぽくなるエフェクトとか、いろいろ混ぜて"ギターなのか?"みたいな音色にしているんですよ。

伊井:最初は"その中から選ぼう"って言ってたんですけど、エンジニアの兼重(哲哉)さんが"全部入れちゃおう"って(笑)。あれは楽しかった。