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INTERVIEW

Japanese

ヒトリエ

2018年12月号掲載

ヒトリエ

Member:wowaka(Vo/Gt) シノダ(Gt/Cho) イガラシ(Ba) ゆーまお(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-なるほど。シングル『ポラリス』を制作したのは、海外ツアーに出る前ですか?

wowaka:あとですね。そういう意味では、海外の経験が含まれてるんじゃないかな。それが、どういうところかは具体的に説明できないですけど。

-表題曲「ポラリス」は、TVアニメ"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"(以下:"BORUTO")のエンディング・テーマの書き下ろしということですけど。

wowaka:まず「ポラリス」の話をするうえでは、"NARUTO-ナルト-"(※"BORUTO"の前日譚/以下:"NARUTO")の話をしなくちゃいけないと思うんです。"NARUTO"って、僕ぐらいの世代だったら、絶対に避けては通れない漫画なんですよ。中学生とか高校生のときにアニメが始まったし、みんな"週刊少年ジャンプ"を読んでたし。

-わかります。

wowaka:で、歌の印象が強いアニメっていいなと思うんですよ。"ハガレン(鋼の錬金術師)"の「リライト」とか、"NARUTO"の「遥か彼方」とか。アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の話ばっかりになっちゃうんだけど(笑)。"NARUTO"っていうのは、そういう自分の中のアニメと主題歌の強い繋がりを感じる原体験的な作品でもあったんですよね。で、今回改めて"NARUTO"に向き合う機会を貰って、"NARUTO"の1巻から"BORUTO"までを単行本で全部読んで、あのとき読んだ少年漫画の凄みをひもといていくような感じがあったんです。"あ、こういうことだったんだ"って。そこに自分たちのバンドと通じる部分があって、今回はそれをテーマにして書いてみようと思ったんですよね。だから、"BORUTO"がなかったら書けなかった曲です。あの作品が発する空気感に向き合うことで、今の自分と向き合うことができて、この曲が作れたんです。

-wowakaさんが"今の自分と向き合う"ことで、剥き出しの自分自身を書くことができたのは、それ以前に『IKI』(2016年12月リリースの3rdフル・アルバム)とか『ai/SOlate』(2017年リリースの3rdミニ・アルバム)という作品があったからこそですよね。

wowaka:そうですね。ヒトリエを4年ぐらいやってきて、そこで初めて自分がどういう人間かっていうのを、ペルソナみたいなものを通さずに言えるようになった自分がいて。この自分を相手に伝えていくにはどうすればいいか、みたいな課題に今の自分が立ってるんです。それは、"Loveless"ツアーで初めて感じたところでもあったんですよね。

-ええ。

wowaka:そのツアーの福岡公演(2018年2月3日に開催した福岡DRUM Be-1公演)だったんですけど、人に何かを伝えるのはこういうことだ! っていうのがわかる瞬間があって。その日を境にパっと曇りが晴れたというか。そこから、自分の中でライヴが良くなった感じがしてるんです。そういうことに気づけるのも、今までやってきたことの積み重ねだなって思えたときに、"BORUTO"の話があったんですよね。今回は今感じてることを全部書き記すタイミングだな、と思って歌詞を書いたら、こんな(想いの)洪水みたいな曲になっちゃったんです。

-で、この曲が画期的なのは、自分自身と向き合ったことで、"あなたはとても強いから/誰も居ない道を行ける"っていうふうに、"あなた"に宛てた曲として書いてることで。

wowaka:今までにはなかったですね。"君"とか"あなた"は使いたくない単語でしたから。言葉に気持ちの変化が表れてるのは、そこだと思います。それも、今改めて"あなた"っていう言葉を使ってやろうっていうつもりはないけれど、誰かに伝えていくっていうことをやろうとすると、こういうところに行き着くんだなっていう感じですね。

-ちなみに、他のメンバーは"福岡の夜"に同じような感覚はあったんですか?

ゆーまお:それが、ないんですよ(笑)。

wowaka:恥ずかしいから、"ここで変わった!"みたいなことは言わないですからね。わかるときって突然なんですよね。急に自転車に乗れるようになるみたいな。

-わかりやすいです(笑)。サウンドに関しては、アニメの主題歌っていうところもあって、メロディが強く伝わってくるアレンジですよね。特にドラムはシンプルですし。

ゆーまお:この曲を作ってるとき、自分自身が"己とはなんぞや?"っていうモードに入ってしまったんです。僕は、"お前それ、できてないよ"とか、"やれてないよ"とか言われたくなくて、ドラムを叩き続けてたんですよ。空いてる隙間を埋めるつもりでドラムを叩いてた。でも、この曲では明るくしたい、キラッとしたいっていうイメージもあったから、今まで自分たちがアプローチしてこなかったことをしなくてはいけなかったんです。それでもがいてたんですよね。

-この曲ができたことで、自分なりの答えは出せたんですか?

ゆーまお:うーん......今ももがいてる途中ではあるんですけど、この曲を作ることで見えてきたものはあるから、僕たちにはまだ先があることを保証できる1曲だと思いますね。

イガラシ:ゆーまおは考え方が独特だから、そこに答えがあるのに、すごく悩んだりしてるんですよ。でも、自分で答えを掴んだときのゆーまおの爆発感はすごいんです。

wowaka:俺はゆーまおが一番自分に似てるなって感じるんですよ。自分がやっていることに対して、"どうだろう?"みたいに悩む日々なんですよね。それが、音楽をやっていたりするなかで、"あ、こういうことだった"って、頭じゃなくて身体で理解する瞬間を経験してる。そういう実感を得ながらヒトリエを続けているんです。

-そうやって真剣に楽曲に向かったからこそ、「ポラリス」は、新しいヒトリエのサウンドを獲得するような楽曲になったんですよね。

wowaka:そうなってるといいですね。すげぇつらいし、孤独だし、だいたい心の中は暗いんだけど、そこに差し込む光のような曲だからこそ、ちゃんと美しくなきゃいけない、キラキラしないといけないっていうので、すげぇ頑張った曲なので。