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INTERVIEW

Japanese

ヒトリエ

2021年02月号掲載

ヒトリエ

Member:シノダ(Vo/Gt) イガラシ(Ba) ゆーまお(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-ちなみに"反地球"がボツになって、"REAMP"がアルバム・タイトルになったのは、どういう経緯だったんですか? 今回、歌詞にアンプとかギターの奏法とか、そういう用語が散りばめられてることと関係してますか?

シノダ:それはスッと出てくる言葉がそれだっただけですね。

イガラシ:ギター脳だからね。

ゆーまお:リフ芸人ですから、彼は。

一同:あはははは!

-(笑)2曲目の「ハイゲイン」もそうですよね。

シノダ:アンプの歪みの量ですね。めちゃくちゃ歪むアンプをハイゲイン・アンプって言ったりするんですけど曲自体が歪んだギターで疾走する曲なので、これは"ハイゲイン"だなって。あと、"Marshall A"は、この曲のギターはマーシャルアンプで録ったんですよ。で、コードがAから始まるから、"Marshall A"ですね。

-で、アルバム・タイトルの"REAMP"というのは?

シノダ:それもギターの録音の現代的なやり方のひとつですね。本来、ギターのレコーディングっていうのはスタジオでアンプに繋いで、その場でギターを弾いて、そのアンプから出た音をマイクで録るんですけど。そのギターからアンプにいくまでの信号をラインって言って、それが本当に小っちゃな波形なんですよね。

-はい。

シノダ:その小さな波形を宅録で散々仕込んで、データをスタジオに持っていって、パソコンからアンプに流し込むことによって、アンプから出た音をマイクで録ることをリアンプって呼ぶんです。で、それを今回のアルバムで多用したんですね。

ゆーまお:そうすることで発見もあったんですよ。

シノダ:今まで僕はスタジオでギターを録るのが苦手で。悩むから、めちゃくちゃ時間がかかってたんです。家で悩んだほうががリラックスしてできるって言ってたら、エンジニアさんにこのやり方を教えてもらって、いい感じで作れたんですね。

-じゃあ、それをタイトルにしてしまおう、と。

シノダ:そう。"太陽の裏側"ベースのタイトルを付けようとしたときに停滞してた雰囲気が、"REAMP"になった瞬間に自然とみんな爆笑したんですよね。

イガラシ:ひと笑い起きたよね。なんとなく響きもかわいいし。

ゆーまお:REAMP自体の技術的な意味合いはあるけど、"もう1回"みたいな、そういった意味に捉えていただければなっていうのはあるんです。

シノダ:もともと"RE (リ)"っていう言葉で何かタイトルを付けるのも構想のひとつにあったんですよ。リロードとか、リスタートとか。そのなかでリアンプがハマったんです。

-再びヒトリエがアンプから爆音を出すみたいな意味を感じますよね。

シノダ:そう、再びアンプに火を入れる。そういうニュアンスもあるのかなと思います。

-ゆーまおさんが作曲を手掛けた曲に関しても話を聞ければと思います。「faceless enemy」と「YUBIKIRI」。どっちもメロディがポップですね。

ゆーまお:そういうメロディになってしまうからですね。

シノダ:俺があれこれ悩んでるのがバカらしくなるぐらい、真水のように澄んだ曲ですよ。

ゆーまお:出せるものを出すしかない、それだけなんです(笑)。正直言うと、自分のが一番(ヒトリエのリスナーに)受け入れられない曲だと思うんです。俺はいくらヒトリエのメンバーで、ヒトリエのことをわかってるとはいえ、ヒトリエに沿った曲を書けないことが、書く前からわかったので。そういったところは割り切ってやりましたね。

イガラシ:でも、俺はゆーまおがもともとヒトリエ以前に作ってた音楽がすごく好きだったので。そのまっすぐさで曲が届いたから、すごく嬉しかったんですよ。本人よりも俺のほうが気に入ってると思います。

-そういう意味では、ゆーまおさんの曲がヒトリエ的ではないから、出すのをやめようっていうことを選ばなかったのが、このアルバムの答えなんだと思います。

ゆーまお:一生懸命やらなきゃいけないっていうところだけなんですよね。それがどう受け取られようが、やりますよっていう意思表示ではあるので。

-ゆーまおさんが手掛けた「YUBIKIRI」でアルバムが終わるのも印象的でした。

シノダ:作ってるときから、これはもう最後の曲に相応しいなって思ってましたね。

-明るいのに、なぜか泣けてくるんですよ。

シノダ:でしょ?

ゆーまお:そうなんだ。すごく爽やかだし、一番明るいじゃないですか。作ってるときは調子に乗っちゃってるから、"青臭いくらいの歌詞にしてくれ"とか、"10代の子たちが聴いたらキュンとくるような歌詞を頼むよ"とか言ってたんです。自分の中で萎縮しそうな雰囲気を感じてたから、それを解放させなきゃいけないなっていうのがあって。ヒトリエがどうのこうのとか、そういう話とは別途で、俺がこういう曲にしたいんだってのをはっきり伝えなきゃいけない。これはそういう曲なんですよね。

シノダ:ゆーまおからそういうオーダーを受けたので、俺も、なるべく飾らない言葉をチョイスしてみようと思ったんです。鍵盤はパスピエのナリハネ(成田ハネダ/Key)が弾いてくれてるんですよ。で、俺以外の3人で録ってる間に歌詞が書けちゃったんですよね。それぐらいスッと出てきた言葉なんです。

-アルバムが完成して、今はすべて出し切った感じですか?

シノダ:作り終えたあとは何もできなかったですよ。

ゆーまお:スッカラカンになってましたよね。

-アルバムを作り終えたことで、次も進めそうな気持ちにはなりましたか?

シノダ:まだわからないですね。聴いてもらわないと。

ゆーまお:来週、「curved edge」に続いて、「YUBIKIRI」のミュージック・ビデオが公開されるんですけど(※取材は1月23日)、めっちゃ不安です。今までのヒトリエとは明らかに違いますから。

シノダ:大丈夫。イントロで細かいギターを弾いてるし(笑)。

-イガラシさんはどうですか? 今作を作り終えて。

イガラシ:聴いてもらって、どうなるんだろう? っていうのはあるし、ライヴでやって、どうなるんだろう? っていうのもあるし。ふわふわしてますね。

ゆーまお:なんかパっとしないことばっかり言ってしまったけど。改めて言っておきたいのは、先に続くとか、次のヒトリエとか、wowakaの曲を残していくとか、自分たちの中でいろいろ考えることはあるけど、このアルバムを作るっていうのは、やらなければならないことだったんですよ。

シノダ:作れたっていうのはそういうことだったんだよな。

ゆーまお:そう。絶対にやらなきゃいけなかった。それだけは念を押して伝えておきたいです。このアルバムは"僕たちは一歩前に足を進めました"っていう宣言なんです。