Japanese
androp
2011年09月号掲載
Writer 山田 美央
プロフィールがほとんど明かされていない。しかしどこまでも真っ直ぐに世界と向き合う表現者――それがandropだ。彼らの楽曲は短編映画のよう。曲ごとに練り込まれた音と、切々と展開される様々な時間。1曲1曲に、痛くなるほどに切実な思いが滲み出ている。そして、通算4枚目にして、androp初のフル・アルバム『relight』は、彼らの持つ誠実さがより一層推し進められた。
前作『door』から、わずか半年という短期間でのリリースとなった本作。1 stアルバム『anew』(2009)から2 ndアルバム『note』(2010)がリリースされる間も、わずか4ヶ月ではあった。しかし、今回andropが向き合ったのは、内外からより多くを求められるフル・アルバムだ。
これまでにも「Colorful」などで見せてきた多重的な楽曲構成。楽曲の長さを越え、物語性をはらんだ豊かなメロディ。難解な外見と、柔らかな真実。なんとも複雑な性格を持った音楽だが、キャッチーさをも持ち合わせたサウンドは、圧倒的な勢いでリスナーを飲み込んでしまった。
“人々の心に、希望の光を灯す”――そんな願いから本作は名付けられた。『relight』を流した瞬間、彼らの“光”よりも深淵のような奥深い部分を覗きこんだような気がした。それだけ、心の奥底に響く“何か”を感じたからだ。それは、光を翳してみても、奥まで届かない深い深い水の底のようだった。しかし正直、最初はこの“何か”の正体を掴み取ることができず、“光”も漠然としたものだった。
非常にナイーブなTrack.1「Strobo」で始まり、すでに公開されストロボを焚いたPVが話題を呼んだ「Bright Siren」へと繋がっていく。言葉遊びのような冒頭に感情が滲み、やがては溢れ出す。そして表題曲「Relight」で幻想と日常の間を縫って、聴く者を新たなステップに連れ出してくれる。内澤崇仁(Vo&Gt)の少年のような危うさをもつ、蒼いヴォーカルが、一層の余情と空想を掻き立てる。
そんな楽曲に繰り返し触れるうち、ぼんやりとしたものが輪郭を持って現れるようになる。すごく繊細で、脆くて、何故だか涙が零れてしまうような現実を、どんな出来事でも受け入れていく。力強さとはまた違った、温もりが感じられるのだ。それこそが、彼らの描く“光”なのではないだろか。光は物理的に物事を照らし出すだけではない。日々迷った時、そっと傍で温めて、行く先を照らし出してくれる。それは誰かの存在かもしれないし、未来の自分、はたまた過去の自分かもしれない。
“明日が来れば” “倒れても歩くように”
目を伏せてしまいたくなるような思いに直面したとき、自発的に歩き出す力を与えてくれる。共に一歩を踏み出してくれる。andropの紡ぎだす音は、光として、今を作り出す創造力へと飛躍するのだ。世界が抱くやりきれない気持ちや、投げやりになってしまいそうな幻影に向き合う原動力となるはずだ。「Relight」が鳴りやむ時こそ、最初に発せられた、この言葉の意味を理解する。すべてを意味しているのだ。
“ほらもうはじまる”
どんなに深く閉ざされていようとも、明けない夜はない。今こそ扉を開け放ち、動き出す時がやってきたのだ。
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