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INTERVIEW

Japanese

9mm Parabellum Bullet

2016年05月号掲載

9mm Parabellum Bullet

Member:菅原 卓郎(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

-でもこれはひとりで原型を作らないと曲として完結しないんでしょうね。

そうですね。誰の曲でもそうなんですけど、"どこまでどういうアイディアを入れるか?"ということが大きくて。例えば"これは追いついてるけど、こっちのフレーズに変えようよ"とか、"Bメロを足そうよ"とか。そういうことを今回はあまりやらずに、とりあえずもとのイメージがあって、"どれだけそこからビルドアップしていくか?"というような工程でした。そうすると、やっぱり作曲した人の世界観や表情が出るんですよね。9mmをずっと聴いてる人だったら、"これ絶対あいつが書いてる曲だ"とか、"和彦が書いたのはこれに決まってる"とかわかる、そういう曲が並んでますね。

-たしかに。今回のアルバムって4人で歌ってるような曲が多いなと思ったんですよ。全員で歌詞の内容をアレンジや演奏で表現してる印象があったので。それは菅原さんの歌が強いんだろうなと思ったんですね。

歌をレコーディングしてるとき、エンジニアの方が"新しいレベルに達してるな"と感じたら、ちゃんとそれを教えてくれるときがあって。"新しい段階に上がったような気がしたよ"ってメールが届いたり、その場で"歌がちょっと逞しくなったね"と言ってくれたりするんですよ(笑)。自分でも明らかに前とは違うなということは感じたりするので、自分以外の人にもそう感じてもらえて嬉しいです。

-このアルバムって"Right Now"的なタイトルがハマる気がしました。

ああ、たしかに"今だ"というような案もありましたけど、"統一感がない"とも言えるなぁと作っている最中に感じていて。"どうやってアルバムに芯を通そうか"とみんなで考えていました。滝(善充/Gt)もギターによっていかにサウンド面で芯を通すかを考えたと言ってたし、僕もどうすりゃいいんだろうな?と考えてました。それで、飾り立てた言葉で歌詞を書くんじゃなくて、素直な言葉にしようと。今はそれしか書けないなという気持ちになって、そういうもので統一感を出すというか、そういうものを今回のアルバムのカラーにしようというイメージで作業しました。それで、"Waltz on Life Line"というタイトルになったのは、「生命のワルツ」(Track.1)の歌詞を書いたときに「生命のワルツ」の洋題"Waltz on Life Line"をイメージして歌詞を書いてて。結果的に洋題はナシということになったんですけど、アルバムのタイトルを考えていたときに滝からその洋題が挙がってきて、"あの言葉良かったじゃん"と。「生命のワルツ」が、この3年の間にすごくいい仕事をする曲になったなというか、激しいんだけど聴いてくれる人の中に染み込んでくる曲になったなと思っていて。ここでもうひと踏ん張りしてもらおうかなと(笑)。

-しかもアルバムの1曲目にきて"でたらめな時代に立ち向かえ/正しさを間違えてしまう前に"という歌詞を聴くと、これまで以上にリアルに感じられます。

大きいものに立ち向かうには、まず自分の周りのことに立ち向かわなきゃいけないなという気持ちを込めているんですけど。"時代に立ち向かえ"というのは、結局、自分のことを整えないといけないというか。それで、今の方がしっくりくるのは逆に危ないんですけど(笑)、でもしっくりくるなとは思いますね。

-それで、菅原さんもメンバーも15曲バラバラだと思ってたわけですね?

そうですね。"こりゃ大変だ"と思って(笑)。でも、滝がメインのソングライターじゃないアルバムは今までなかったので。毎回、全員でこんなに分担していくのはなかなかヘヴィな作業かなと思うんです。でも今しかできないという意味ではすごく面白さもあります。みんな結局、曲が書ける人なんだなというのはわかったんですけど、作業の濃さというか、持ってきたデモを"さぁみんなで演奏して作り上げます"という本当にバンド然とした作り方というか。滝の曲がすごく多かったときは、滝が作るデモのクオリティもどんどん上がっていったんで、上から下まできっちりデザインしてるものが多くて。それをみんなで演奏するときに、もちろん自分たちのパートを自分たちで作る部分はあるんですけど、"この部分はこう弾いてくれ"というオーダーをまず守ってから作っていく感じだったんです。でも俺が自分で書いた曲はベースはまったく入れてなくて、ギターで弾き語りしてる音と、ドラムのパターンだけを入れてて、"こういう感じで、ベースはよろしく"とか。ゼロから作っていく作業が久しぶりにたくさんあったので。それは今までと違うところかなと思いますね。

-効率じゃなくて、何が飛び出してくるのか期待するという?

みんなのいろんな引き出しを開けさせるというか、そういう作業が多かったし、とりあえずみんなが出してきた曲を片っ端からバンドで合わせていきましたね。

-演奏によって"全員で歌ってる感"の強い曲が多い印象があって、例えばTrack.3「湖」は特にそうだなと。

そうですね。これは和彦が書いた曲で、いつもとちょっと違うギターを使うとか、本当にちょっとした冒険がたくさんある感じですね。歌詞もなんとも言えないセンチメンタルな感じですが、それが歌詞を書いてるときもしっくりきてたというか。強い主張とかエネルギーがないわけじゃなくて、当然あるんですけど、無理やり出すんじゃなくて、曲に託してみたいなというニュアンスはありました。さっきも話したように言葉はすごく素直にしておきたいなという気持ちはあったんですよね。「湖」はそういうところがよく出てるかなと思います。