Japanese
androp
Skream! マガジン 2015年11月号掲載
2015.09.20 @Zepp Tokyo
Writer 山口 智男
終始、圧倒されっぱなしだった! ひょっとしたら、これまで観てきたandropのライヴの中で1番良かったかもしれない。8月5日にリリースした4作目のフル・アルバム『androp』を引っ提げ、札幌から福岡まで全国を回る[one-man live tour "androp"]。そのスタートとなるZepp Tokyo 2デイズ。その2日目。ステージの4人は満員の観客に、さらなる成長をまざまざと見せつけた。そう、筆者はうっかりしていたが、この2デイズがツアーのスタートだったのだ。それにもかかわらず、こんなに熱いライヴを繰り広げてしまうなんて、ツアーはしょっぱなからクライマックスを迎えてしまったみたいだ。
36都市39公演を回った全国ライヴハウス・ツアーが抜き身のバンド・サウンドに結実した『androp』を引っ提げてのツアーだから、もちろん、さらに逞しくなった姿を見せてもらえるに違いないとは予想していたけれど、どちらかと言えば、繊細なイメージがあった彼らがここまでエネルギッシュで、パワフルなパフォーマンスを見せてくれるとはちょっと予想していなかった。
『androp』の収録曲を中心に新旧のレパートリーをアンコール含め全23曲、2時間にわたって披露。印象的だったのは、これまでテレキャスターをメインに使っていた佐藤拓也(Gt/Key)がこのツアーから導入したギブソンのSGを、オープニングから使っていたことだった。たぶん、グランジーなリフを奏でる「Corna」のようないわゆるリフものの曲を、より効果的にプレイするために使い始めたと思うのだが、この日もその「Corna」以外でもSGは全編にわたって大活躍していた。SGと言えば、AC/DCのAngus Youngを始め、ハード・ロックというイメージが強いが、例えば「From here」ではチョーキングしながらギターを唸らせ、激しいソロを披露。今までこんなにハードなギターを弾いていたかしらとびっくりさせられた。因みに終演後、SGの導入について、佐藤に尋ねると、『androp』のレコーディングで使った流れで今回のツアーでもプレイすることになったという。"テレキャスターと違うタイプのギターだからかなりドキドキだった"そうだが、内澤崇仁(Vo/Gt)が"かなり男らしいギター・プレイになっていたと思う"とつけ加えたように逞しさをアピールするという意味で、
SGを唸らせた佐藤のギター・プレイがこの日、担っていた役割はかなり大きかったと思う。もっとも、演奏が激しいから逞しいという単純な話ではない。実際、この日、逞しさという意味で、個人的に最も変化を感じたのは、これまで以上にエモーショナルに演奏したバラードの「Shout」や内澤が力強いファルセットの歌声を響かせた「Tonbi」だった。
序盤から終盤まで、MCを挟む以外はほとんど曲間を空けずに曲を畳み掛けるように演奏したところからもメンバーたちがこの日、どんなライヴをやりたいのかが窺えたが、バンドの演奏が変われば、当然、観客の反応も変わる。手拍子やシンガロングはこれまでもandropのライヴではおなじみだったが、この日はそれに加え、バンドの熱演に応えるように客席から何度も歓声が飛び、観客がいつにも増して興奮していることが感じられた。
そんな客席をさらに煽るように内澤も"行くぞ!""もっともっと盛り上がっていこうか!"と盛んに声をかけた。終盤、"一緒に歌おうか。もっと行ける? 後ろも!"とシンガロングを求めた「One」から畳み掛けるように"歌え!"と呼びかけた「Voice」で客席から大合唱が沸き起こると、内澤が満面の笑みを浮かべ、言った言葉が"(お客さんみんな)最高!かっこいい!!"だった。もう1曲残っているにもかかわらず、"最後の曲!"と言ってしまったのは、それだけ興奮していた、あるいは気合いが入っていたからだろう。メンバーから指摘され、"いや、常に最後の曲のつもりで歌っている(笑)"と内澤は語ったが、そんなハプニングからもこの日のandropがいつも以上に勢いに溢れていたことがわかってもらえるはず。
もちろん、これがピークじゃない。"1番良かったかもしれない"という筆者の言葉に"それを更新していきたい"という頼もしい答えが内澤から返ってきた。実際、「Letter」でマイク片手に歌ったパフォーマンスは今後、さらに彼らのライヴに躍動感を加えることだろう。andropは現在進行形で進化を遂げている真っ最中だ。
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