Japanese
BLUE ENCOUNT
2019年06月号掲載
Member:田邊 駿一(Vo/Gt) 江口 雄也(Gt) 辻村 勇太(Ba) 高村 佳秀(Dr)
Interviewer:石角 友香
来年末、再来年に向けてこのバンドをアリーナ・ツアー・クラスまで持っていきたい
-今回、全体通して江口さんのギターの印象が強くて。もちろんリード・ギタリストとしてのフレーズはこれまでも印象的でしたが、違った意味でギターが立っているなと。
江口:全体を一度作ったのを田邊に"もっといいのがあるんじゃないか"って崩されてからのスタートだったんで、自分の中では構築していくのが大変なアルバムではあったというか。自分が一度開けきった引き出しからさらに別の引き出しを開けなきゃいけない作業の連続だったので、自分の中で戦いながら完成させていった感じですね。結果的に、最初に田邊が崩してくれたからこそ新しいアイディアとかが出てきたと思うので、良かったですね。自分の新たな一面も出せたし、ブルエンの新しい一面も見せられたと思うので。
田邊:彼(江口)の一手がその曲の主役になったりするし、ドラムとベースのフレーズだけだとなかなかうまくいかないときに、彼が入ることによってBLUE ENCOUNTのエッセンスがちゃんと入るんですよね。たぶん今回はそれがしっかり出ていると思います。
-戦ってる相手はわからないですけど、全編にすごくハングリーさを感じるんです。
田邊:たぶん子供っぽいまっすぐさを忘れていくので、制作中も効率の良さを重視したりすることがあるんですよね。でもそれが足かせになってたときも多くて、メジャー5年目にもなってくると、1年目のような緻密さや熱量よりも、いいものを瞬発的に出せる力の方が大事なんじゃないか? と思ってしまうことがあるんですよ。江口と俺ってすごい効率重視なので、能率と効率重視にして、いかに少ない労力でちゃんと全部やるかっていうのを変に覚えちゃったところもあったので。
-自覚的なんですね。
田邊:だからこそ、逆にガキっぽい「ワンダーラスト」って曲ができたと言っても過言ではないぐらいで。ガキのいいところを大人の経験でいなしてた自分たちがいたので、そのせいでライヴでも頭でっかちになっちゃってた時期があったんですよね。今回のアルバムはたぶんそのガキの部分を解き放とうとしてできたものだから、めんどくさいまでにひとりひとりと話し合ったりしました。音もそうだし、話し合いについてこんなに重視したのは『≒』(2015年リリースのメジャー1stアルバム)以来ぐらいだよね? こないだは4人でご飯を食べに行って。リハ終わったあとにリハスタの近くの飯屋さんに4人で入って、酒飲みながら2~3時間、音楽の話だけして。そんなのいつでもできるだろうなと思ってたんですよ。別に仲悪いわけじゃないから。でも改めて今回"行こうぜ"ってなって、ちゃんと見えてたつもりが見えてなかったメンバーの葛藤とか苛立ちとか、それに付随する弱さとかが、ひとりひとりにあることがわかったんですよね。その傾向と対策についての話ができたのも意外でした。それができて、そこからほんとに『SICK(S)』ってものができていったので。その次の週に全体の打ち合わせがあったんですけど、そこで僕ら4人で"ミニ・アルバム作りたいです。なんとかよろしくお願いします"って言ったら、スタッフ・チームのみなさんが"よく言ってくれた"みたいな感じになって。みんなやっぱ一緒だったんですよ。自分たちでは楽しくライヴできてるし、年末のフェスもちゃんといいものができてたなと思ったんですけど、そこを超えるだけでいいんだっていう変な効率の良さを覚えちゃった自分たちがいて。今はその経験プラス、今のブルエンというものを投影していくにはどうすればいいんだろうっていうことを考えるようになったと思いますね。
-何か大きなモチベーションはこれまで仮想敵だったりしたわけで、自分たちにとっての目標を考えるタイミングだったんじゃないですか?
田邊:おっしゃるとおりですね。これまでは目標が漠然としてたので、今回は4人で話し合って、目標というものをちゃんと打ち立てようと思って。次はちゃんとアリーナ・ツアーが見えるようにしようとか。でも、アリーナが取れないっていうのも大問題にもなっていて。オリンピックの兼ね合いとか、会場の改修とかもそうですけど、しっかりと次に会場が取れるのは来年の末から再来年だと思うので、そこまで時間があるようでないんですよね。もう1年半とかだから。じゃあ、そこに向けてどういうふうにこのバンドをアリーナ・ツアー・クラスまで持っていくのか? っていうことを逃げずに考えたいなって思ってますね。ホール・ツアーだからかっこつけるとかではなく、自分たちの目標をまたみんなと共有できるツアーにしたいなと。だから、『SICK(S)』ってアルバムができて良かったと思います。
-辻村さんは、このアルバムに対する気持ち的な部分はどんなものだったんですか?
辻村:今回、ベースのことで言えば"曲のためを思って弾いた"というか。前までは自分がこう見せたいとかっていうのがあったんですけど、まず第一に、曲をどう見せたいかっていうことを考えました。だから、田邊の頭の中にある世界観を読み取るのに結構時間がかかりましたね。"こうしたい"っていうのがあんまり伝わらないときが正直何回かあって、"なんで伝わんないんだろう?"って理由を探ったりして。でも世界観がわかってからは、"あ、なるほど"って感じで、そこからはちゃんと曲に色を入れられたかなって思いますね。
-闇雲な貪欲さじゃなくて、5周年を迎えたバンドならではのハングリーさというか。
辻村:そうですね。むしろ昔よりはいろんな目標とか、自分らがやらなきゃいけないこと、足りないこと、お客さんが求めてることが明確にわかってきている方だと思うので。それが少しずつ曲とか言葉とかサウンドにちゃんとアウトプットできるようになってきてると、最近は思いますね。
-各々音楽的な達成感をお聞きしていいですか?
高村:シンプルに叩いたビートとか、前だったらスネアの数をもう1個増やさないとOKされなかったところを、少なくても何も違和感なく"いいね"ってなるところが、僕の中で今までと一番違う部分ですね。自分が今一番好きな音楽とか、聴いてる音楽と、前までのブルエンのモードが、僕の中では結構差があって、今はシンプルなモードに僕自身が入っちゃってて。
-手数よりも音を選ぶとか?
高村:大きく見せるモードに入ってるんです。僕は、楽曲を作るとそういうモードを引きずるというか、そういうふうにしたいって脳になっちゃうんですよ。でも、恐る恐るそれを入れてみると、別にそんなに違和感なくみんなが受け入れてくれるんです。"あ、こういうこともアリなんだ"って、自分の中でひとつ自信にもなったし、これからまた作るときに"こういう選択肢もあるんだ"っていう、これから先の幅の広がり方って意味で、僕は今回のアルバムはすごく面白いなと思ってます。ドラマーとして。
-繰り返しになりますが、今回は江口さんのサウンドのイメージが強くて、BLUE ENCOUNTのギターのあり方を再認識しました。
江口:昔、9mm(9mm Parabellum Bullet)の滝(善充/Gt)さんと飲んでたときに言われたことがあって。"ブルエンの音楽って、たしかにギターが特徴的でエッセンスになってるけど、全体で見たら、ギターが常に立ってると逆に立ってないように聴こえる"って。ギターが立って聴こえるっていうのは、自分の中でずっとテーマにしてたことなんですよ。でも、それをバンドに持っていくのがなかなか難しくて。みんながもっとやってほしいと思ってるところで引いたりすると、田邊に"もっとやって"って言われるし。だけど、今回はちゃんと引くところは引いて、出るところはちゃんと出たから、全体を見たときにギターが立ってるように聴こえるっていうのは、自分の中で"あ、正解だったんだな"って思うことができました。自分の中で新しい引き出しをまたひとつ開けられたかなとも思いますし、そこは新たな発見になりましたね。
辻村:最近思うのは、僕はサッカーで言うとミッドフィルダーだなって。ミッドフィルダーには点を決める人もいますけど、ちゃんと前線で攻めてくれるふたり(田邊、江口)がいるからこそ、BLUE ENCOUNTのベースはミッドフィルダーぐらいがいいのかなと思うんですよね。よっちゃん(高村)は完全にディフェンダーで自分の立ち位置を守ってくれてますし。自分のいるべき位置に迷ったこともありましたけど、今は役割がわかってきて、シュートを決めるんじゃなくて最善のパスを出すぐらいの気持ちで今回取り組みましたね。
-そういう意味で言うと、辻村さんのベースは洗練されてきているのかも。
辻村:無駄なことはしてないつもりです。あとは、ギターのフレーズや歌詞の符割が変わるので、そこも予測して引き算してますね。自分のエゴを入れることで、メロディとか本質的な音楽がちょっと伝わりにくくなるなっていうのは、最近すごく考えてることなので、シンプルさを意識しながら、ここ! っていうところで曲の美味しさを極限まで出すことにこだわってます。
-そして全体で聴くとハングリーで。それこそが前進したということなのかなと。
田邊:もう、ホール・ツアーがとにかく楽しみで。ブルエンの財産って、いろんなジャンルの曲の中で感情を吐き出せることだと思うんですけど、自分たちらしいものとして吐き出すのが一番いいっていうことが答えなのかもしれないですね。"この乗り物の方がいい操縦できるよ"みたいなことが、今回のアルバムで立証できたと思います。
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