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a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第16回】

2018年02月号掲載

a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第16回】

A FLOOD OF CIRCUSというロックンロール・サーカスを企てた。絶賛開催中である。ロック・フェスティバルは日本に数あれど、フェスごとツアーしているものは国内にはまだないでしょ。俺は地元ってもんがないんで、開き直って動き回ってやろうとそういう訳で編み出した楽しい祭である。と言ってもまだまだこれから育てていこうという段階だ。だから巡業はタイバン・ツアーの形をとっている。初日京都と2日目姫路はDizzy Sunfist。ネタで曲を書くんじゃなくて、シンプルにとてもきれいなメロディが書ける格好いいバンド。ライブも凄いハイ・テンションで観ていて気持ちいいくらいだ。現在は3日目金沢と4日目新潟を終えたところでこれを書いている。タイバンはOfficial髭男dism。彼らは90年代的Jポップのような親しみやすさとソウル・ミュージックのテイストのブレンドが本当に絶妙で、藤原聡のボーカルは「こんなに歌えるやつ今他に思いつかない」というレベルで素晴らしい。
とそんな刺激を受けつつ、金沢では雪道を踏みしめながら隙を見てレコード店をディグ・ディグ。金沢は蓄音器館なんてものがあるほど、レコードに親密な街の一つなのである。


第16回 金沢Exile Records編

石川県金沢市竪町14-1 タテマチビル3F

金沢には良い店がいくつかあるようだけど、エクザイルは中でも格好いい店である。海外のレコード店のような充実度と良い意味での無骨さがある感じ。壁面のラインナップもシブく、ずらっと並ぶそれを眺めて歩くだけでもテンションが上がる。店の一番奥にはデレク&ザ・ドミノス「レイラ・アンド・アザー・アソーテッド・ラブ・ソングス」のバージョン違いの盤がずらっと10枚ほど飾られていて、それが店の顔のようになっていた。あのジャケットの上品なようで情熱的な雰囲気がこの店のカラーなのかなと勝手に解釈して勝手に納得。品揃えは基本的にオール・ジャンルだけどジャズやソウル、クラシック・ロックの棚の面積が大きく、「ザ・レコ屋」という感じ。

ちょうどOfficial髭男dismとタイバンというタイミング、彼らがライブのリハーサルでカルヴィン・ハリス「スライド」を演奏していたのが印象深く、打ち上げでフランク・オーシャンの話なんかもしていたのでブラック・ミュージックを掘り出したいモードだった。そこでなんとなくチョイスしたのは、ブラック・ミュージックの中でもちょっとだけオルタナティブな2枚。


*Bridges / Gil Scott-Heron & Brian Jackson(1977)

今じゃカニエ・ウェストを生んだ街ではなくチャンス・ザ・ラッパーがトレード・マークの街って感じのシカゴは、もっと昔にはギル・スコット・ヘロンという偉大な詩人を生んでいる。彼の凄みは、社会派詩人としての具体的なメッセージの強さだけじゃなくて、特に鍵盤奏者でありコンポーザーであるブライアン・ジャクソンと一緒に演っている頃のジャズとファンクの混ざったサウンドの格好良さに感じられる。この連載でもザ・エックス・エックスのジェイミー・エックス・エックスがギルの作品をリメイクしたアルバムについて言い及んだことがあった気がする......影響力は大きい。ギルの「ウィ・オールモスト・ロスト・デトロイト」はカニエがプロデュースしたコモンの「ザ・ピープル」で早回しで使われている。ジャミロクワイがパクってるなんて話もある......そしてジャケットが最高。彼のアルバムのジャケは大体変で、格好いい。ちなみに俺がギルの一番好きなところはその声である。


*Saturday Night Live / Trouble Funk(1983)

ブチアガるライブ盤。ジャケット通りの熱狂的なテンションで収録されている。なんて気持ちいいんだ!ワシントンD.C.出身のトラブル・ファンクの音楽は、「ゴー・ゴー」と呼ばれている。ジェームス・ブラウンの曲のようなファンキーなビートに、延々とラテン・パーカッションがなり続け、ホーンやシンセサイザーなど派手な楽器が乗っかる。ラップとアジテーションの中間のようなボーカルは、バンドのメインというより楽器陣と並列のように聴かせている。日本では例えば久保田利伸さんのヒット曲にこのゴー・ゴーのニュアンスが感じられる。それにしてもトラブル・ファンクの作品はきっちり録音されたアルバム以上にライブ盤の方がアガる気がする。それは1曲を長い時間かけてグルーヴさせていくスタイルと、ボーカル偏重でないアゲ方だからだろう。

これから先も巡業ツアーは続く。SAKANAMON、teto、SIX LOUNGE、LAMP IN TERRENという面白いラインナップを誘ってある。そしてA FLOOD OF CIRCUS 2018本編はUNISON SQUARE GARDEN、髭、Large House Satisfaction、CHAI、SIX LOUNGE、The Hosomes(俺、爆弾ジョニーキョウスケ、DOES赤塚ヤスシ、go!go!vanillasジェットセイヤというメンツ)が出演する。すっごい楽しくなっちゃうよ。
んでもって2月21日a flood of circleの超ヤバいニュー・アルバム「a flood of circle」がリリース。今年はぶっ飛ばしまくりますんでよろしくどうぞ。アナログも出したいな。

佐々木亮介 / a flood of circle

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