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INTERVIEW

Japanese

SHE'S

2019年02月号掲載

SHE'S

Member:井上 竜馬(Key/Gt/Vo) 服部 栞汰(Gt) 広瀬 臣吾(Ba) 木村 雅人(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

未来なんて信じてないけど、信じたい自分がいる。作品を通してその二面性が描けた


-「月は美しく(Album ver.)」は、シングルに収録されたもの(『The Everglow』収録曲「月は美しく」)とはまた装いが異なるSHE'Sらしいバンド・アレンジになりました。

井上:WEEZERの情けない感を意識しました(笑)。もともと曲を作ったときからメロディやコード感がお気に入りやったので、アルバムに入れたくて。アレンジ2パターンとも、同じタイミングでレコーディングしたんです。

服部:僕はシングル・バージョンのフレーズを詰めてから、アルバム・バージョンで差をつけることを考えて、アルバム・バージョンのギター・ソロでハモリを入れたらハマるなと思って入れました。ギターのハモリは、以前からやりたいと思いながら初めてだったので、これも新しい挑戦ではありましたね。

木村:僕は(服部とは)逆で、先にアルバム・バージョンからフレーズを作っていって、そこから引き算をしてシングル・バージョンを考えていって。だからアルバム・バージョンは考え込まずに、自分の中からスッと出てくるものをハメていきました。

-「ミッドナイトワゴン」もアコギが効いた洒落たアレンジです。服部さんがアコギを弾いてらっしゃるんですよね?

井上:そうです。ずっと栞汰にアコギを弾いてもらいたいなと思っていたので、ピアノ弾き語りで作ったものにアコギのフレーズ、ソウルの要素やゴスペルっぽいコーラスを入れていきました。Sam Smithっぽいイメージにしたくて、楽器がなくてもこれとこれ(※指を鳴らしてクラップをする)で成り立っちゃうような曲にできたらと思ってましたね。

服部:もちろんアコギは持ってるし弾くこともあるんですけど、そこまで力を入れてやってきていたわけではないので、最初に竜馬が曲を持ってきたときにも"これアコギでやるの?"と聞きました(笑)。でもループしてるフレーズがすごく良かったので、そこにちょっとだけ足して、それをキープしながら弾いていって。この曲が作れたことで、またアレンジに新しい可能性が広がったなと思いますね。

-アルバムのラストの「Stand By Me」は「Curtain Call」(2016年リリースの3rdミニ・アルバム『She'll be fine』収録曲)を脅かす名曲ではないでしょうか。

井上:「Curtain Call」を豪華にした曲ですね(笑)。「Curtain Call」はライヴハウスのイメージがものすごく強い曲なんです。これから先、どデカい何万人規模の会場でライヴをする日がもし来るとして、そこで「Curtain Call」をギター弾いて演奏するのもそれはそれでエモーショナルやと思うんですけど、もっとスケールが大きくて肉厚な音の中で歌うのが感動的やなと思った。「Curtain Call」が小声で"ありがとうな"と言っているイメージなら、「Stand By Me」は肩バンバン叩いて"うぉ~! ほんまありがとうな!!"って感じ(笑)。小さいところなら小声でも"ありがとう"は伝わるけれど、大きいところやったら"サンキュー! Stand By Me!!"ってバーン! と言うた方が伝わると思ったんです。

-Then=あの時、で過去のことを歌う曲が多いなか、この曲は唯一明確にThenが未来という意味で使われているところもドラマチックだなと。「Set a Fire」で"未来なんて信じていない"という歌詞があるから、なおさら重みを感じます。

井上:人間自体が持っている不安定さやちょっとした矛盾が表せたかなと思います。未来なんて信じてないけど、信じたい自分がいる。どっちにフォーカスを当てるかによって、「Set a Fire」みたいな曲も必要やなと思います。作品を通してその二面性が描けたので、楽しかったですね。

-不確かなことに希望を抱けるのは素敵なことですしね。それは今までの経験があってそう思えるのでしょうし。キャリアの賜物とも言うべき3rdフル・アルバムだと思います。最初に聴いたとき、SHE'Sのドキュメント映画を観ているような印象があったので、タイトルを"SHE'S"にしようか悩んだとおっしゃっていたのは、結構腑に落ちるところがあって。

井上:4枚目は"SHE'S"にしたいですね。"4(し)"ですし!

服部:"あぁ~"ってならへんわ。掛け方がダサい(笑)。

井上:発売も4月にしましょう(笑)。

-あははは(笑)。SHE'Sはスタイリッシュな面もあり、と思えばMCで笑いの取れる達者なおしゃべりや、"こんなこともやっちゃうの?"と思うような身体を張ったバラエティ的なこともなさるし......これまでロック・バンドが踏み入れていなかったところにどんどん突き進んで、セオリーを壊していっているところも痛快だなと(笑)。

井上:あははは! 最初に言ったことに戻るんですけど、ロック・バンドはこういうことをしたらあかんとか、そういうのは時代遅れやと最近すっごく思うんです。ロックは社会からの自由を求める思想のもと生まれた音楽のはずやのに、"ロックってこうだよね"みたいなものが多すぎて、めちゃくちゃ縛られてるなぁと。それは音楽そのものが持っている自由とは全然違うものになってしまっている。パッと聴きでも"おっ?"と引っ掛かるのがピアノ・ロック・バンドやと思うので、ポップと言われようが構わない。これからも世の中の固定概念やジャンル、ボーダーに縛られず曲を書きたいし、活動を続けたいですね。