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INTERVIEW

Japanese

BLUE ENCOUNT

2025年02月号掲載

BLUE ENCOUNT

Member:田邊 駿一(Vo/Gt) 江口 雄也(Gt) 辻村 勇太(Ba) 高村 佳秀(Dr)

Interviewer:石角 友香

-全然違うジャンルを作るっていうことじゃなくて、今までのBLUE ENCOUNTの音楽性をもっと突き詰めて、精度を上げている感じがしました。そこで、皆さんにこのアルバムで手応えのある曲や流れを教えてほしいんですが。

田邊:僕から言うと「プロメテウス」ですね。「bird cage」でも新たな部分はやりましたけど、「プロメテウス」はブルエンの持ってるギター・ロック感というか。そもそもブルエンの上京時代初期はいろんなギター・ロックの先輩方がいて、ギター・ロック・ブームだったんですね。なので変拍子とか、ギターのリフに旨味があった時期を経て今があって、ちょっと久々にそういうやつをやりたいなって。「プロメテウス」は2018年に作ってた曲で、今回のアルバムの中で一番古いんです。もともとはTrack.11の「chang[e]」っていう曲がパッケージでリリースされるときに、久々にカップリングを入れようかとなってこの曲が選ばれたて。で、この「プロメテウス」をレコーディングするのと同時期に、ちょうどアルバムのRECも始まったんですね。なのでもともとアルバムに「プロメテウス」は入らない予定だったんですよ。あくまでカップリングという感覚で最初に僕が歌録りしてたんですけど......私的なことで言うとその2日前に親知らずを抜いたんです。血まみれでパンパン、痛みもすごいっていう最悪の状態で歌録りしたんですけど、集中力も相まって逆に良くて。ちょっと痛くてイライラしてる感じとかも溢れて出たっていう感じが大好きで、ワンテイク目だったと思うんですけど、歌録りが終わった時点で、"これアルバムに入れたいな"とレーベルのディレクターさんに言ったんです。

-そんなに歌録りが良かったと。

田邊:ブルエンの中ではカップリングをアルバムに入れるってあまりないことなんですけど、これはなんとか入れたいという僕のわがままを通してもらって。カップリングでも今はサブスクで聴ける時代ですけど、僕はこのアルバムに必要だなと思ったんですよね。血気盛んな血の気の通った楽曲が多い中で、ここの部分にこんな曲がほしかったし、ライヴ目線でも、これがあることでツアーがよりいっそう締まるんじゃないかなと考えた上で入れたので、「プロメテウス」はアルバムの曲順で聴くといいですよっていう感じです。

-同時にソウルっぽいものも感じるアレンジなんですよね。

辻村:あぁ、なるほど。

田邊:辻のフレーズと江口のフレーズがまさにそうしてくれてて、それも一人一人のフレーズが光ってるなっていうのがありますね。別にプリプロをやり込んだわけではないので、各々が刺しに来てるフレーズがたまたまなのかもしれないけど絡み合ってる。

辻村:僕、江口のリード・ギターのフレーズを聴く前は全然違うのを作ってて、聴いたからこそ出てきたフレーズなんですよ。ニューヨークにいて、その前はどうしてもフレーズが出てこなくて。で、スペイン人の方とセッションの時間があって、行って帰ってきたらできたっていうのもあったので、間が楽しめるようになってきたというか、そういうのも偶発的に出てきた曲でもありますね。

-1つのジャンルに従って出てくるグルーヴではなくて、偶然性が形になったのかもしれないですね。

辻村:たしかにね。この曲、ライヴでやるのは一番緊張するかもしれないです。

-辻村さんのお気に入りは?

辻村:僕はTrack.6、7、8、9の「囮囚」から「ALIVE」までのゾーンが特濃ジェットコースターだと思ってます。前半のTrack.1から3とかは流れがきれいなんですけど、ここが一番荒ぶってるというか。で、終わり方も静かになったり激しくなったりなので、ここら辺が一番聴いててワクワクするというか聴き応えがあるし、カロリー的にはこのアルバムで高いほうだと思いますね。

-「ALIVE」のアレンジの詰め方すごい好きです。

辻村:「囮囚」と「ALIVE」のアレンジは僕が作ってたんです。「ALIVE」はベース始まりのアレンジをしてたんですけど、今回その状態のまま高村Pにあげたので、わりとその余韻があるんじゃないかなと思ってますね。

-江口さんがメイキングの中で、アレンジの引き出しがたくさん必要だっていう話をしてましたね。

江口:そうですね。1ヶ月という短く凝縮した期間でアルバムの制作をしたので、普通だったら1曲作って、自分の中にもうちょっとインプットを入れた状態でアウトプットできるから、次の曲を作るまでに、また新しい引き出しが増えたり増やしたいって思ったりするものなんです。ただ今回その期間がなかったので、限られたものの中から捻り出して作ったイメージで。そこら辺が作ってて大変なところではありました。

-江口さんはアルバムの中で手応えのある曲、もしくは流れというと?

江口:僕は「DEAD」が、ギターで言うとめちゃくちゃシンプルというか、基本的にバッキングとリードが同じものをずっと弾いてるんですけど、僕はこんなシンプルなやつのほうが実は好きで。個人的に聴くときの好みとしてはこれぐらい一個にまとまってるものが好きなんです。でも、同じバッキングなんですけど、音作りとしてめちゃくちゃ中身にこだわっていて、単純に同じ音を弾いてるわけではなく5度上と1オクターブ上を絶妙な自分のバランス、ミックス感で被せたりしてて、そういうところが組み合わさってこの音色になってるんですよ。シンプルに聴こえるんですけど中身は実はこだわってるという意味で、「DEAD」は結構好きな音です。

-たしかに音に容積がある感じしますね。

江口:そうですね。普通に同じ音で重ねても意外とこうならないっていう。

-高村さんはいかがですか?

高村:メンバーが言ってない中で一番思い入れが深いのは「クインテット」なんですよ。こんなサウンドっていうのをデモで作ったはいいんですけど、どうやって再現しようかなって。特にドラムのサウンド感なんですけど、"これどうやって伝えたらいいんだろう"みたいな。で、一緒にやってくれたエンジニアさんが、このアルバム作りで改めてタッグを組んだ方だったんですね。その人に僕のデモとリファレンス音源を聴かせたら"こうだよね"って返ってきたのが、僕がやってほしかったことだったんですよ。"こんなデモとリファレンスだけでここまで汲み取ってくれるのか"っていう驚きがあって。読み取る能力が成長した先にはこんな姿があるんだって憧れというか、僕もそれぐらい察知能力を持ちたい、そういう気持ちが芽生えた曲でもありましたね。

-いい意味で肩の力が抜けてるっていうか、何気なく始まるこの曲にそんなエピソードがあったとは不思議です。

田邊:今まではSEを入れるとか1曲目然とした感じを僕等も好んでましたけど、今回は質実剛健なBLUE ENCOUNTというか武骨な感じも出しつつ、そのなかで「bird cage」や「プロメテウス」みたいに新たな側面も見せたかったってところがありますね。2018年にリリースした『VECTOR』ってアルバムは、真逆の引き出しを見せた感じでしたけど、今回はBLUE ENCOUNT印が付いてるものたちが集まってる感じだったので、ここにきてBLUE ENCOUNTというジャンルが見えてきたかなって。

-そして初回盤付属特典BDにはシングル楽曲のMVとメイキング映像が収録されています。特に記憶に残っているMVを挙げてもらっていいですか?

辻村:内容的には「Bloody Liar」がすごく好きで。ストーリー性もありますし、この間公開されてコメントを見たら"泣ける"っていう内容も結構あったんです。英詞だし激しい曲なんだけど泣けるってすごくいいなと考えてて。あとは女優さんの演技や映像だけでメッセージ性が強いっていうのは、芸術性があって好きで、それがいろんな人のいろんな感情に刺さるのもいいなと思いましたね。

-対照的に素のメンバーが見られる「アマリリス」のMVも印象的です。

田邊:そうですね。これはいいMVだなと思いました。ドキュメンタリーなドラマ仕立てという感じもありつつで。メンバーの再会もありましたし、アメリカのライヴの前後っていうのもあったので、本当にいろんな意味の高揚感、あとは絶妙な疲労感とかも含めてメンバーの一挙手一投足がリアルなMVだったので。でもこういう温かさのMVってあんまなかったんですよね。最後のほうにある4人でセッションしてる感じのシーンも結構好きで。あれってニューヨークのはずれだったっけ?

辻村:ブルックリン。

田邊:ブルックリンのちっちゃいスタジオを貸し切ってやったんですけど、そこの雰囲気がすごく良くて。アメリカでレコーディングするならここじゃない? みたいな展望まで浮かんだのもあったので、そういう意味でもこれを観るたびにあのときの感情を思い出します。だからこそバンドのこれからみたいなのも描写できてるのかなっていうのもありますね。

-辻村さんが3人に花を渡してるシーンは照れただろうなとか(笑)。

辻村:ははは(笑)。だって本当に再会も久々だったし、ニューヨークに来てもらえるっていうのも嬉しくてテンションが不思議でした。で、僕撮影日が誕生日だったのでそれもすごく運命的というか、あの日は気持ち良くめちゃくちゃ酔いましたね(笑)。

-バンドが背負ってるものとかいろいろあるかもしれないけど、それを楽曲が超えてきたっていう感じがするアルバムだなぁとつくづく思います。

田邊:それを受け取ってもらえたら一番いいよね? もう余計なことを考えずに今のマインドが楽曲になって、受け取ってもらえるのが一番バンド冥利に尽きるので、それをちゃんと表現できるツアーをやりたいなという感じですね。