Japanese
SHE'S
2016年10月号掲載
Member:井上 竜馬(Key/Vo)
Interviewer:沖 さやこ
今年6月にメジャー・デビューを果たした大阪出身のピアノ・ロック・バンド SHE'Sが、早くも2ndシングル『Tonight / Stars』を10月19日にリリースする。初の両A面となる今作は"夜"がコンセプトとなっており、表題曲の「Tonight」は優しく寄り添うミディアム・ナンバー。もうひとつの表題曲「Stars」は、バンドにとって初の主題歌の書き下ろしである。メジャーにフィールドを移し、様々な刺激を得る彼らのモードが感じられる全3曲。今作について、フロントマンの井上竜馬に話を訊いた。
-6月にメジャー・デビューして、バンドやご自身に環境や心境の変化はありましたか?
今回の2ndシングルをリリースするにあたって、やっとメジャーというものを認識して、身体に馴染んできた感じはありますね(笑)。周りからのリアクションが増えたし、フェスにこれだけたくさん出たのは今年の夏が初めてで、競演するアーティストも違いが見られて。"メジャーの場で活躍するアーティストはすごい人ばっかりやな......そこに勝っていくために何年も努力し続けないとあかんねやな"とメンバー全員が改めて思って。それはすごく大きな経験でした。僕らがどこで生きているかというとライヴの現場なので、ひとつひとつのライヴでどんどん変わっていきたいですね。
-そしてメジャー・デビューから約4ヶ月のインターバルで届けられる『Tonight / Stars』は2ndにして両A面シングル。Track.1「Tonight」はラフな雰囲気のSHE'Sが感じられるミディアム・ナンバーだと思いました。7月の東名阪ツアー(※"SHE'S Major Debut Single「Morning Glow」RELEASE TOUR~The Everglow -chapter.1-~")のMCで"友人に向けて書いた曲"とおっしゃっていましたが、どういうエピソードがあるのでしょうか。
友達が心の病気にかかったことをきっかけに作った曲で。よく相談を受けていて、シビアな話や弱音を聞いていたんです。"死にたい"と言われることもあったし――それで"どういう言葉を渡したらいいんやろ"、"どうするのがいいんやろ"と考えて、その中で生まれた曲で。だからそのとき思ったことが歌詞にそのまんま入ってます。恋人のことを歌っているという捉え方もできるかもしれないですけど、本質はそこですね。その友達は"幸せが何かわからない"、"楽しい気分でも、それが終わることを考えてしまってすごく悲しくなる"とも言っていて。幸せがわからんというのは嘘ではないけど、幸せであることを幸せだと認識できてないと思ったし、そういうことを感じられるのは"生きてこそ"やと思った。"生きてないと苦しみの先の喜びや楽しみも感じられへん。どれだけ苦しくても今夜を乗り越えて朝を待とう"とよく話してたんですよね。
-セルフ・ライナーノーツにも書いていらっしゃった、"小さくなってしまったロウソクの灯りを、どうか今夜も灯したままでいてほしい"という願いですね。
やっぱり夜はいろいろ考えてしまうし、ちょっと"うっ"となってしまう、気分が落ちてしまう時間帯やと思うんです。だからこそ"夜を越えて朝を待とう"という話をよくしてたんですよね。今はギリギリかもしれないけど、今夜だけは小さい光を灯したまま乗り越えよう、それを何回も何回も繰り返して生きていこう、という想いがあって。きっと同じ悩みを持つ人はいるやろうなと思って書きました。夜はひとりでいることが一番多い時間帯やし、考え方によっては自分とちゃんと向き合える時間やと思うから。未到達なイメージもあるし、僕にとってはそれを越えていこうという感覚ですね。
-"越えていく"という言葉と繋がると思うのですが、最近のSHE'Sには悲しみに暮れる曲がないと思いました。つらい感情をぶち壊す様子をそのまま音楽にして、ネガティヴな要素とポジティヴな要素を同居させるのではなく、ポジティヴな姿勢や"悲しみを乗り越えたあと"を描いている。
そうですね。『WHO IS SHE?』(2014年リリースの1stミニ・アルバム)は衝動作品みたいな感じで、特に「彼方」(『WHO IS SHE?』収録曲)は暗くて、悲しみだけの歌詞だったんですけど(笑)。曝け出していた時期を経て、歌詞の書き方も変わったというか。僕は悲しみを書いているだけの曲に救われへんから、僕と同じような感覚の人のために曲を書きたかった。だから、悲しみの先で"これから何を見ていこう"、"この先どうやっていく?"というものを提示したい。それが正解か不正解かは受け手次第やし、受け取った人が自分なりの道を探していけたらいいんじゃないかなと思っているので。やっぱり悲観や闇の部分はみんな持っているから、そこを経た先でどういう光を提示するか――それは僕が歌詞を書くうえで、絶対的な芯になっている部分だと思います。
-サウンドもその想いをトレースするような作りですものね。でもこの前、井上さんは"HAMMER EGG vol.4"(※9月30日に渋谷eggmanにて開催された、Skream!×TOWER RECORDS×Eggs共催イベントの第4弾)の出演バンドのフロントマン対談で、ご自分のことを"ネガティヴで積極的ではない"とおっしゃっていて。曲からはそんな様子が全然感じられなかったからとても意外だったんです。
そうですよね(笑)。たぶん、音楽を作るうえでは憧れてる要素も自分に足してると思うんです。それは僕じゃないわけではなくて、僕が変わろうとしている証やと思う。音楽をやっている時間の僕も僕やし、こうやってインタビューで"もっと声張れよ!"と言いたくなるくらい小っさい声で喋ってる僕も僕なので(笑)。いろんな面を持っている自分は疲れるから悩みでもあるんですけど、それも受け入れないと駄目かなって。音楽は理想を掲げられる場所でもあるし、そのまんまの自分でいられる場所でもあるんですよね。
-たしかに、SHE'Sの曲はそれらが共存していると思います。「Tonight」はすべての楽器の音がきれいに混ざり合っている印象がありましたが、どんなサウンドを目指しましたか?
徹底的な引き算ですね。僕らはメンバー全員がサビでどーん! と行きたいタイプなのもあって、今までSHE'Sでバラードを作る場合はそういうサウンド作りをしていたんですけど、今回初めて違う挑戦をして。"ピアノ・ロック・バンドの2ndシングルやからしっかりとピアノの音を押し出したい"という想いに加えて、平坦な道を淡々と行く感覚で曲を作っていたので、サウンドメイキングもピアノやアコギをメインにして、静かに寄り添い合うようなものにしました。
-ライヴのMCやセルフ・ライナーでも、"スッとポケットから取り出して安心したり元気づいたりすれば嬉しい"と書かれていますものね。
「Tonight」は最初、"僕は好きやけど、地味な曲やなー"と思ったんですよ(笑)。スケール感がめちゃくちゃデカいわけでもないし、これがすごく多くの人に響くとは自信を持って言えなかったんです。でも、ちゃんと聴いてくれる人、今までSHE'Sを聴いてきてくれた人には絶対届くはずやし。初めてSHE'Sを聴く人の感覚は僕には未知数なので、そのリアクションはリリースしてからの楽しみというか。曲の評価はリスナーに委ねてますね。
-とはいえもともと、心の病気を抱えたお友達に話していたことがきっかけで生まれた曲ですから、サビでどーんと開けるのはちょっと違うかなと思いますし。曲そのものが持っている気持ちを音で表す、という意味では、今までのSHE'Sがやってきたことなのではないかなと思います。
うん、そうですね。"サウンドを平坦に行きたい"というのも、"ただだらだらと続いていく生活が苦しい"というのを表現したかったから。SHE'Sはこれまでドラマチックな展開をすごく意識してたけど、今までのようなドラマチックな感じには絶対にしないぞ、と思ってました。
-そこにささやかに輝く音色が入るところも、"小さい光"をそのまま表現していると感じました。この曲の一番強い想いは"僕らは生きてこそ"という言葉にあると思うのですが、井上さんはどういうときにそれを感じますか?
"生きてこそ"というのは、"死にたい"と思ったときにしか出てこぉへんのかな......とも思うんです。頻繁に"死にたい"と思うことはないけど、周りにそういう悩みを持った友達がおって、今までいろんな人を見送ってきて思ったのは、"生きてこそ"。絶対そうやと思うし。だから自分がそう思ったというよりは、周りにいる人がそういう状況になったときに強く思った感覚というか。そういうところを見ると、改めて自分のことも客観視するし、大切なものを失いたくない! と思ったら生きるしかないと思うし。たとえ僕から音楽がなくなったとしても、死には繋がらんし。生きてこそ、いろんな楽しみが見つけられるとも思ってます。
-SHE'Sの音楽には井上さんのパーソナルな部分が描かれているのに、いつも外に向いているなと思っていたのですが、それは井上さんの"人を見る"という行為からくるものなのかもしれないですね。
やっぱり人と人なんですよね。人と人で生きてきてるし、これからもきっとそうやし。それが大事だと自分の中で決めてるからこそ――変な言い方ですけど、たとえどんなタイミングで音楽を辞めても生きていけるなと思うんです。自分も含め、人を大事にできたら、困難は絶対に乗り越えられる人生だ、と甘く見てます(笑)。ほんまに自分に自信はそんなにないんですけど、周りの環境や友達に恵まれてる自信はすごくあるので、それが僕の強みですね。リスナーにもそうですけど、周りの人たち全員に常に大きな感謝があります。
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