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INTERVIEW

Japanese

ircle

2019年05月号掲載

ircle

メンバー:河内 健悟(Vo/Gt) 仲道 良(Gt/Cho) 伊井 宏介(Ba/Cho) ショウダケイト(Dr)

インタビュアー:山口 智男

ircleの進化が止まらない。自らを解放した前作『CLASSIC』から1年を経てリリースするミニ・アルバム『Cosmic City』で、バンドは新境地を更新している。曲のテーマを誰の人生にも起こる"別れ"に絞ったことで、ircleの4人が奏でるヒリヒリとしたロック・ナンバーの数々は、これまで以上の説得力を伴い、聴き手に迫るものに。リリース後は5月25日の大分SPOTから6月21日の渋谷CLUB QUATTROまで、手強い対バンを迎え、バチバチとやり合いながら各地を回る"ircle New Mini Album リリースツアー 2019「Cosmic Tours」"も待っている。

-ircleらしいヒリヒリとした感覚が前作(2018年リリースのミニ・アルバム『CLASSIC』)よりもさらに戻ってきたんじゃないかと感じましたが、みなさん、どんな手応えがあるのかというところから聞かせてください。

河内:もう一歩新しいところに足を突っ込めたかな。俺らの中で凝り固まっていたものを解放して、非常に気持ちのいい世界に行けるようなアルバムになったと思います。

仲道:もともと忘れちゃいけない大事なことを歌ってきたバンドというところが、さらに鋭利になってきたのかな。研いで刺しにいくみたいな作業が、さらにできるようになってきたという気はしますね。

伊井:楽しく演奏できました。

仲道:それは大事だよね(笑)。

ショウダ:前作の『CLASSIC』を作って、僕らとしては、次はフル・アルバムという気持ちもあったんです。でも、偶然なのか必然なのかわからないんですけど、いろいろなシーンの別れを表現した曲が、河内と仲道のふたりから上がってきて。だったらミニ・アルバムの方が、そういうところは表現しやすいんじゃないかって。そういう意味では、テーマもはっきりしていて、かなり濃縮された1枚ができたと思っています。

-河内さんが言っていた新しいところというのは?

河内:主に歌詞の面ですね。最後の「ペルセウスの涙」は、バンドの演奏に対して言葉をぶち込んだだけなんですけど、そういうこともやっていいんだっていう。そして、それがバンドとしての表現にちゃんとなるんだってところが、新しいところに一歩......一歩だけですけど、入れたのかな。もっともっと解放していきたい気はしますけどね。あともうひとつ、良が持ってきた歌詞に対してしっかりと芯の部分まで書き上げる、歌い上げる。そして、それをしっかりとまとめるってことにはチャレンジできたのかな。

-仲道さんが持ってきた歌詞っていうのは?

仲道:「ラストシーン」、「ただでさえ君が」、「Heaven's city light」、「忘レビ」ですね。これまでは僕の歌詞の意図を河内君が汲んで、自分なりに翻訳して、発信してくれてたんです。でも今回は、僕が書いた歌詞が100パーセント変わってしまってもかまわない。それよりも河内君のストーリーを聴きたかった。あくまでも僕は背景やロケ地だとかを決めるだけで、そこで何が起こるかは河内君に託す。その中でも残っている言葉はあるんですけど、今回河内ワールドが僕の曲に乗ったところが前回までとは違いますね。これまでは僕の気持ちも歌ってくれてたんですけど、ちゃんと河内君の底から出てくる歌詞になったという思いはあります。

-そこは難しいところじゃないですか? 仲道さんだって適当に書いてきたわけじゃないんだから、それを書き換えちゃっていいのか、生かした方がいいんじゃないかって葛藤はあると思うんですけど。

河内:だから、これまでは良の意図を生かす気持ちが強かったんですけど、今回は、引っかかる言葉はちゃんと残して、自分の歌詞に書き換えていったんです。その方が自分も気持ちが乗るし、少なからず伝わりやすくしたいから書き換えているわけで、俺の言葉でちゃんと伝えた方がお客さんにも届くのかなと思って。良の持ってくる歌詞は、わりと抽象的な表現が多いんで、それをしっかり自分が歌うならこういう言葉だろうっていうものに置き換えると。もちろん曲の核になる部分は残しながらですけど。

-例えば、仲道さんが持ってきた「Heaven's city light」の歌詞は、聴き手の解釈を限定するぐらい具体的なものになっているじゃないですか。たぶんircleが別府出身だと知っている人は、故郷を舞台にした歌だと気づくと思うんですけど、それを連想させる具体的な言葉は仲道さんが持ってきたときからあったんでしょうか?

河内:なかったです。だから、最初は別府の歌だとはわからなかった(笑)。

仲道:"別府の歌だよ"と渡してはいるんですけどね。

河内:それを具体的なものにするのは、自分の役目かなって思ったんです。プライベートな感じを出す表現方法は得意だし、好きなので。

-自分たちの故郷の歌にした方が、より伝わると考えたわけですよね?

河内:うん、そう思いました。こっちもそう思いながら歌った方が感動するし、こっちが感動しなきゃたぶん伝わらないので、そうしました。

-なるほど。で、その「Heaven's city light」も、さっきショウダさんが言っていた別れを題材にしているわけですが、今回別れの歌というか、もっと言ってしまえば、死別をきっかけに人生の終わりを考えた歌が多いのは――

河内:偶然ですね。そういう心持ちで書き上げる歌詞が多かったというだけで。最初からそういうコンセプトを決めて書いていったわけではないんです。死別を含め別れっていうのはみんな経験することですから。俺ら4人とも共有している経験もありますし。自然とこういう曲が揃う時期だったんじゃないですかね。起こったことや思ったことは歌うべきだっていう思考になっちゃうんで、歌詞にも自然と出てきたのかなっていう。

仲道:曲を選んでいるときに、"めちゃめちゃ暗い(ミニ・)アルバムになるんじゃないか"って言ってたくらいなんですよ(笑)。

-でも、作品全体の印象として暗いものにはならずに、人生の終わりを意識したからこそ、残っている人生がどれだけ大事なのか、そこで何をするべきなのかを改めて歌っているように感じましたが。

河内:自分が経験した別れのモヤモヤとか悲しみとかの行き場所を見つけてあげないと。人生の中で絶対起こることなので、それでも笑ってもらえるような表現ができるのが音楽のいいところだと思います。そういうふうになればいいなと歌詞も曲もほぼ祈りを込めて作りました。悲しまないでっていうのは無理な話かもしれないですけど、それは絶望じゃないし、みんな経験することだから、最後には笑えるように、前向きに捉えられるようになればいいという気持ちですね。

-街の雑踏の音から始まるところや、最後の2曲――「アンドロメダの涙」と「ペルセウスの涙」が組曲になっているところから、コンセプト・アルバムっぽくも感じたのですが、8曲を1枚にまとめるにあたっては、そんなことも意識したんですか?

河内:いや、どれも推し曲になるように作ろうっていつもと同じ気持ちで。

ショウダ:徐々に形になっていくなかでこういう景色が見えたから、それをもっと広げるにはどうしたらいいかとか、聴き手がもっとこの世界に集中できるようにするにはどうしたらいいかとか、4人ともいろいろな想像力を持っているので、雑踏の音を入れてみようかみたいなことは考えますけど、それはほんとに最後の最後で。

仲道:僕らベーシックのレコーディングは合宿でやるんですけど、各曲録っていきながら毎晩みんなで飲んでいると、タイトルも含め各曲のイメージを表す言葉がいろいろ出てくるんですよ。それらを河内君の中で歌詞に落とし込んだのが「ペルセウスの涙」。この曲は、最初ベーシックだけ録って後々ヴォーカルを入れたんですけど、それこそ最後に河内君が全部を繋げてくれたというか、ひとつの額に入れてくれたというか、最終的にバシッとハメたのかな。

-じゃあ、ひょっとしたら「ペルセウスの涙」は、いわゆるメロディに言葉を乗せた曲になる可能性もあった?

河内:そのつもりでした(笑)。"エーアー、エーアー"というコーラスしか決まってなかったですよ。インストっぽくそんな感じで終えようかって雰囲気もあったんですけど、味気ないと思ったら、何か意味が欲しくなっちゃって。それで"エーアー、エーアー"に対していろいろなメロディを考えてみたんですけど、全然ハマらなくて、これはもうコーラスはコーラス、言葉は言葉にした方がしっくりくるかなと思ったんです。