Japanese
THE BACK HORN
2015年11月号掲載
Member:岡峰 光舟(Ba) 菅波 栄純(Gt) 山田 将司(Vo) 松田 晋二(Dr)
Interviewer:石角 友香
-必然的な変化というか。それで、いろんな曲があるこのアルバムの中で、山田さん作のTrack.4「tonight」はちょっとびっくりして。清々しいギター・ロックとも言えそうな。
山田:なんか書きたくなったんですよねぇ。THE BACK HORNらしい感じを(菅波)栄純の曲を軸にして作ったアルバムだったけど、ふと自分が思ってしまった気持ちとかはやっぱ書きたいなと思ってたので。純度の凝縮みたいなところは曲にしたいなと思って書きましたね。
-そこも選曲ミーティングの成せる技なんでしょうか?
菅波:そうですね。デモ段階ではもっと曲があって、その中から曲を絞っていくときに......結局は理屈じゃないじゃないですか? でも理屈ではないところで"これは!"っていうところにいかないと。もちろん議論もすごく重ねるんですけど。「tonight」が入ってお互いに引き立つものがあるってことは、やっぱり感覚的に自分たちでも見えたというか。それで選ばれていったっていう感じはあるんですよね。
-そして、Track.5「コンクリートに咲いた花」はもしかして松田さんの詞が先ですか?
菅波:詞が先です。「悪人」もそうですね。まぁ、松(松田)が曲は詞を書いたものが多いですね。
松田:今までも"作曲:山田/作詞:松田"っていうパターンがわりと多めで。今までもアルバムの中で2曲あって。
山田:前作、前々作はそうだね。
松田:「コンクリートに咲いた花」は最初は路上風のいなたい歌詞でやろうと思ってたけど、曲が少し都会的になったので、"曲と同じような印象にしたいな"って思ってやりながら書き換えたり。あと、Track.6「記憶列車」も(岡峰)光舟の曲に歌詞を乗せてて。決まった歌詞に曲をつけるっていうやり方じゃないぶん、いろいろ初めてやる感じはありましたね。
-Track.1「暗闇でダンスを」の最初の歌詞でこのアルバムの全体像というか、"世界の残酷さに胸撫で下ろす"というフレーズのこの図星感。「悪人」の"あの悪人はきっと僕だ"にも通じますが。
菅波:図星感(笑)。それはもう"あ、いいの出たな"って思いましたね(笑)。まず、"魂というのはなんだろうな?"っていう、それこそ『リヴスコール』ぐらいから気になってるテーマがあって。それはスピリチュアルに考えてるっていうよりも、亡くなってしまった人なのに未だに自分に影響を与えてる人とか、そういう人が未だに近くにいるような気がする感覚とか、そういうのも含めて"魂とは?"っていう命題なんです。だから「魂のアリバイ」っていう曲もあるんです。で、「暗闇でダンスを」は、"俺はこんなことも考えてるぜ""ぶっちゃけ、潔白な人間ではないぜ"っていうところでもがいてるんだけどなんかこう......もしかしたら人間には魂っていう穢れなき部分があって、それが"暗闇でダンスする"ようにもがいてるときでも信じれば道標になってくれるんじゃないか?っていう思いがあったうえで"Oh My Soul"って歌い出しなんです。
-ああ、それで"oh my soul"なんですね。岡峰さんのTrack.7「胡散」も今の時代の人間の心情に符号してるというか。"人を嘲笑う資格などあるのか"というフレーズとか1番ストレートだと思うんです。
岡峰:そうですね(笑)。わかってるつもりになってる自分がわかんなくなる、みたいな。そんな気分のときに書いた詞ですね。
-常に情報に晒されてるし。
岡峰:何やっても、どの話を聴いても胡散臭く感じるときもあるし。実際それは自分が胡散臭いからそうなのかな?とも思うし。そう、現代っぽいです。"これが正しい"って情報はいっぱいあるけど、"全部ウソだし"って、選択するのは自分だから。
菅波:でもその自分もわからなくなる、みたいな。
岡峰:考えるほどドツボにはまっていく感じ。それが曲の滑稽さにハマっていくのかなと。
-真剣に作ってるんだけど滑稽に聴こえる仕掛けがあったり。菅波さんのサタニックなギターとか(笑)。
岡峰:(笑)そんな注文してないんですよ。栄純は"俺がこういうの好きなんだろうな"っていうのを考えながらギター入れたんだろうな、っていう探り合いもまた胡散臭いという(笑)。
-そこは胡散臭くはないんじゃないでしょうか(笑)。禍々しいんだけど一瞬笑える、そういう部分はアルバム全編を通して何ヶ所か出てきますね。
菅波:それがモダンな感じなんですよね。"思いっぱなし"じゃない。
-だからTrack.10「シュプレヒコールの片隅で」も、団結する感じがありつつ、その状態を若干揶揄してる感じもあったり。
菅波:そう。気持ち的には......片隅っていうのが。
-山田さんのヴォーカルもまっすぐ歌うのが個性だとしたら、逆の効果として使ってる感じもあるし。
山田:まっすぐに歌えば歌うほど......。
菅波:すれ違っていくみたいな悲しさをひとつ書きたかった。この「シュプレヒコールの片隅で」は、架空の革命が起こった時代のことを書いてて、男たちは必死に自分の愛する人の涙を止めたいがために戦ってるわけです。だけど、戦えば戦うほど、戦争が長引くほど女の人はどんどん不幸になっていく苦しさ。そこにある気持ちは全部純度の高いものなのに悲しい方に向かっていくって話は書きたくて。
-テーマがスコーン!と入ってくる気がします。そしてアルバム・タイトルもTHE BACK HORNしかつけないよなって独特なのがきましたね。
松田:なんか、がっつり日本語だけのタイトルってのはありそうでなかったんですよね。しかも漢字だし。それが15年ぐらいやってきた今となれば、そういう重さって、このアルバムっぽいなと思ったところも少しあったので。アルバムのできあがった架空の情景とかそこで見えてきた芯みたいなところとかをタイトルにしたりするんです。『リヴスコール』とか、造語をタイトルとして名づけたこともあったんですけど。今回も造語といえば造語で、なんか"日本語""漢字"っていうアルバムだなって雰囲気があって。
-運命が開花してしまうといいことも悪いことも起こりそうですね。
山田:割り切れない感じとか目を背けたくなるようなことをもう1回歌いながら、でもやっぱり共に行こうっていうのが人間っぽくて。THE BACK HORNっぽいんじゃないか?っていうのがタイトルとしてマッチしてる感じがしますね。
松田:音楽全般や自分たちの音楽、みんなのそういう力が、曲の中で響いてくれたらありがたいなって願いも込めつつ。それぞれの花が開花してくれたらっていう思いはありますね。
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