Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

FEATURE

Japanese

KEYTALK

2014年12月号掲載

KEYTALK

Writer 石角 友香

頭の2、3曲で"楽器やりたい!""なんならバンドやりたい!"、すでにバンドをやってる人なら"ここはこう弾いてたのか!"と目が釘付けになるライヴ映像である。加えて視聴環境が大きなモニターで見ればライヴの臨場感が蘇るだろうし、PCにヘッドホンをつないで凝視すれば、4つの楽器とふたりの声の分離の良さにライヴ盤としてのクオリティの高さを実感することもできる。

KEYTALK、メジャーでの初の映像作品はフル・アルバム『OVERTONE』リリース後の全国ツアーの14本目にあたる赤坂BLITZ公演を、ステージに飛び出す直前から、アンコールを演奏し終えてステージを去るまでのすべての演奏をパッケージしたライヴ映像だ。ユルすぎる爆笑MCは若干省略されているものの、それはいい緊張感に満ちた演奏を中心的に見せるにはいい判断だったんじゃないだろうか。メジャーからの初フル・アルバムを手にツアーを廻ってきた充実感と気合いは、オープニングの「パラレル」「コースター」というシングル連続投下でまず表出。音だけで聴いているときとも、ライヴ会場にいるときとも違う、改めて3分台の曲によくもまぁこれだけジェットコースター級の展開と歌詞の言葉数を詰め込むよな!と、半ば呆れ返ってしまう。小野武正(Gt)の、踊り、小走り、顔でも演奏しながらの細かいフレージングはシュールですらあるし、全身で叩くパワー・ヒッター八木優樹(Dr)はドラマーなのに座っている気がしない。「UNITY」「BEAM」「fiction escape」と、歌詞がぎっちり詰まったナンバーが続き、セットリストの中盤までにヴォーカルの1番キツいところを担っているのは首藤義勝(Ba/Vo)だろう。そして比較的、冷静な表情の寺中友将(Gt/Vo)が、非常にセンスあふれるコードを弾いていることもじっくり確認できる。

曲作りを演奏できるできないではなく、自分でも驚き、メンバーも驚かせるために、人間の快楽中枢を直撃するデモを作り、ある種アスリートが目標タイムや高さを更新していくように、その驚きを人力で再構築していくKEYTALKの手法は、だからこそあらゆる世代の音楽好きのまだ気付いていなかったツボを強力に押すのだ。知性と肉体のバランスが高次元で融合した......と書くと妙な感じだが、このライヴ映像を見ているとつくづく4人ともドMだと思う。付け加えるなら、その凄まじい展開に喰らいつき、ときにはバンド以上の熱量を放つファンもドMだと思う。

中盤の「メロディ」や「Siesta」などのミディアム・チューンでは、カメラのフォーカスが曲のイメージと相乗効果を生んでいたり、カメラ・クルー、編集クルーもKEYTALKの魅力を全方位で表現。単にカメラの台数が多いだけじゃなく、決定的瞬間を掴みとる熱意とプロの技に感服する。映像に映るメンバーやファン同様、スタッフもKEYTALKの音楽を全身で体感しているのだと思う。

選曲も『OVERTONE』を軸に据えつつ、インディーズ時代からの人気曲「MABOROSHI SUMMER」や、カオティックに展開する「夕映えの街、今」も演奏されたのは、このツアーに行けなかったファンにとっても重要な見どころだろう。ちなみにアンコールでクラウドに背面ダイヴを決めつつ、しっかり歌い続けた寺中がどういうことになっていたのか?も確認できる。4人全員がフロントマンみたいなこのバンドの特徴を余すことなく伝えるめちゃくちゃ濃い作品であることは間違いない。しかも打ち上げスペシャルと題して3年ぶりに行われたフロア・ライヴからも曲目かぶりなしで5曲を収録。ホール・ライヴとはまた違うベクトルでKEYTALKの魅力を味わえる......というか、こんな状況でも最強の遊び場を作ってしまう彼らとファンに脱帽だ。音楽で未知の楽しさを発明し続けるKEYTALKというバンドがいかに唯一無二か? できればファン以外の人にも見てほしいライヴ映像である。

 

▼リリース情報
KEYTALK
『OVERTONE TOUR 2014 at AKASAKA BLITZ』
[Getting Better]
2014.12.17 ON SALE


【初回限定盤】VIZL-762 ¥4,500(税別)
ブックケース仕様&フォトブック付属
amazon | TOWER RECORDS | HMV


【通常盤】VIBL-735 ¥3,800(税別)
amazon | TOWER RECORDS | HMV


【収録曲】
1. パラレル
2. コースター
3. はじまりの扉
4. お祭りセンセーション
5. UNITY
6. BEAM
7. fiction escape
8. MURASAKI
9. シンドローム
10. YGB
11. サイクル
12. メロディ
13. Siesta
14. 雨のち。夏、
15. バミューダアンドロメダ
16. トラベリング
17. sympathy
18. 太陽系リフレイン
19. プルオーバー
20. blue moon light
21. MABOROSHI SUMMER
22. 夕映えの街、今


■特典映像
OVERTONE TOUR 2014 -下北沢打ち上げスペシャルワンマンライブ-

【収録曲】
1. zero
2. アーカンザス
3. アゲイン
4. A型
5. color

※初回限定盤・通常盤共通の特典映像になります。

  • 1