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LIVE REPORT

Japanese

SHE'S

Skream! マガジン 2021年08月号掲載

2021.06.26 @日比谷公園大音楽堂

Writer 蜂須賀 ちなみ Photo by Shingo Tamai

天気は曇り。暑すぎず寒すぎない野音日和と言える日に、"SHE'S 10th Anniversary「Back In Blue」"東京公演は開催された。SHE'Sが日比谷公園大音楽堂のステージに立つのは、2012年、"閃光ライオット"のファイナル・ステージ以来。彼らにとってここは、東京初ライヴの地であり、"曲を作るだけで幸せだった→自分たちの音楽が初めて人に届いた気がした"という変化から、音楽の道に進む意思を固めた場所でもあった。

そんな背景もあってか、木村雅人(Dr)が初めに鳴らしたリズムからして力強く、バンドは気合十分。また、1曲目の「Morning Glow」、"後退も前進も/停滞すらも/全て意味あって/僕は 日比谷野音へ辿り着いた"という歌詞替えがSHE'Sの10年と重なっていく。いつどの日のライヴだって等しく大切なことに変わりはないだろう。しかし、この日ばかりはどうしても特別になってしまう感じがバンド側にも観客側にもあり、それが愛おしい。

「Back To Kid」のような初期曲も、広瀬臣吾(Ba)がシンセ・ベースとエレキ・ベースを使い分ける最近の曲も披露した前半戦は、服部栞汰(Gt)のフレーズが空へと響く「Your Song」で終了した。日が落ち始めた頃の中盤ブロックでは、井上竜馬(Key/Vo)がグランド・ピアノを演奏した曲も。バラードを立て続けに鳴らすバンドの音には感情がグッと乗っていて、特に、曲終わりに呼吸を整える井上は各曲の世界に入り込んでいる様子。4人の緊張感は客席にも伝わり、空気を壊したくないからか、あるいはシンプルに見入っていたからか、曲間で拍手が起こらない場面もあったほど。演奏に没入するバンドとステージを見守る観客、二者を結ぶ音楽しか存在しない時間は美しいものだった。

若き日をしみじみ振り返るMCのあと、"俺たちは心地よい夜風さえも追い風に変えてしまうんやけどな......って始めたらびみょい?"(井上)、"(MC内で)夜風って2回言ったあたりから気づいてたけどな"(服部)と、ずっこけたくなる(しかし彼ららしい)やりとりから「追い風」へ。スモーク大噴射には驚いたが、SHE'Sらしさがふんだんに詰まったこの曲が、アニバーサリー感溢れる演出の中で鳴らされるのは感慨深い。本編ラストは「aru hikari」。ここで井上が、観客にスマホのライト点灯をお願いし(4年前のライヴでの光景が印象深かったのだそう)、"僕らには僕らの日常があって、あなたにはあなたの人生があって、ただの他人なのに限りなく愛おしい他人になって。時々目の前が真っ暗になるけど、見失ったりするけど、この光を目指して何度でも歩いていこうと思います"と伝えていたのが印象的だった。

そしてアンコールで、5thアルバム『Amulet』リリースと初の日本武道館公演の開催を発表。あなたとともに進んでいきたいと伝え続けたバンドが、その言葉の通りに歩んできた先にあったのが、今回のアニバーサリー・ライヴだった。だからこそ、武道館発表の瞬間には、さらに大きな歓喜と感動で野音が包まれることとなる。重大発表後に「遠くまで」を演奏する流れは、メジャー・デビュー発表時を彷彿とさせるし、ラストは納得の「Curtain Call」だし......と、最後までグッとくる場面多数。そんななか、"今は何も怖くない"と言い切る井上が頼もしかった。ここ1~2年でバンドの認知は急速に広がったが、対内的な充実が対外的な評価を連れてきていることは、バンドとファンが一番わかっているはずだ。"何も怖くない"という気持ちはきっとみんな一緒。武道館には期待しかない。


[Setlist]
1. Morning Glow
2. Freedom
3. Dance With Me
4. Masquerade
5. Back To Kid
6. Higher
7. Ugly
8. Your Song
9. ミッドナイトワゴン
10. White
11. Letter
12. Ghost
13. Spell On Me
14. 追い風
15. The World Lost You
16. C.K.C.S.
17. aru hikari
En1. 遠くまで
En2. Curtain Call

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