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LIVE REPORT

Japanese

SHE'S

2019.04.20 @Zepp Tokyo

Writer 沖 さやこ

バンドの"今"と"あの時"を投影した3rdフル・アルバム『Now & Then』。同作で様々なアプローチに挑戦したことで、メンバー個々の力量が上がったのはもちろん、より生々しく細やかな感情表現ができるようになった。加えてセットリストは『Now & Then』の楽曲群を中心に、インディーズ時代の「Un-science」や「Change」、メジャー期の「Over You」など、彼らにとって重要度の高い楽曲を網羅。メンバー4人の存在感や、バンドの結束がダイレクトに伝わってきたライヴだった。

「The Everglow」で幕を開けると、鮮やかな音像とステージ上のふたつのミラーボールによって場内が一気に光で包まれる。浮足立つことなく臆することもなく堂々と勇敢に演奏する4人の姿は、すでに王者の風格を感じさせた。その後も彼らの持ち味である華やかでスケールの大きな楽曲でもって会場を掌握。2,700人キャパのZepp Tokyoが手狭に感じるほどだ。

エレクトロ・サウンドを大胆に取り入れた「歓びの陽」と「Clock」はスタイリッシュでありながら情熱的で、バンドの地力が楽曲をよりリアリスティック且つドラマチックに響かせる。続いての「Set a Fire」ではさらに4人の気迫に満ちた演奏で観客の意識を離さない。井上竜馬(Key/Gt/Vo)はパフォーマンスすべてに"絶対にこのライヴを成功させてやる"という強い意志が満ち、服部栞汰(Gt)は往年のスタジアム・ロックやレジェンド・ギタリストのように雄大で説得力のあるギターを鳴らす。木村雅人(Dr)は気っ風のいい晴れやかなビートを放ち、広瀬臣吾(Ba)は淡々としつつも内に秘めた熱さを感じさせる低音で華を添える。井上のピアノ・ソロから入った「Night Owl」は4人の旨味が最大限発揮され、これを追い風に「Flare」でも洗練されたサウンドスケープを作り出した。

服部がアコギのリフで横ノリのグルーヴを作る「ミッドナイトワゴン」、アウトロのギター・ソロが圧巻なロック・バラード「Ghost」、8分の6拍子の洒落たジャズ・テイスト・ナンバー「月は美しく」と、4人のグルーヴで会場一帯を巻き込む。特に「月は美しく」のダイナミックでありながら柔らかい空気感は、満天の星空のように輝かしかった。

「Sweet Sweet Magic」ではソロ回しを披露し、「Dance With Me」では同曲のミュージック・ビデオでお馴染みの"レインボーちゃん"がゲストとして登場。ミュージック・ビデオ同様カラフルなステージを展開する。本編ラスト前に井上は"背中をバシーンと叩けるようなバンドではないけど、倒れてきてもええんやで、と言えるようなバンドでありたい"と言っていたが、そのあとに披露された「Stand By Me」は背中を押すには充分なくらい凛々しかった。

アンコールでは"今年は心について考え直そうと思ってます。そんなアルバムが作れたらいいなと思いつつ"と井上が言い、タイトル未定の新曲を初披露する。これまでのSHE'Sと比べるとセンチメンタルな成分が強く、涙を流しながら傷んだ心を抱きしめるような曲という印象を受けた。ラストの「Curtain Call」の前、井上は"変えたくないこともいっぱいあるけど、変わりたい"と語っていた。変わることを恐れず、時に立ち向かいながら作品を作り続け、それらをもれなく自分たちの武器にしてきたSHE'Sだからこその発言だと思う。最大キャパ・ワンマンという達成感以上に、未来に懸ける高揚を音楽で伝えたツアー・ファイナルだった。

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