a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第13回】
2017年08月号掲載
アメリカ南部シリーズ終章。ミシシッピ洲クラークスデイル編。
メンフィスから車で南へ2時間弱。広大という表現じゃ足りないほど広大な綿花畑、弾痕の残る軒並み(ゲトー)、遮るものの無い空、超巨大な散水車、国道沿いに連なる墓地(高名なブルースマンの亡骸もそんなところに眠っていたりする)......薬莢ってもんを拾った。「エクストラ・ライト」と記してあった。撃ち心地軽いわあ、とかあるんだろうな。そういうものを眺めているうちブルースの生誕地と謳われるクラークスデイルに辿り着く。大通りの奥に名物ヴェニューのグラウンド・ゼロがあり、デルタ・ブルース博物館がある。そこを拠点に町歩き。ジューク・ジョイントで飛び入りのセッションをしたり、売物のアンプの上で猫がアクビをする楽器屋(日本ではそんな店あり得ない)で69年製ハーモニーのモントレイというギターを買ったりした。いくら「ブラック・ビートルズ」がヒットしたレイ・シュリマーがミシシッピ出身だからと言っても、クラークスデイルはトラップの街じゃない。やはりブルースにこそ根深い。通りの中心辺りにキャット・ヘッドという居心地の良い店がある。
第13回クラークスデイルCAT HEADの巻
<252 Delta Ave, Clarksdale, MS 38614>
キャット・ヘッドは間口の広い店構えで、明るくて入りやすい。クラークスデイルは御世辞にも治安が良いとは言わないが少なくともここは平穏を感じさせてくれる。気さくな店主が一人で切り盛りしていて、会話も弾む。レコード専門というよりクラークスデイルの音楽情報の発信基地と言った趣。各ジューク・ジョイントの出演者のリストが掲げられていたり、地元のブルースマン達を推薦するコーナーがあったり。マーチャンダイズのスペースに比べるとレコード棚は小さく正直言って寂しいが、掘ってみると「Beautiful Album」と小さなメモが張られた真っ赤なジャケットが現れた。
*Don't Lose This / Pops Staples(2015)
ステイプル・シンガーズの親玉(というか家族なので実際に父親)、ポップス・ステイプルズの遺作。ポップスは死の直前、ステイプルズの看板娘(というか実際に娘)であるメイヴィス・ステイプルズに「Don't lose this」と伝えて一つのライブ音源を託したそうだ。その言葉通り、メイヴィスはポップスの死後この音源を公開することを決意する。しかし......ここが素敵なところなんだが、メイヴィスは元の素晴らしい録音に更に手間をかけるべきだと決意し、ウィルコのジェフ・トゥウィーディらにダビングの依頼をして自由なアレンジメントを託した。元の音源に収められていたゴスペル・ソングの美しさとポップスの素晴らしい演奏を際立たせながらも、今の耳で聴いても楽しめる作品が生まれたという訳だ。
ちなみにメイヴィスはゴリラズの新作「ヒューマンズ」でも豊かな歌声を聴かせているし、トランプ大統領就任式の時に発表されたアーケード・ファイア「アイ・ギヴ・ユー・パワー」にも参加していた。ステイプルズ・シンガーズの歌声は今もアメリカを象徴する偉大なものだということだろう。メイヴィスは今年日本公開の映画「約束の地、メンフィス~テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー~」でもポップスの名前を出していた。エモーショナルなワン・シーンだ。
8月2日、メンフィスのロイヤル・スタジオで録音した「LEO」というソロ名義の作品をリリースする。メンフィスの伝説的ミュージシャン達と出会い、新しくて古く、古くて新しい音楽を録音した。よろしくどうぞ。
佐々木亮介 / a flood of circle
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