Japanese
【Skream!×MUSE音楽院特別企画】 The Mirraz特別講義
2014年08月号掲載
まず、僕は中学生からギターを始めて、高校の頃はバイトばっかりして機材を集めてました。KORNとかミクスチャーが流行ったときに、新しかったから、そういうのを日本でやったら面白いなあって思ったんだけど、山嵐とかメロンマンとかインディーズにもういっぱいいて。そういうシーンのライヴにたくさん行ってたんです。そのミクスチャーにポップなものできたら面白くなるのかなーって思っているときにDragon Ashが出てきて、ミクスチャー・ブームが到来した。このままミクスチャーやってても、新しいことにならないぞって思い始めたのが、高校を卒業してバイトをずっとしてたとき。僕はそのとき、新しい音楽をやれば音楽で食べていけるっていう認識があったんですけど。実際新しい音楽ってなんだろうなってわからないまま、打ち込みのリズムとギターとベースと歌っていうのをやったら新しいかなって思って。とにかく新しさを求めて活動をしてました。とにかくライヴをすれば人が来て、人気が出るんじゃないかみたいな気持ちもあって。都内のライヴハウスで結構やってて、店長さんとかが"レーベル紹介してあげるよ"って言ってくれるんですけど、"じゃあ次のライヴでまた"みたいな感じでいつまでも紹介してもらえない状態が続いたりして。自分たち的にも新しい音楽やっているのに、なんで皆わかってくれないんだって気持ちにもなったりするんですよ。それが2年くらい続きました。
それで2000年代の初め頃に、ポスト・ロックっていう音楽が流行り始めて。RADIOHEADが『Kid A』っていうアルバムを出したときにバンドの形態っていうものをめちゃくちゃにしたんですよ。シンセと打ち込みのドラムだけっていうサウンドをやってそれがすごい新しいって言われる時があったんです。それこそ"ギター・ロックまだやってんの?"みたいな。洋楽がそういう時代だったんですよ。俺もそう思ったりしてて、ロック自体がダサいっていう気持ちのときもあった。だけど、それと同時にロックンロール・リヴァイバルっていう、60年代の古い音楽をすることで逆に新しいよねっていう流れも起こっていた。でも、僕は全然そっちの流れに気付かないまま、僕は2000年代初頭を過ごしてたんですけど、こっち(ポストロック)にいると歌もないし、どんどんリズムも難しいものになっていく。ライヴやっててもお客さんが増えないけど、自分たち的には新しいものをやっているっていう自信がある。そういうサイクルを1年間くらいこなしていくうちに、このままでは食べていけないと思った。その時は兄とバンドをやってたんですけど、兄はエレクトロニカとかパソコン1台でやる音楽がすごく好きで、"俺はこのまま1人でやっていく"って言ってて。俺は、それをやめてもうちょっとわかりやすいものをやろうと思ってたときに、くるりの「ばらの花」をたまたまテレビで観たんです。それを観た時に、すごくいい曲で名曲ではあるんだけど、サウンドにエレクトロニカとかポスト・ロックを感じさせる要素があったんですよ。こういう難しい音を後ろに置きながらも、すごいポップな歌をのせることでポップ・ソングとして成立するっていうことを初めて知ったときに、ちゃんと歌をやろうと思った。兄はずっとエレクトロニカを続けて、海外からCD出したりしたんで食っていく方法としては間違ってはないとは思うけど、僕は日本でどうやって食べていくかっていうことしか考えていなかったので、くるりみたいな音楽を目指していこうと思い、音楽的にレベルが高く、且つわかりやすい音楽をつくるっていう気持ちで、また都内でライヴをやり始めました。
当時、文房具屋で働いてて、同じ建物にCD屋があってそこの店員と仲良くなって、バンドを組んで2年くらいやりました。くるりがきっかけで始めたっていうのと、ライヴを繰り返して、"ライヴにおいて"わかりやすいものがいいんじゃないかって考えになってったことで、シンプルなギター・ロックっていうものに収まってった。その頃の対バン相手のほとんどが、BUMP OF CHICKENとか、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとかから影響を受けてるバンドがすごい多くて。皆おんなじ。下北沢屋根裏ではTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの真似をしてるバンドがいたりしてて。そういう状況で、どうやったら自分たちは対バン相手たちと差をつけれるのかっていうことを考えるようになった。バンド活動を続けてると、"CD出してあげるよ"っていう悪いおじさんとかも出てくるんですよ(笑)。"コンピレーション出しましょう"って。俺らもCD出せるとなるとすごい嬉しいじゃん。自分でレコーディングやって1曲あげてくれたら、それを他のバンドと合体させてCD出すよって。それで、リリースするから"10万円払ってください"って言われて、"ああ、そういうもんなんだな"って払って。"これでラジオとか流れるから大丈夫ですよ"って言われるけどなにも起こらない。
で、2年間くらい活動して、このままじゃやばいぞって思っているときに、くるりがまた『NIKKI』っていうアルバムを出すんですよ。"このアルバムは60年代のロックを意識して作りました。洋楽では今こういうものがきていると思ってます。だから、これが新しいんです"って岸田さんが言ってて。僕はそれを真に受けたし、その時初めて観たARCTIC MONKEYSみたいな色々な要素が混ざった音楽も新しいっていうことに気付いた。バンドのメンバーに今俺はこういう音楽をやりたいっていうことを説得した。最初、ギタリストは賛成してくれたけど、リズム隊は速いのをやりたがらなかった(笑)。ミイラズになってからは、やみくもにライヴをやるのはやめて、とにかくARCTIC MONKEYSを完コピするところから始めて、何がかっこいいのかを紐解いてったんです。そこででき上がった音源に自信があったから、audioleafやmyspaceに音源をあげつつ、作った音楽をとにかくラジオに送った。その時、こういう音を真似するバンドがどんどん出てくるから、とにかく先に世に出なきゃっていう焦りもあった。ライヴをやる前から音源を作ってアルバムも作った。それで、1番最初にFM YOKOHAMAの人が俺らの音源を気に入ってくれて連絡をくれて、新人発掘のラジオに出た。その時点で、もう全然前のバンドとは違う動きをしてたし、ライヴも全然変わっていった。
そういうこともあって、関係者の間で話題になって、色んな事務所の人がバンドを観に来てくれた。前身バンドをやっていた時にYUEYっていうバンドとすごく仲良くなったんですけど、声がくるりそっくりで、それで"もうくるりの真似は出来ない"って思ったんですよね。それが前のバンドを辞めようって思った1つのきっかけでもあったの。んで、YUEYが、eggmanっていうライヴハウスのレーベルでCD出すことになって、俺らを紹介してくれたの。音源を持ってからはすぐに話が進んでって、繋がりだったり、前のバンドでやってたことが無駄じゃなかったんだなって思いました。でも、もっとライヴの動員を増やさなきゃっていう時に俺がやったのは、mixiのARCTIC MONKEYSコミュニティを使ってのバンドのプロモーション。それが26歳くらいの話だったから、30歳までに何もなかったらバンドも音楽も辞めようって思ってて。とにかく結果を出そうと必死だった。今もやっている"427(しにな)"っていうイベントを初めてeggmanでやる時に、お客さん300人集めて、関係者も呼んで、"俺たちは人気のあるバンドです"っていうの見せつけてメジャー契約へのステップアップにしようって決めてたの。そういうことをやった後に、eggmanからCDを出したんだけど、それもすごい売れたわけではなくて。でも、ツアーとかもやり始めて、そういう状況がステップ・アップしてって今に続いているっていう感じですね。まだ、そんなにYouTubeが当たり前じゃなかったから、YouTubeまでの道筋を俺らバンド側が作っていかなきゃいけない時代でもありました。その1つのツールが俺はmixiだった。頭をひねって、音楽を聴いてもらえる方法はないかと考えていましたね。
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