a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第8回】
2016年10月号掲載
第8回 ザブの仕事編
この夏、ロンドンの老舗レコーディング・スタジオであるメトロポリスから、エンジニアのザヴィエル・スティーヴンソン氏(以下ニックネーム「ザブ」)が俺たちのレコーディングの為に来日してくれた。メトロポリスは古くはストーンズやクイーンが録音をした場所で、マッシヴ・アタックもその中に個室を持っていたり、最近だとアデルの最新作の録音場所でもある。今年2月に俺たちはそこに飛び込んで行ってザブと共に録音をしてきた(ロンドンでのディグについては第5回と第6回参照)。3曲録音して、ものすごく良い作品が出来上がったし、ザブも俺たちの音楽をとっても気に入ってくれた。ロンドンでの別れ際「次はもっと沢山録りたいね」って話になって。実際日本に帰ってから、ザブに日本に来てくれないかってオファーをした。メトロポリスは普段エンジニアの海外派遣はやっていない。けどザブははっきりと日本で一緒に仕事をしたいと言ってくれて、おかげで無理が通って道理が引っ込み来日してくれたのである。8月いっぱい東京でエキサイティングな録音をした。ありがとうザブ。まじですげーのが沢山できたから発表の時を是非楽しみにしていてください。ザブはジャンルにとらわれない。マストドンの話をしていたかと思えばリアーナやザ・フーのレコーディングの体験を話してくれたり新宿でビースティ・ボーイズの「Intergalactic」のビデオの再現ごっこをしたり。新宿で一緒にレコ屋でディグった時にザブの過去の仕事にいくつか触れたから、今回はその話をしようと思う。
*Miles Kane "Colour Of The Trap"
「ラスト・シャドウ・パペッツのアークティック・モンキーズじゃない方」で御馴染み......じゃなくて、ザ・ラスカルズというバンドをやってた頃から格好良いんだこの人。この作品ではまだ風貌にも若さが残ってるし音はパペッツというよりラスカルズ寄りのダンディな現代ガレージ・ロックンロールって感じ。パペッツの最新作の「Bad Habits」のビデオを観ると歳月ってもんを感じるね......この人、タメ歳なんだよな。今も超格好良い。ザブと一緒に00年代以降の棚を掘ってて見つけて、俺が「これ好きなんだよね」って言うと、「ああ、それは俺がアシスタントしたやつだよ」と。発売数的にも貴重なようで日本で買おうとするとややしっかりめの値段が付いてたりする。「マイルズはすごくファニーな人で、レコーディング中もハッピーだった。楽しいレコーディングって大事だよな」うん、同感。
*Scott Walker "Bish Bosch"
パペッツつながりと言っていいのか、彼らの作品の大きな影響元だと思われるスコット・ウォーカー大先生(御歳72歳)の今のところの最新作。ダンディな歌声の中にいろんなジャンルの音楽が内包されていて、メロディは耽美的なのにトラックがどこまでも実験的。長い曲もあって、アナログは2枚組だがB面は1曲のみである。これもザブの名前がクレジットされている。レコーディング中にもちらっとザブの口から彼の名前が出て来た。良いメロディがある時はそれだけで説得力があるから、サウンドで実験してみた方がいい、新しいものが出来るかも知れないし、失敗したら違う方法にトライすればいいだけなんだから。ザブはいつもシンプルで大事な発見をくれる。バンドの最低限の音に加えて様々なダビングをして厚み、奥行き、倍音を生み出す。一つ一つはささやかなパーツであってもミックスすることで新しい何かが生まれる。スコット・ウォーカーの音世界はその究極型だ。
ザブの仕事はCDやストリーミングでももちろん聴ける。スティングなどいくつかの作品でグラミー作品になったこともあるみたい。最近のだとデヴィッド・ゲッタとかラナ・デル・レイとかアジーリア・バンクスとかサンファとか。彼のサイトにはU2とかアリシア・キーズとかディジー・ラスカルとかマーク・ロンソンとかビヨンセとかタリブ・クウェリとかレイザーライトとか書いてある......世界は広いし面白い。ザブは俺たちにとって少しだけ世界を近づけてくれた恩人。彼の最新の仕事はア・フラッド・オブ・サークルだよ。まだまだ自分の足で飛び込んでいかなきゃわかんないことばかり。ほとんどスタジオにいたけど、楽しい夏だった。
佐々木亮介 / a flood of circle
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