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INTERVIEW

Japanese

キュウソネコカミ × Marshall

2024年11月号掲載

キュウソネコカミ × Marshall

Member:ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt) ヨコタ シンノスケ(Key/Vo)

Interviewer:米沢 彰 Photographer:濱谷 幸江

ファッションだけじゃなくて音もこだわってるんだぜ、っていうのをちゃんと表現できてる


-アプリも試してみましたか?

ヨコタ:イコライザーがいろいろあって面白かったですね。名前が付いたプリセットを選べるだけのものは結構あると思うんですけど、イコライジングのバーが触れるっていうのはだいぶ音楽的でいいですよね。

ヤマサキ:めっちゃ頑張ってええの探して今日出しとこうかなと思ったけど、なかなか定まらんかった。

ヨコタ:おすすめカスタムね(笑)

ヤマサキ:結局、プリセットのミッド・リダクションが俺は好きやって。

ヨコタ:あー分かる。

ヤマサキ:で、俺は今そのミッド・リダクションとMarshallサウンドを使い分けるようにしてる。Marshallサウンドは家の中で使って、外出たときはミッド・リダクションにしたら聞こえがまた良くなるというか。雑踏の中ではミッド・リダクションのほうが音取りやすいっていうことで、その使い分けをM ボタンに設定しています。

-使いこなしていますね(笑)

ヤマサキ:だから外出たらM ボタンを押すっていう。

ヨコタ:サザンオールスターズっていっぱい音が入ってるんですけど、印象的にはやっぱりヴォーカルがバーンって立ってるイメージがあるじゃないですか。でもローを減らしたらパーカッションもすごい下がるんですよ。ちょっと細かい話なんですけど、生でパーカッションを録ってたらそうなるんですよね。打ち込みでやると下が上手くカットされていて、曲によってはそうなってたりして。そういう聴き分けをして割と勉強になっていますね。パソコンでもやってたんですけど、このアプリだけでやれるのでふっと思いついたときに試せるのが便利です。

-そもそもの解像感が高くて音域ごとの調整が細かくできるから、そういう使い方もできるんですよね。

ヨコタ:バンドマン目線で言ったら、曲をコピーするときもどこを上げたらどの楽器が一番目立つかも分かるし、それだけ聴きたいときにポイントを押さえられるっていう。

-ヤマサキさんはM ボタンをもう使いこなしていましたが、カスタムで割り当てられもしますけど、最初の設定ではSpotifyで自動的に楽曲がセレクトされて再生されるようになっていて、そういうMarshallの姿勢もよく見えますよね。

ヨコタ:めちゃくちゃ音楽目線ですよね。

-スマホとかSNSに対するメッセージ性の強い楽曲を作ってきたお2人の意見を伺えればと思うんですが。

ヨコタ:そういう分野ですからね、俺たちは(笑)。

ヤマサキ:最初にM ボタンをタップしたら、初めの2、3曲はチッていうような感じで。

一同:(笑)

ヨコタ:どういう目線(笑)? 浅いねみたいなこと?

ヤマサキ:そう。"はいはい"みたいな。それでもめげずにタップし続けてたらやっぱ出会いがありましたよ。聴いたことのないアーティストを出してきて、じゃあこれはどうだ! みたいな感じになって。そこで出会ったTito Double Pっていうアーティストがすごく面白いんです(※音源を再生する)。

ヨコタ:どこの国? 南米っぽい。

ヤマサキ:このアーティスト、月間のリスナー数が2,000万人とかいて。俺がめちゃめちゃ売れてると思ってる日本のアーティストさんの何倍ものリスナーがいて、"俺の知らない世界めっちゃある! 面白い!"ってなって。だから"M ボタン、ヤバすぎる"ってなりましたね。

-面白い発見ですね。

ヤマサキ:それも急にですよ。"チッチッ、こんなもんかい"って。"日本のリスナーだからこういうのを出してるってことか"と思ってたら急に放り込んでくるから(笑)。

ヨコタ:いっぱい聴けるのに、自分が選んだ音楽しか聴かないっていう時代じゃないですか。わりとみんな好きなものだけ聴いてる、みたいな。僕もそうだし。そこに出会いがあるって結構大事なことだし、その体験って結構いいことじゃないかなって思いますよね。

-そんなSNSやスマホをよくネタにしているなかで、今作『出現!鼠浄土』でも「正義マン」で今のSNSの現象を上手く切り取っていて、"どうやったらこんなアイディアが出てくるんだよ"って本当に思いました。

ヤマサキ:"正義マン"って誰かが作ったワードっすよね。それが出てきたときにインスピレーションが湧きました。"世の中こんなんじゃなかったやろ"みたいな。

-MVも飛び込みから始まって、おでんが出てきたり、いろんなネタがちりばめられてて。

ヨコタ:アルバムを作るときに何転かしたんだよな。"正義マン"ってテーマは面白いけど、どっち目線に立つかというか、"いいことをしているつもりだけど、やりすぎじゃないの?"とか、"いいことをしたらダメなの?"って話にもなってきて、でも結局どうしようもないじゃないですか。それで監督(加藤マニ)と正義マン側か取り締まる側か、どっち側にしたらキュウソっぽいかなっていう話をめっちゃしたら、マニさんが"とりあえずやれるもん全部やろう"となって。1個ずつ取り上げるとちょっと角が立つけど、パパパパパって入ってくればみんなライトに観れるっていう。"アハハ"で済むというか。

-人前に出るキュウソさんの立場からいくと、本来は正義マンから食らう側のはずなのに上手くシュッと避けてて(笑)。

ヨコタ:(笑)本当はそうなんですよね。本当に監督が上手いんです。見え方をすごい気にしてくれる。絶妙なテーマなんで絶妙なMVにするしかないっていう(笑)。

ヤマサキ:誰がこんなこと歌うねんシリーズやもんね。

一同:(笑)

-(笑)でも、"正義"が"犠牲"に変わっていくのがすごすぎて。

ヤマサキ:あれはマニさんのセンスですね。

ヨコタ:めちゃめちゃすごいですよね。マネージャーが一生懸命ずっと書いたのに、一瞬で扇風機で飛ばされて。でも、あれもきれいに書けたやつだけ出してるからね。ありがとうございました。

-出てる以外にももっと書いてるんですね(笑)。でもあれはすごい痛烈なメッセージになってて、すごくキュウソらしい形になっていますよね。

ヤマサキ:皮肉ですよね。あとはブルースで、嘆いてるっていう。"それでいいの? 悲しいよ"って。

-そのあたりは「ファントムヴァイブレーション」(2013年リリースの1stミニ・アルバム『ウィーアーインディーズバンド!!』収録曲)から繋がってきているものもありますよね。

ヤマサキ:10年経ったらこんな曲になるっていう。スマホは臓器で手放せなくなった結果、人は潰し合いに走った。

ヨコタ:メジャーで10年やってたらどっちかに解脱してそうなんですけどね(笑)。もっと腐ってるか、もっと"みんな大丈夫だよ"ってなってるかだと思うんですけど、わりとずっと細かい怒りが多くて(笑)。

ヤマサキ:今は大きいステージで披露させてもらう機会も増えてるんで、そういうところでこういうテーマをぶちかませるのがすっごい痛快ですね。

-でもそれはすごい大事で。"巨悪と戦う"みたいなのってかっこ良さそうでいて、ズレてる人たちも多いじゃないですか。

ヨコタ:分かります。そっちのほうが見え方としては分かりやすいからなんでしょうけど、そこで一部の人たちに合わせてるとあんまり本質をとらえられてないっていうか、"それ言い出すと別にどっちも悪くはないだろ"って話になるじゃないですか。こっちだって別にどっちが悪いって話もしてなくて。あとはもっと思想的なところをSNSで言ったりしていて、"いや、ミュージシャンなんだからそれを曲にしてよ"って。曲にするのは大事ですよね。