Japanese
androp
Skream! マガジン 2013年05月号掲載
2013.03.30 @東京国際フォーラム ホールA
Writer 山口 智男
思わず息を呑むほど素晴らしいオープニングだった。
ステージの前に下ろされた紗幕とステージ後方のスクリーンの両方を使い、宇宙空間を旅しているようなダイナミックかつ奥行きある映像を映し出した「0」「Rising Star」。『one and zero』をリリースした時のインタビューで語っていた“ホールでしかできない演出”とは、これだったわけだ(もちろん、これはそんな演出の1つにすぎないわけだけれど)。バンドがいきなり作り出した壮大な世界に、たちまち圧倒された。
昨年12月5日にリリースした2ndフル・アルバム『one and zero』をひっさげ、東名阪を回ったandrop初のホール・ツアーの最終公演。あっという間にソールド・アウトになった、超満員の東京国際フォーラム。
“こんばんは。andropです”と挨拶した内澤崇仁(Vo/Gt)が“後ろまでちゃんと見えてます”と最後列までびっしりと埋まった客席をうれしそうに眺めながら“めっちゃめちゃ気合入ってます!”とこの日のライヴにかける熱い想いを語ると、佐藤拓也(Gt/Key)は、ここ東京国際フォーラム・ホールAがアジア最大のコンサート・ホールだというウィキペディアで調べてきたトリビアとともにアマチュア時代、下北沢のリハーサル・スタジオでひたすら練習を重ねていた頃“ホール・ツアーができるようなバンドになりたい”とメンバー同士で話し合っていたという思い出話を披露。“夢が実現できてうれしい。願いは叶う”と語った。
メンバーのバックグラウンドやバンドの経歴についてはほとんど語られていないandropだけにアマチュア時代の彼らを偲ばせるそんなエピソードは、きっとファンを喜ばせたにちがいない。
『one and zero』の収録曲を軸に過去の代表曲を散りばめたセットリスト。映像や照明を使いながら幻想的な空間を演出した曲がある一方で、それとは逆に眩い光の中、ひたむきに演奏に打ち込むバンドの姿を生々しさとともに浮かび上がらせた曲もあり、そのダイナミックな対比はこの日の見どころの1つだったと思う。
曲が持つナイーヴなイメージとは裏腹にandropが実は確かなテクニックに裏打ちされたプレイヤーたちの集まりであることはこれまで何度も書いてきたので、ここでは繰り返さないが、“ホールでやったら気持ちいいというイメージで作った”という「Clover」、テンポを落として歌い上げる「Rainbows」、R&B調の「Radio」、ダブステップっぽい「Human Factor」などで、内澤と佐藤が演奏したアコースティック・ギターがこれまで以上にバンド・アンサンブルにおけるアクセントになっていたことは新たな発見だった。
“みんなまだ騒ぎたいですか?元気ありますか?!後半戦はもっと声を出して1つになりましょう!”と内澤が呼びかけ始まった後半戦はファンキーな「Colorful」、ロックンロール・サウンドが新鮮なパワー・ポップ・ナンバーの「Party」と「Message」、そしてダメ押しにダンサブルかつアンセミックな「World.Words.Lights.」と一気にたたみかけると、輝きながら回転するミラー・ボールの下でホール全体が大きく揺れた。
そして、本編ラストの「End roll」。音楽人生最後の曲になってもかまわないという壮絶な想いで作ったバラード・ナンバーだ。“ファンや、メンバー、スタッフのお陰でまた音楽を作り続けたいと思えるようになった”と曲に込めた想いを訥々と語った内澤は“ファンがいる限り音楽を作り続けることを約束します”と続け、ピアノを弾きながら静かに歌い始めた。
そのやさしい歌声と、そんな内澤の想いをしっかりと受け止めながら自分の気持ちを一音一音に込めたバンドの演奏にじっと聴き入る満員の観客。その瞬間こそ間違いなくこの日1番のハイライトだったはずだ。
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