
Japanese
androp

2010.08.08 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 道明 利友
a・n・d・r・o・p―。美しい音の粒とともに、バンド名のアルファベットがループする。開演を告げるSEから独特なムードをかもし出していたandropは、プロフィールはメディアに一切公開していない謎めいた存在にも関わらず、代官山UNITでの初ワンマンをソールドアウトさせるなどシーンから熱い視線を注がれている注目のバンドだ。
昨年は大阪会場のみの出演だったため、今回の東京会場のオーディエンスの多くは、彼らとはおそらく初対面だったに違いない。その緊張感を切り裂くように、「Tonbi」のサウンドが響き渡った。性急なリズムに乗って言葉を矢継ぎ早に連ねたかと思えば、繊細なファルセット・ボイスを響かせる。さらに、轟音ギターを激しく奏でたかと思えば、やわらかなメロディーがその上をベールのように包む。1曲の中で表情がめまぐるしく変化する彼らの楽曲は、まさにこの日の2曲目「Colorful」のタイトルどおり。ポストロックやポストパンクを思わせる刺激的なサウンド・エッセンスを多彩にミックスした“色とりどり”の音色と、聴き手の心へ真っ直ぐ届く歌声のアンサンブルが、この日のステージでも鮮烈な印象を放っていた。
叩きつけるようなドラムをリズムが疾走した「Halo」、そして、その激しさをさらに激しい音の連打で増幅させたのは「Glider」。攻撃的なサウンドを突き刺したかと思えば、次の瞬間には厳かに、また次の瞬間にはエモーショナルにメロディを歌い上げ……。音楽的なスタイルはオルタナティブ度がかなり高く、それでいてどの曲も、J-POPのフィールドでも十分映えそうな“歌ごころ”をたしかに持っている。いつも、いつも、いつも繋いでる手と希望―。雄々しく響き渡ったラストナンバー「Te To Te」のメロディは、この日の彼らのライヴの雰囲気をそのまま物語るよう。演者とオーディエンスが音楽を通じて手を握り合っていたかのように思える、とても暖かい空間だった。
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