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INTERVIEW

Japanese

ぜんぶ君のせいだ。

2022年12月号掲載

ぜんぶ君のせいだ。

Member:如月愛海 もとちか襲 メイユイメイ 个喆 寝こもち

Interviewer:吉羽 さおり

ここに立つと決めた以上は、ニコニコで、武道館をちゃんとみんなに見せたい


-「aiHUMANOID」はどこか不思議な妖しさもある曲ですよね。

如月愛海:甘美ですよね。もしかしたら作曲をしたEiseiには私たちがそう見えてるのかもしれない(笑)。

もとちか襲:たしかに、TOKYOてふてふにも曲を書いてるけど、てふてふ(TOKYOてふてふ)にはこういう曲ないもんね。個人的には、ライヴでは前作の「Pistil」と続きでやってみたいなっていうのがあるんですよ。

-だいぶディープなコーナーになりそうですけど(笑)。

もとちか襲:(笑)「Pistil」のとき、歌詞を書いているGESSHI類さんの解説があって。今までぜん君。は処女感っぽいものを大事にしてきたけど、「Pistil」ではそれを少し脱却したと言っていたんです。それで納得しましたね。今回、個人的に「aiHUMANOID」って物語っぽいなと思っていて、「Pistil」が第1章だとしたら「aiHUMANOID」は第2章で完結編みたいな。

メイユイメイ:たしかに。しかも結構先のほうまでいっちゃってるよね。

如月愛海:愛した人と心中レベルだからね。

个喆:難しいよー。

もとちか襲:"此れで死んだって、本望、どこにも居場所なんてない"ってフレーズがあるんですけど、今までぜん君。は死ぬを"ちぬ"と表現したり、死という言葉を直接的に言うことを避けているイメージがあったんです。でもここにきて、"死んだって、本望"って出てきて。私がこの部分を歌ったんですけど、歌ったときにめっちゃ本気度を感じるなと。それでもう、好きすぎて昇天しました(笑)。あと、最後に"愛して。壊して。"というフレーズがあるんですけど、ここは"愛してチーム"と"壊してチーム"に別れて歌っていて、レコーディングのときにヴォーカルのディレクションをしてくれたsyvaさんが、"歌っているメンバーが愛してのイメージと壊してのイメージに合ってるよね"って。

个喆:そんなこと言ってたの? 

もとちか襲:言われてみたらたしかにって。愛してチームが愛海(如月愛海)、こもち、メイで壊してが私と、个喆と、雫ふふだったんですけど──

-あぁ、なんかわかる気がする(笑)。

如月愛海:壊してチームは壊してというより壊すよっていう感じだよね(笑)。

寝こもち:うん、そっちだと思う(笑)。

个喆:ええ~、壊す?

メイユイメイ:こてちゃん(个喆)は愛と壊すだったら壊すじゃない?

个喆:うん、愛してるは絶対に違うね。じゃあ納得。

もとちか襲:そういうのも意図されているのかどうかわからないですけど、楽しいなって思いながら歌ってました。

-では、愛海さんはどの曲がグッときてますか。

如月愛海:「ギザトゥンク%」かなぁ。でも歌詞とかいろんなことを考えると「孤HOLIC」も好きだし、よく聴くのは「ICE CREAM REBEL」なんですけど。「ギザトゥンク%」は、実はきつい歌詞なんですよね。かわいい感じで"トゥンク"と言ってますけど、1回絶望してる感じがあって、それに対しての自分にも嫌気がさしてる感じがするんです。それをポップにというか、ぜん君。が歌うことでかわいさも出ていると思うんですけど、リアルな女子の心情みたいなものを歌に乗せてみましたって感じがあって、わかりやすく自分が同じ気持ちになるところが多いなって思いますね。

-"みんな消えちゃえばいいと願ってた"とかありますしね。

如月愛海:誰でも思うやんっていう(笑)。落ち込んだりうわーってなったりするときって、だいたい最終的に自分を責めることも多いですけど、それが丸々入ってるなと思うんです。だから共感する部分が多いし、でも楽しく歌ってる曲だから、ストレスにならないっていうか。最終的に、だって人間なんだからしょうがないじゃんって感じになるんですよね。それが嬉しくて聴いちゃいます。

个喆:个喆はこれが一番わかりやすい曲だったな。

如月愛海:でも、実際にめっちゃ聴いてほしいのはsyvaさんが作った英語詞の「the other side of」ですね。これは歌詞も重いし。

メイユイメイ:世界に取り残されてるみたいな曲だよね。

如月愛海:自分が見ている世界、今の自分の気持ちを認めたくないみたいなことが、英語詞でストレートに歌われていて。全編英語詞の曲はやったことがなかったので、大きな成長になったというか。しかもsyvaさんは自分の曲だから、レコーディングも厳しくて(笑)。

-それだけ、こだわりがあったんでしょうね。

もとちか襲:レコーディングで"頑張れー"ってメンバーを見送って、戻ってきたのを見たら5歳くらい老けて帰ってくるみたいな(笑)。

如月愛海:疲弊でね(笑)。一番細かく言われたのは発音のところなんですけど、そのへんはかなり厳しかったです。

-海外のファンにも届けるためには大事な作業ですね。

如月愛海:そうですね。あと英語詞は言い回しがストレートだから、歌詞を見ていても面白かったし。ぜん君。って改めてほんとひねくれてるんだなって思って。

个喆:ほんとそう。

如月愛海:例えば"夢幻路"というタイトルにしても、夢に幻の路で、しかも∞(無限)にも掛けている。日本語ならではだし、めっちゃひねくれてるなって感じました。だからこそこの曲ではストレートに伝わる部分があったらいいなと思いますね。

メイユイメイ:歌詞で言えばこの英語詞の「the other side of」が一番"メイダイシンギ"感はあったかな。あなたはどっち側なの? っていう感じで。

如月愛海:そうそう。ずっと問うているもんね。

-現在日本武道館に向けての47都道府県ツアーが折り返し地点に来ています(※取材は11月中旬)が、ツアーの先にこれほど明確な目標がある、日本武道館に向けて走っていくツアーは初めてじゃないですか。ツアーをやってきてどういう体感ですか。

如月愛海:そうですね。しかもその先を決めてないので(笑)、いろいろ聞かれることも多いんですけど、ほんとにその先を決めてないんです。いったん武道館に向けて全力を尽くしたいので、今はそこを明確な道として頑張っている状態で。しかも、武道館でどの曲をやるのかもどんどんわからなくなってきているんですよね。

-ニュー・アルバムもこうしてリリースとなるし、ファンの方が聴きたい曲もあるだろうし、このツアーで得たもの、磨いたものをやりたくなるかもしれないしでセットリストは悩ましいですね。

如月愛海:どの時代の何を入れるかもわからないから。今ライヴでは結構いろんなことをしていて。定番曲というのはもちろんあるんですけど、それ抜きでもここ5年間くらいのものをやっているんです。

-それでも結構な曲数になりますもんね。

如月愛海:どうなるでしょうね(笑)。

寝こもち:全曲やるライヴもやってみたいなあ。

个喆:えぇー、死んじゃうよ!

メイユイメイ:ゆくえしれずつれづれのときに、全部で30曲くらいでやったことあった("ゆくえしれずつれづれ 東名阪企画ワンマンツアー「ININnocent tour」"最終公演)けど、それでも死んだから。

寝こもち:1回その瀕死を味わってみたい。

如月愛海:たしかにやってみたいよね。7日間連続とかで。

メイユイメイ:絶対にイヤだ(笑)。

-そういう伝説を作っていくのもいいかもしれない。

如月愛海:先が決まってないですから。でも楽しいですね。

-では改めて、デビュー当時から目標として掲げてきた武道館公演への思いを聞かせてください。

如月愛海:たぶん"7年"という数字だけで見たら音楽をやっている人からしたら、7年で武道館だったらすごいよってなるかもしれないですけど、やっている身としてはいろんなことがありすぎて、7年が長くて。でも最近"もう7年か"になったんですよね。だから、ここに立つと決めた以上は、ニコニコで、武道館をちゃんとみんなに見せたい。最初から後悔ができない場所だし、ここに立ったらそれがすべてだから。もう1回そこに立つこともすごく大変だし、そう考えると全力が絶対に出る。今ももちろんライヴでは全力だけど、それを超える全力を出さないといけないじゃない? それがわかってるから──正直言えば、客席で見たい(笑)。

-ぜん君。として変わらず7年走ってきた愛海さんは、特にその思いが強いかもしれないですね。

如月愛海:それくらいそこに向けて走っているので、今回のアルバムもいつも以上に知ってくれる人が増えるように、いろんな曲だったり歌い方だったり、アプローチを増やしてきたけど、その根っこにあるものはずっと変わらずに、誰かの居場所でありたいというもので。芯を変えずに広げていった部分があるので。引っ掛かってほしい。引っ掛けたい! それくらい強い曲たちでできあがりました。

-それをぜんぶ君のせいだ。として解像度高くできたアルバムだからこそ、聴いてほしいですね。

如月愛海:超自信のある1枚です。