Japanese
ircle
Skream! マガジン 2018年01月号掲載
2017.12.10 @渋谷TSUTAYA O-Crest
Writer 山口 智男
故郷である大分県別府市の後輩 SIX LOUNGEとリリースしたスプリットCD『地獄盤』を引っ提げ、全国を回ってきたircleによる"ircle 2man tour 『HUMANisM 決闘編 2017』"が、12月10日、セミ・ファイナルを迎えた。各地、盟友(あるいは飲み仲間とも)と言えるバンドを迎え、一騎討ちを繰り広げてきた今回のツアー。セミ・ファイナルの対バンは、SUPER BEAVER。19歳のころからの付き合いであるばかりではなく、"俺の方が(みんなよりも)ircle好きだって見せに来た"(渋谷龍太/Vo)、"東京で一番の親友がぶーやん(渋谷)"(河内健悟/Vo/Gt)と、SUPER BEAVERとircle、両バンドのフロントマンが言ったように、相思相愛と言えるこの2バンドの共演ほど、セミ・ファイナルを飾るに相応しい顔合わせはなかった。しかし、決して馴れ合いの関係ではない。
この日、"一番の強敵として、ここに立たせてもらってます!"と渋谷がいきなり言い放ったとおり、お互いにライバルとしても認め合った両者は、どれだけ観客を圧倒できるか、まるで競い合うように熱演を繰り広げた。
メンバー全員のシンガロングで始まる「うるさい」でスタートしたSUPER BEAVERは、"エンジンかけないと置いていっちゃうよ!"と渋谷が煽りながら「美しい日」ほか、現在のライヴでは定番となっている曲に加え、最近のライヴではあまりやっていなかった「ルール」、「your song」も披露。絶対に負けられないという気持ちがあったのか、最近は観客に曲を届けることに徹しているように思えた彼らが、この日は"数少ない盟友のセミ・ファイナル。気合が入らないわけがない!"という渋谷の言葉どおり、曲を思いっきりぶつけるような演奏で観客を圧倒。こんなSUPER BEAVER、久しぶりに観た!
その直後だけに、ircleはさぞやりづらいだろうと思いきや、悠長にメロディになんか乗せてられるかと言わんばかりに河内が胸の内を吐き出すように言葉を畳み掛ける「HUMANisM」でスタートダッシュをかけると、客席から無数の拳が上がった。曲が進むにつれ、どんどん熱が上がる演奏が醸し出す、ただならぬ雰囲気に興奮を抑えきれない観客が、言葉にならない声を上げる。
"あっち(SUPER BEAVER)は調子いいかもしれんけど、次は俺たちの番やろ!"と河内が自らに発破を掛けるように叫び、バンドは新旧のレパートリーを次々に投下。「ミスタージャックナイフ」では観客が"ヘイ! ヘイ! ヘイ!"と手を挙げ、「カゼサイテデリコ」では、跳ねるリズムが観客の身体を揺らした。そして、中盤の「orange」では、胸が潰れるような物語をじっくりと聴かせた。
曲は思いのほか幅広い。それがどれも壮絶と言える表現になってしまうのは、それらが必死に生きるギリギリのところで生まれたものだからだ。それがircleの真骨頂。
"せめて何かになりたい。真っ暗なときに少しでも聴こえてくるものになりたい"と語った河内はバンドにとって転機になった「光の向こうへ」を演奏する前に"前向きな決意表明。一緒に歌えるか?"とフロアに呼び掛けた。そこからバンドの新しいアンセム「瞬」に繋げると、ラストスパートをかけ、最後は客席にダイヴ! お互いに本気でぶつかり合ったSUPER BEAVERとircle。聞けば、これまで何度も対バンしていながら、ツーマンはこの日が初めてだったという。共に気迫に満ちた演奏は、そんな顔合わせだからこそ実現したものかもしれない。こんな決闘ならいつでも大歓迎。来年5月に新作をリリースすることを発表したircleは、アンコールで新曲「わかりあうこと」を披露。闘いを終え、肩の力が抜けたのか、曲そのものが持つ魅力がじわりと沁みた。
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