Japanese
androp
2013.12.04 @Zepp Tokyo
Writer 山口 智男
音源のリリース、ライヴおよびツアーを精力的に重ねながら、andropが一歩一歩、進めてきた歩みは、今年3月30日の東京国際フォーラム・ホールA公演の成功を経て、来年3月23日の国立代々木競技場・第一体育館公演というバンドのキャリアにおいてエポック・メイキングと言えるイベントに実ろうとしている。
もちろん、この日、メンバーが言ったようにアリーナ単独公演も通過点の1つにすぎない。しかし、どれだけのバンドがそんな大舞台に立てる? もちろん、メンバー自身はこれまでさまざまな壁に直面し、乗り越えてきたにはちがいない。その都度その都度、真剣に向きあい、取り組んでいかなければいけない大小さまざまな課題もあるだろう。とは言え、現在の彼らはまさに順風満帆。大きな夢に向かって、着実にキャリアを進めている――と、そんなふうに思っていた。
ところが、この日のパフォーマンスが伝えてきたのは、バンドがそういう状況に決して満足しているわけではない、という大きな成功を掴もうとしているバンドにはちょっと不釣合いとも言える気概だった。
one-man live tour"angstrom 0.6 pm" と題したライヴハウス・ツアーの折り返しとなる東京公演。
"東京、飛び跳ねる準備はできてるか?!"という内澤崇仁(Vo/Gt)の掛け声でスタートした演奏は――現在、バンドはまだツアー中なので具体的な曲名を挙げることは控えさせてもらうが、序盤からアップテンポの曲をたたみかけ、一気に加速! なるほど、ここで観客の気持ちを鷲掴みにしたあと、中盤からじっくり聴かせていくのかと思いきや、一旦、MCを挟み、ベースをバキバキと鳴らした前田恭介のインプロを合図に「Amanojaku」以降の中盤もアップテンポの曲をたたみかけ、序盤以上の勢いとパンキッシュとも言えるアグレッシヴさで満員の客席を圧倒した。
こんなandrop見たことがない! 心の中で快哉を叫びながら思わず体が前のめりになる。
この日、じっくりと聴かせたのは本編では「Missing」と「Melody Line」――11月27日にリリースしたばかりのシングルの2曲だけだったんじゃないか。内澤は前者ではアコースティック・ギター、後者ではピアノを弾きながら歌ったのだが、「Missing」では曲が持つ魅力を、生々しさとともに際立たせていたCDのヴァージョンよりも繊細な演奏(特に伊藤彬彦のドラムと佐藤拓也のギター)が印象的だった。
その直後、"andropのイメージを(いい意味で)ぶっ壊すことが今回のツアーの目標だった"と佐藤が明かす。なるほど、いつもよりもアグレッシヴに攻めた今回のライヴにはそういう意図があったわけか。観客との距離が近いライヴハウス・ツアーだからアップテンポの曲を多めに演奏しましたなんて単純な演出ではなかったわけだ。そう言えば、「Missing」のインタビューでも安易に流れに乗ることを潔しとしないという意味のことを言っていたっけ。バンドのキャリアは順調にはちがいない。しかし、そこで満足していちゃバンドは成長することも前進することもできない。
"イメージをぶっ壊す"という言葉からは、バンドが成長、前進するためならこれまで作ってきた流れをリセットしてもいい――それぐらいの気概と言うか、あくまでも前向きな危機感を彼らが常に持っていることが読み取れた。
順調なキャリア・アップにうっかりしていたが、考えてみれば、結成5年の"若い"バンド。まだまだハングリーだっていい。彼らはきっと今目に見えているよりももっと、もっと先を目指しているにちがいない。
"みんながもっとエネルギーをくれれば、そのエネルギーを倍返し、いや、十倍返しするから(笑)"
"もっともっと盛り上がっていこうぜ! パーティーしようぜ!"
佐藤と内澤が観客に発破をかけた終盤。バンドとファンの想いは、"みんなと一緒に歌いたい曲があります。最高の声をください。一緒に歌ってください"と問いかける内澤の声に呼応するかのように、「Voice」の大合唱で1つになったのだった。
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