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LIVE REPORT

Japanese

SHE'S

Skream! マガジン 2021年03月号掲載

2021.02.22 @吹田市文化会館 メイシアター 大ホール

Writer 三木 あゆみ Photo by HAYASHI MACO

2021年、バンド結成10周年とメジャー・デビュー5周年のアニバーサリー・イヤーに突入したSHE'S。この記念すべきアニバーサリー・イヤーのキックオフ公演が、2月22日に彼らの地元である吹田市文化会館 メイシアターにて開催された。学生時代の合唱コンクールや、ピアノの発表会、さらにはメンバーの成人式も行われたという思い出深いこの場所での公演は、彼らにとってもファンにとっても、特別なものになっただろう。なお本公演では生配信も実施されており、今回のレポートは配信で観ることができた彼らの姿をお届けする。

SEの「Lay Down (Prologue)」がいよいよ幕開けるステージへの期待を膨らませるなか、井上竜馬(Key/Vo)、服部栞汰(Gt)、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)の4人が登場。そして1曲目、イントロのピアノが響いた瞬間に息を吞んだ。鳴らされたのは「Voice」だった。この日は、新旧織り交ぜたセットリストで、彼らの10年を辿ることができる内容となっていたのだが、バンド初期の楽曲であるこの曲を最初に位置づけた理由はきっと大きいだろう。観客の顔を見たからなのか、井上がとても柔らかい表情で歌っているのも印象的だった。様々なスパイスが混ざったダンス・ミュージックっぽさもある「Unforgive」で、観客の身体を揺らして徐々に熱を上げていき、続いて希望に満ちたサウンドの「Un-science」へ。シンガロング部分では、感染症拡大防止のために大きな声を出すことができない観客に向けて"心の中でいいよ!"と井上が伝え、観客は声を出す代わりに手を挙げ、手拍子をし、全力でアクションを見せていた。

"吹田のみなさん、ただいまー!"と服部が挨拶をし、"今日ほど「ただいま」と言うのに相応しい場所はない"と、メンバーそれぞれがこのメイシアターでの思い出を語ったあと、披露されたのは「Night Owl」。"みんなの代わりに今日は僕たちが歌うから!(井上)"と、スモークと青い照明に照らされるなかで歌われたこの曲での真摯な4人の声は、いつになくエモーショナルに感じる。そこから、悲痛な想いが刺さってくるような感情のこもった歌唱を見せた「Clock」、広瀬のシンセ・ベースと服部のカッティングが効いた、洒落たサウンドだが憂いの見える、人の醜さを歌った「Ugly」を続け、次々に表情を変えていくSHE'Sの4人。楽曲の持つストーリーや彼らの創り出す世界観にどんどん引き込まれる感覚があった。

この日、SHE'Sのライヴでは初めて、ステージにグランド・ピアノが置かれた。井上は後方に設置されていたそのグランド・ピアノのもとに座り、念願叶っての生ピアノの演奏だと話す。そのピアノを使用しての演奏となった「Tonight」、「Long Goodbye」はどこか儚げで優しい空気を纏っており、井上もより想いが強くなったのか、言葉のひとつひとつを丁寧に届けていたような気がする。井上がセンターに戻り奏でられた「Your Song」では、楽曲の力強さと"その夢が叶わなくても~続いてる道があるよ"というストレートな歌詞に救われた。

"10年やってくるといろいろあったりもするんですが、この10周年をチームSHE'Sが一番いい状況で迎えられているというのがありがたいです"と木村が結成10周年の想いを語る。そして、リリースされたばかりのシングルの話題に触れ、その表題曲「追い風」をライヴ初披露することをアナウンス(このとき井上が"それでは聴いてください。「追い風 (Instrumental)」"と言い、メンバーから"歌おうや"と総ツッコミを受けていたのは笑ってしまった)。煌びやかな音が降り注ぐ、疾走感のあるナンバーであり、芯の強さを感じさせるこの曲を誠心誠意で届けたあと、井上がマイクを手に持ち、ステージの端から端までを行き来しながら、コール&レスポンス(心の中で)を呼び掛ける。観客が声の代わりに手を挙げるなどの反応を見せ、そのまま華やかなポップ・ソング「Dance With Me」へ。カラフルな照明に照らされるなか、自然と巻き起こる手拍子やサビで手を降る一体感も気持ちが良く、時折映し出されるメンバーそれぞれの笑顔も眩しかった。

再びグランド・ピアノの椅子に座った井上は、自身を温かく迎えてくれる"帰る場所"があるからこそ、東京に出ることができたと実感していると語る。そして、"もう東京に出てきて3年くらい経つけど、なんら変わりのない大阪のリスナーのみなさんに僕たちはものすごく助けられています。いつもありがとうございます"と改めてファンへ感謝を述べた。"SHE'Sが好きなあなたにとっても、SHE'Sがおうちみたいな帰ってこれる場所であってほしいし、あったかい存在であってほしいと思います"、"10周年を迎えましたが、これからも末永くよろしくお願いします"と伝えると、観客からは想いの込められた長い拍手が贈られた。

ラストはこの地元での公演で歌おうと決めていたという「Home」。大事に大事に紡がれる歌とメロディが染みわたる1番から、力いっぱいに発せられた"帰ろう"の声には鳥肌が立った。そして、"みんなで一緒に歌おうぜ! 心の中でね!"(井上)と呼び掛け、メンバー全員と観客の(心の中での)シンガロングを会場いっぱいに響かせたフィナーレで、"SHE'S 10th Anniversary「From 19」"本編が終了した。

井上はライヴ終盤、この公演について"SHE'Sの活動の中でもすごく大事で忘れられない日になる"と話していた。思い出を辿り、様々な愛を感じ、胸がいっぱいになるような、温かくて幸せに満ちた公演だったことは配信で観ていても受け取ることができた。この公演を経て、ここから始まるSHE'Sのアニバーサリー・イヤーは、きっと素晴らしいものになるに違いない。そう確信させてくれる公演であった。

LIVE STREAMING INFORMATION
"SHE'S 10th Anniversary「From 19」"

配信期間:~2月28日(日)23:59
[チケット]
¥2,280
受付期間:~2月28日(日)21:30
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