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INTERVIEW

Japanese

ヒトリエ

2017年12月号掲載

ヒトリエ

Member:wowaka(Vo/Gt) シノダ(Gt/Cho) イガラシ(Ba) ゆーまお(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-「アンノウン・マザーグース」を発表したときには、自分が音楽をやり始めた意味みたいなことまで掘り下げるようなコメントもTwitterに上げてましたね。

wowaka:そうですね。今回の制作は、自分がどうして初音ミクの曲を作ってたか、なんで作らなくなったか、なんでバンドをやり始めたかっていうことを考えたうえで、真摯にやりたいなっていう気持ちがあったんですよね。もともと僕がボーカロイドで音楽をやってたのは、時間にすると2年弱ぐらいしかないんですけど、その2年でアルバム(2011年にリリースしたwowakaの1stアルバム『アンハッピーリフレイン』)もリリースして。でも、リリースした瞬間に自分が空っぽになったというか。"この次に自分は何をすればいいのか"って考えてたんですよ。その当時のボーカロイドのシーンにこのまま安住してていいのか? っていう気持ちが出てきてて。

-どうしてそういう疑問を抱くようになったんですか?

wowaka:いま思い返してみると、そういう状態になったひとつの理由はそのシーンに違うニュアンスが入ってきたからだと思うんですよね。俺がアルバムを出したのは2011年なんですけど、そのころからボカロ・シーンの規模が大きくなって、僕が好きなものとかかっこいい音楽、大事な信念みたいなものを無視して、上辺だけのwowakaっぽい曲を作ろうとする人たちが出てきた。例えばBPMが速いとか、音数を増やして詰め詰めにして、サビでパッと急にメロディアスになる展開の仕方とか、リズムの捉え方とか、そういう簡単に真似できちゃう部分をかっさらった作品がすごく増えたんですよ。それも僕がバンドを始めた理由のひとつになったのかもしれません。

-それはヒトリエを組んだ当時には、"どうしてバンドを組みたかったのか?"って聞かれても、なかなか語れなかった部分じゃないですか?

wowaka:いま思うと、あのときおれは怒ってたんだって思ったんですよね。そこから5年ぐらいヒトリエをやってきて、去年『IKI』っていうアルバムを作れたから振り返れたんです。そういうことを踏まえたうえで、初音ミクの楽曲を作らなければいけなかったというか。俺にバンドを組むきっかけを与えてくれた初音ミクっていうシーン自体に対して、いまできることを全力でやるのが、俺にとっての初音ミクだし、誠意だと思って作ったのが「アンノウン・マザーグース」ですね。

-結果、そういうふうに考えたことは「アンノウン・マザーグース」っていう1曲のためだけじゃなくて、今後のヒトリエのためにも必要な作業だったと思います。

wowaka:たしかに、そうかもしれないですね。このメンバーに会えて、ちょっとずつ増えてくるお客さんの前に立って、自分がかっこいいと思う音楽を鳴らすっていうことを愚直に続けてきたことで、初めてもっと裸になりたいとか、音楽家としてもっとかっこよくなりたいっていうことを思えるようになったんですよね。

-いまwowakaさんが話してくれたような過程のなかで「アンノウン・マザーグース」にメンバーも関わることになりましたけど、そこは結構話し合ったんですか?

ゆーまお:そんなに話し込んではないですね。"悩んでる"とは言ってたけど、それは好きにしてくれっていうか。とりあえず、曲を作りたいっていうことだけはわかってるから、それに対してひとりでやろうってなったら、それはそれでいいかな、ぐらいの気持ちでしたね。

-「アンノウン・マザーグース」はヒトリエの新境地となる曲ですけど、このタイミングで新しい音楽の可能性にアプローチしよう、みたいなところは意図してたんですか?

wowaka:新しいことをやろうとはしてないんですけど、いまやりたいと思うことを遠慮せずに詰め込もう、みたいな意識はありました。ある種、初音ミクが最初に歌うから外せたリミッターみたいなのものは大きかったんじゃないかなと思います。実は去年ぐらいから、いままで触れてなかった音楽にも積極的に触れるようにしたんですね。最先端の海外の音楽もそうだし、日本のアンダーグラウンドなものとかアイドル・ソングまで、いろいろなものをインプットしたいなと思ってて。そういうのを全部入れちゃえば、次のステップの足掛かりになるんじゃないかとか、それをやるのもミクへの礼儀だと思ったんですよね。

-いままでのセオリーとはまったく違うことをしてますよね。サビでゆっくりに聴こえるような持っていき方で昂揚感を高めていくのもトレンド感がありますし。

wowaka:これは最初から展開とベーシックのアレンジはあったんですよ。

シノダ:我々はそれを忠実に再現していきました。

イガラシ:デモを聴いただけで、やっぱり想いの強さを感じたんです。作り込みとか、クオリティとか、こだわりとか。家で作ってる段階だといくらでもひとりで突き詰められるから、全部本人がめちゃくちゃ好きなフレーズになってると思うんですよね。

wowaka:うん。

イガラシ:それをどんなに忠実に再現しても、自分がベースを弾くと俺の音になってしまう。それがヒトリエだと思うんですけど、この曲に関しては全部この人(wowaka)の好きなフレーズにしたかったんですよ。それを俺が弾いたうえで、"すげぇいい"って言ってほしかったっていう。自分の中ではそういう闘いをした曲でしたね。

-なるほど。じゃあ、「アンノウン・マザーグース」が『IKI』以降のヒトリエのスタート地点であり、ミニ・アルバムに入る曲はそれ以降にできていったわけですか?

ゆーまお:振り返ってみたらそうですね。

wowaka:そんなのんびりしてんじゃねぇよっていう感じかもしれないですけど、とにかく「アンノウン・マザーグース」の1曲に集中して、聴いてもらった反応を実感したうえで、次に進みたかったんですよね。そこでいろいろなことを言ってもらって、俺がやってきた5年間には意味があったし、絶対に恥がない活動をやってきた実感を得られたんです。"じゃあ、大丈夫だ"って。それから、自分の新しいインプットを増やしたことで生まれた曲っていうのも抵抗なく入れることができたんですよね。