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INTERVIEW

Japanese

ぜんぶ君のせいだ。

2020年11月号掲載

ぜんぶ君のせいだ。

Member:如月愛海 征之丞十五時 甘福氐 喑 もとちか襲 雫ふふ

Interviewer:吉羽 さおり

今、ぜん君。は不恰好じゃないですか(笑)でも、不恰好ながらもこうして歌っているのって、不器用なぜん君。らしい


-マイクの前で感情を出せと言われても、初めてだとかなり感情のアクセルを踏み込まないと出てこないと思いますが、どう追い込んでいったんですか?

もとちか襲:こうしてぜんぶ君のせいだ。に入ったことで環境が変わったじゃないですか。それまで何か突き詰めたことや、努力したこと、やりきろうと思ったことって一度もないんです。でも、ゆっくりと考える時間があるわけではないので、今自分が置かれている状況を考えて、アクセルを踏み込んだっていう感じでしたね。何かぶち破らなきゃって思って。

-その感情を突破するのが、最初の難しさですね。

如月愛海:そうだと思いますね。襲もふふも最初、どうしても俯瞰で歌う癖があって。目の前に私たちもいるのに、一緒に歌っている感覚というよりは、遠くから届けようみたいな感じがあったんです。だから、襲はもっと前のめりでやってみようよと。

もとちか襲:はい、前のめりキャンペーンをしました。

如月愛海:ふふはね、まず鼻が詰まってて(笑)。

雫ふふ:いつもなんです(笑)。

如月愛海:歌うときにちょっと音が鼻に抜ける癖が出ちゃうんですよね。それを、使いどころを決めて使えるぶんにはいいんですけど、頭の音で鼻に抜けちゃうと、聞こえないことも多いので、"最初からガンッと出してみ?"って。でも、ふふも同じように前のめりキャンペーンだったかな。

雫ふふ:そうでした。ずっと前のめりで練習してました。

如月愛海:私たちはライヴが多いので、目の前の人にまず感情を伝えないと、次の段階にはいけないはずだから、前に前にっていうのを最初にやっていった感じでしたね。

-甘福氐 喑さんは、ぜん君。像を持っているだろうから、気合が入りそうですね。

甘福氐 喑:はい(笑)。ただもともと歌への苦手意識が強いので、感情は出やすいタイプなんですけど、初めてのレコーディングで緊張が勝ってしまって。自分の良さを出し切れないなっていう気持ちがありました。あとはこの「インソムニア」では、すごく強いパートを歌わせてもらっているんです。""ねぇ、生きて居ようね...""の部分を、私が担当しているんですけど、そういうのって強い気持ちと同時に優しい気持ちもないとなって。曲を貰ったときに、自分なりに考えてここはこういう気持ちで歌おうと決めてたのが、デモの時点では出し切れなくて、それが悔しかったんですよね。

-ここからライヴを重ねていって、目の前に患いさんがいて、そこで伝える経験をすることでどんどん変わっていきそうな気がしますね。この音源では、それぞれ今の熱い気持ちがすごく詰まっているし、ここからまた変化がありそうな1枚だなというのは思います。

如月愛海:そうですね。すごく大きな曲です。「インソムニア」はふふが言っていたように、不眠症だけど、意味的には、悲しいとか苦しいとかのほうではないと考えていて。「インソムニア」が求めているものの答えはひとつ、夢だけだと思うんです。夢を見ていきたいからこそ、眠ってないというか。現実の夢を見るためだけに起きていて。それを叶えるために一生懸命頑張っている人なのかなって思っているんです。あとは、ぜん君。の今までのことを歌っているし、これから先の希望も見える曲だなと思っていて。それを、新たに加入した3人が表現するっていうのは難しいことだと思うんですけど、結局3人共、夢を見てここに入ってきてくれているので、それは出せているのかなと。

-はい、今ここにちゃんといますよっていう宣言になっていると思います。2曲目の「ちぬちぬせれなーで」のほうはどうですか?

征之丞十五時:本当にかわいい曲!

如月愛海:青春パンクみたいな曲ですよね。

-曲調的に、以前だったら個性のデコボコ感がいい具合に出るタイプの曲ですが、そういう聴かせ方ではないポップ感がありますね。

征之丞十五時:うん、たしかにこれまでだとわちゃわちゃしちゃいそうですよね。

如月愛海:この曲は、甘福氐の声が好きで。

甘福氐 喑:ありがとう。

如月愛海:甘福氐って結構パキッとした声の出し方をするんですけど、2番の"この胸焦がれて"って歌う、その"こ"っていうのがかわいい要素が入ってるのに、パンっと出るから、強く響いて聞こえるんですよね。それがこの曲にめちゃくちゃ合うなって思って。かわいい曲だけど、意志はめちゃくちゃ強い曲だから、甘福氐の声が合う曲だなって思って聴いてました。

-3人それぞれ声のタイプははっきりと違う感じですか?

如月愛海:違いますね。襲は「インソムニア」のほうが合ってる感じかな。

もとちか襲:歌いやすいというのはあります。逆に「ちぬちぬせれなーで」のような明るい曲だと、さっきも言ったように感情が乗せにくいので、難しいですね。

-襲さんはこうして話していると、結構キーの低い感じがありますよね。

如月愛海:襲は、落ち着いて聴こえることが多いですね。でも、「ちぬちぬせれなーで」の"横には ちにかみの笑顔"って歌う部分は、かわいい襲がだいぶ出てきました。そもそも襲は性格的にはすごい子供でかわいいんですよ。天然だし。だから、本当はそのまま出せばいいのに、いつも斜に構えるんですよね。

もとちか襲:格好つけようとしちゃうんですよね。

如月愛海:子供な部分がこれからどんどん出てくると思うんですけど、その先駆けが「ちぬちぬせれなーで」で垣間見えます。

征之丞十五時:この曲は、ふふが歌い出しだよね。

雫ふふ:そうなんです。ふふは、最初この歌もヘヴィな感じがあって。ぜん君。の曲って、歌詞だけ見たらちょっと強い言葉があるから、怖い感じがあるというか。

-生き死にのストーリーが描かれますからね。

雫ふふ:この曲も最初ちょっと怖いなって思っちゃったんですけど、ポップな音になってるから、聴いたらぜん君。らしいなって感じた曲でした。1番の"宝物みたい、光ってる今よ"っていうところを十五時が歌うんですけど、その十五時の歌い方が好きで、優しくなれるんです。ふわふわとした感じが出ていて。

征之丞十五時:ふふふ(笑)。

如月愛海:「インソムニア」も「ちぬちぬせれなーで」もどちらも言いたいことは似通っていて。悩んだり、苦しんだり、悲しんだりしている気持ちをずっと持っていても仕方がないし、それを捨てて前を向けるなら、前を向こうよっていう曲だから。ただ弱い部分も見え隠れしている曲なので、そのひねくれ加減がやっぱりぜん君。っぽいなって思いますけどね。

征之丞十五時:再出発にすごく相応しい曲だなって思います。いい意味で、ぜん君。の我の強さが出てるなと。やっていくぞっていう感じが出てる。

-背負いながらも行くんだよっていうのは感じます。

征之丞十五時:「ちぬちぬせれなーで」はDメロの、"病めるとき健やかなる時も"っていう部分が特にいいんですよね。ここはまず、襲とめーちゃんで歌って、ふふが"ここは君が居るべき場所で"でと歌って、喑が"此処はぼくが居るべき場所だ"って歌って、みんなで""患う""と歌うんです。ぜん君。として、患いさんの手も引っ張って5人で再出発していくぞっていう気持ちが、ここにドンって詰まってるなと思っていて。

如月愛海:脱退や、新加入といろんなことがあって、それも急な発表になってしまったことがあったので、正直それで傷ついている人や、信じられないわっていう人もいっぱいいると思うんです。それはうちらも申し訳ないなと思うんですけど、私たちも同じような傷つき方をしているし、苦しんでいて。それをひとりじゃなくみんなで味わったからこそ、一緒に傷の舐め合いを──と言ったら言葉は悪いですけど、お互いを尊重し合って、"その気持ちわかるよ"とか、"この先もまだあるし、頑張ろうよ"って言えたらいいなと考えているんです。この2曲でそういう思いが伝えれたらなってすごく思います。

-しかも、"ここは君が居るべき場所で 此処はぼくが居るべき場所だ"という大事なフレーズを、新メンバーのふたりが歌っているというのは沁みますね。

如月愛海:大事ですよね。これまでの曲、「無題合唱」(2016年リリースの1stシングル表題曲)は、ひとりひとりで歌ったものが合わさっていって合唱になるという感じに近いんですけど、この曲はそもそも同じような感情を持っている人たちが合唱している気持ちなんです。言い方は悪いけど、今、ぜん君。は不恰好じゃないですか(笑)。だって形も変わっているし、新しい人が3人もいるんですよ。でも、不恰好ながらもこうして歌っているのって、不器用なぜん君。らしいなと思っていて。それが今後ライヴをやっていく過程で、3人が"ここは君が居るべき場所で 此処はぼくが居るべき場所だ"っていうのを、身をもって経験していくことで、曲がまた変わっていくんだろうなと思うとすごく楽しみなんです。