Japanese
androp
Skream! マガジン 2017年12月号掲載
2017.10.28 @日比谷野外大音楽堂
Writer 山口 智男
10月も下旬だから、当然、寒さに関しては、それなりに覚悟はしていたが、まさか雨が降るとは! この日、台風が関東地方に接近。昼ごろから降り始めた雨は次第に勢いを増していき、ライヴが始まるころには、すっかり本降りになっていた。"(野外ライヴって)こんな感じですか!?"と内澤崇仁(Vo/Gt)も序盤、レインコートを着たファンが埋めた客席を前にして思わず苦笑いしていたが、逆境にあって気合が入ったようだ。"雨が降るなか、みんなが来てくれただけで泣きそうになった。雨が降って良かったと思える日にしましょう!"と誓い、androp初の野外ワンマン・ライヴに臨んだ。
ライヴは未発表のインスト・ナンバーでスタート。そこからバンドはたっぷり2時間かけて、彼らがこれまでどんなことに挑戦してきたかを今一度見せながら、さらに新しいことにも挑んでみせたのだった。
淡い単色のライトが照らすなか、淡々と曲を重ねていった序盤の流れは、カラフルな照明が輝いた「Ryusei」、そこから畳み掛けるように繋げた、ある意味ショッキングとも言えるインパクトを持った「Kaonashi」で一変。内澤が弓弾きするギターが低い唸り声を上げ、演奏の熱が一気に高まる――と同時に、ステージを屋根のように覆っている建物全体とその両脇の森に映像が映し出され、会場全体が客席を飲み込んでしまいそうなその迫力に度肝を抜かれた。
そこから儚げなピアノ・ナンバーの「Ghost」までの7曲は、前述した映像やレーザービームも含む様々な照明を駆使しながら、今まで見たことのない光景を作り出してみせた。雨脚はいっそう激しくなっていたが、レーザービームにキラキラと反射する雨粒の幻想的な美しさは格別だった(ぜひ、来年1月10日にリリースされる、この日のライヴを収めたDVD/Blu-rayでその光景を追体験してほしい)。いつものように手を振ることも忘れ、息を呑みながらステージを凝視する観客を、煽ることもせず、1音1音に熱と想いを込めて演奏するステージ上の4人の姿を見ながら、"そもそもデビューしてから何年間のandropは、こういう光と影と音が織りなすアート志向のライヴを追求していたんじゃなかったか"と思い起こしていた。内澤が、美しい、そして以前よりも確実に力強さを増したファルセットを響かせた「Tonbi」で映し出した、空を飛ぶ鳥が見ている景色は、以前にも見たことがあるものだったが、ステージを含む建物全体に映し出すことによって、まるでVRの世界にいるんじゃないかと、一瞬錯覚するくらいの臨場感が生まれていた。
そして、客席に作ったセンター・ステージで内澤がアコースティック・ギターで弾き語りした配信限定シングル「Tokei」を挟んでからの終盤は、そもそもアート志向だった彼らが客席とひとつになるという挑戦を続けるなかで作ってきた「Yeah! Yeah! Yeah!」を始めとするアンセムの数々を、"歌え!"と客席に声を掛けながら次々に披露し、大いに盛り上げた。本降りの雨の中、そこにいる全員が、バンドの熱演に応えるように掲げた手を懸命に振りながら、声を上げ、飛び跳ねる光景は、彼らの挑戦が大きな成果となったことを改めて印象づけた。
アンコールではCreepy NutsのR-指定をゲストに迎えた「SOS! feat. Creepy Nuts」(※DJ松永は風邪で欠席)、来年公開の映画"伊藤くん A to E"の主題歌として書き下ろした新曲「Joker」も披露。最後に内澤が語った"みんなに寄り添える音楽を作りながら、新しいことにもどんどん挑戦していきたい"という言葉どおり、来年1月10日にシングルとしてリリースするこの曲は、まさにキャッチーなシンセのフレーズとダンサブルなサウンドが、バンドの新たな挑戦を物語っていたのだった。
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