a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第12回】
2017年06月号掲載
前回に続いてアメリカ南部編。テネシー州メンフィスにあるシャングリラ・レコードの話の続き。 メンフィスは、何しろ全米でも犯罪率トップクラスの街である。夜はうろつくべきじゃないらしいが、この店は外せない。それほど素敵なレコード屋だった。前回はロイヤル・スタジオで録音されたハイ・レコードの看板バンド=ハイ・リズムの「オン・ザ・ルース」を取り上げた。今回はロイヤルと対を成してメンフィスを代表するレコード・レーベル、スタックス・レコードにまつわる話。
第12回 メンフィスShangri-La Recordsの巻
<1916 Madison Ave. Memphis TN 38104> PART2店内の模様は前回参照。そして前回同様、「メンフィス・ミュージック」と題された棚の中からディグ・ディグした1枚を紹介する。
*Their Greatest Stax Hits / Rufus Thomas And Carla Thomas
:format(jpeg):mode_rgb():quality(40)/discogs-images/R-1833294-1445933862-5963.jpeg.jpg)
スタックスにオーティス・レディングが入る前、いやブッカーT・アンド・ザ・MGズが看板バンドになる前、いやスタックスがまだサテライト・レコードと名乗っていた頃、最初にレーベルに大ヒットをもたらした名シンガー=ルーファス・トーマスと娘のカーラ・トーマスの作品の編集盤である。A面がルーファス、B面がカーラ、それぞれのリード・シングルが並べられている。
ルーファスは、映画「ワッツタックス」でちょっと意味わからないレベルでド派手すぎるピンクのセット・アップを着ていたのも印象的な、ファンキーという言葉が非常に似合うシンガーである。ワッツ暴動という事件の反動で開催されたワッツタックスという偉大なるコンサートにおいて、彼の演奏中に無数の観客がダンスのために駆け寄ってくるシーンは象徴的であり、感動的だ。ワッツタックスでも演奏された代表的な名曲がここにも収められている。
カーラも、ワッツタックスにおいては親父に負けず劣らずのチャーミングなアフロ・ヘアとド派手なワンピースで登場している。最高に伸びやかなボーカルで、これは音源でも全く強烈に発揮されている。
ワッツ暴動のきっかけはやはり人種差別だった訳だが、その反動として怒りの表現のみならずポジティブな空気を表現していることがルーファス・カーラのトーマス親子の美点の一つであり、そしてスタックス・レコードの偉大さの一つだと感じる。
スタックスの看板バンド、ブッカーT・アンド・ザ・MGズが黒人白人の混合バンドであったこと。これは映画「ブルース・ブラザース」でもばっちり堪能できるけれど、そのことがいかに画期的なことであったか、メンフィスでは肌で感じられることが出来たように思う。
白黒関係なく今のミュージシャン達も70年代のメンフィスの音楽をこよなく愛している。スタックスやロイヤルを舞台にしたドキュメンタリー映画「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」(今年6月日本公開)にスヌープ・ドッグが参加しているのも象徴的だ。
ブッカーT・アンド・ザ・MGズやバーケイズ、ロイヤルのハイ・リズムはそれぞれライバルであったと同時に仲間だったらしい。例えばMGズのドラマー=アル・ジャクソンはハイでも叩いたりプロデュースしたりしていた。だからそこには垣根はない。
だが、ワッツ暴動も含めて当時のアメリカの差別的緊張感は一つのピークにあった時代。垣根と呼べるものが想像を絶するほど多くあったはずだ。だからこそ混合バンドであるMGズとスタックスのサウンドは、実際素晴らしい音楽であると同時に、垣根のない理想や希望を体現する存在であったようだ。
このルーファスとカーラの底抜けに明るいソウルには、明るい音楽であるべき理由がある。暗さを吹き飛ばさんとするユーモアとアイデアとスキルがある。それは戦前ブルースから連綿と繋がっているメンフィスの音楽の態度だと感じる。スタックスの音楽学校の先生が教えてくれた。「ブルースはメンフィスのすべての音楽の根源だよ。ブルースさえできれば何だってできる」と。
スタックスは潰れ、ロイヤルも一時低迷した。今こそ「ブラック・ライブズ・マター」を一つのキーワードにして、緊張感は高まり続けている。前回触れた入国審査での一悶着、その訳を思い巡らす。理想と希望は影を潜めかけている。俺はルーファスとカーラの歌を古臭いと片付けることが出来ない。だって今だって、めちゃくちゃ踊れる音楽だから。
次回はメンフィスより更に南下してクラークスデイル編。とても古いブルースの街で手に入れた、古くて新しいレコードの話。
佐々木亮介 / a flood of circle
Related Column
- 2018.04.17 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【最終回】
- 2018.02.15 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第16回】
- 2017.12.19 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第15回】
- 2017.10.18 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第14回】
- 2017.08.17 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第13回】
- 2017.06.16 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第12回】
- 2017.04.17 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第11回】
- 2017.02.16 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第10回】
- 2016.12.21 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第9回】
- 2016.10.30 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第8回】
- 2016.08.22 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第7回】
- 2016.06.14 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第6回】
- 2016.04.18 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第5回】
- 2016.02.21 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第4回】
- 2015.12.19 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第3回】
- 2015.10.24 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第2回】
- 2015.08.25 Updated
- a flood of circle 佐々木亮介の「ディグ・ディグ・ブルース」【第1回】
LIVE INFO
- 2025.09.18
-
YOASOBI
キュウソネコカミ
LAUSBUB
DYGL
Mirror,Mirror
MONOEYES
終活クラブ
TOOBOE
THE SMASHING PUMPKINS
椎名林檎 / アイナ・ジ・エンド / 岡村靖幸 ほか
打首獄門同好会
the paddles / DeNeel / フリージアン
otona ni nattemo / 南無阿部陀仏 / ウェルビーズ ほか
- 2025.09.19
-
THE ORAL CIGARETTES
a flood of circle
UVERworld
セックスマシーン!!
Bye-Bye-Handの方程式
Redhair Rosy
たかはしほのか(リーガルリリー)
終活クラブ
あたらよ
Aooo
KING BROTHERS
bokula. / 炙りなタウン / Sunny Girl
The Birthday
- 2025.09.20
-
カミナリグモ
Lucky Kilimanjaro
TOOBOE
GRAPEVINE
This is LAST
LACCO TOWER
WtB
キュウソネコカミ
reGretGirl
岸田教団&THE明星ロケッツ
ASH DA HERO
THE SMASHING PUMPKINS
Miyuu
竹内アンナ
ぜんぶ君のせいだ。
PAN / SABOTEN
SHE'S
"イナズマロック フェス 2025"
LAUSBUB
渡會将士
Plastic Tree
ヨルシカ
cinema staff
Broken my toybox
あたらよ
大森靖子
04 Limited Sazabys / 東京スカパラダイスオーケストラ / ザ・クロマニヨンズ / 奥田民生 / ヤングスキニー ほか
ART-SCHOOL
AIRFLIP
"NAKAYOSHI FES.2025"
"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025"
GOOD ON THE REEL
クジラ夜の街 / Dannie May / 終活クラブ / アオイロエウレカ(O.A.)
フラワーカンパニーズ
- 2025.09.21
-
ExWHYZ
HY
豆柴の大群
TOOBOE
カミナリグモ
LACCO TOWER
The Biscats
WtB
キュウソネコカミ
envy × OLEDICKFOGGY
Plastic Tree
Broken my toybox
ぜんぶ君のせいだ。
THE SMASHING PUMPKINS
アルコサイト
ART-SCHOOL
星野源
"イナズマロック フェス 2025"
岸田教団&THE明星ロケッツ
TOKYOてふてふ
ヨルシカ
竹内アンナ
GRAPEVINE
大森靖子
ACIDMAN / GLIM SPANKY / Dragon Ash / go!go!vanillas / Omoinotake ほか
LAUSBUB
Devil ANTHEM.
peeto
KING BROTHERS
"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025"
GOOD ON THE REEL
超☆社会的サンダル / さとう。 / ルサンチマン / SENTIMENTAL KNOWING(O.A.)
PIGGS
- 2025.09.22
-
WtB
reGretGirl
OKAMOTO'S
古墳シスターズ
レイラ
Bye-Bye-Handの方程式
ビレッジマンズストア
Ryu Matsuyama
CENT
- 2025.09.23
-
水曜日のカンパネラ
ART-SCHOOL
Lucky Kilimanjaro
TOOBOE
リュックと添い寝ごはん
古墳シスターズ
Omoinotake
Kroi
TOKYOてふてふ
Plastic Tree
WtB
MUSE / MAN WITH A MISSION / go!go!vanillas
amazarashi
GRAPEVINE
YONA YONA WEEKENDERS
DYGL
cinema staff
Bye-Bye-Handの方程式
Another Diary
adieu
竹内アンナ
Cody・Lee(李)
トゲナシトゲアリ
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.24
-
水曜日のカンパネラ
THE SMASHING PUMPKINS
ドミコ
UVERworld
Kroi
a flood of circle
Hump Back
shallm × sajou no hana
- 2025.09.26
-
This is LAST
the cabs
ドミコ
Age Factory
Aooo
Keishi Tanaka
MONO NO AWARE
トンボコープ
Base Ball Bear × ダウ90000
DYGL
OKAMOTO'S
SUPER BEAVER
otsumami feat.mikan
セックスマシーン!!
YONA YONA WEEKENDERS
- 2025.09.27
-
TOKYOてふてふ
amazarashi
アーバンギャルド
SCOOBIE DO
LACCO TOWER
Academic BANANA
The Birthday / 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ) / 志磨遼平(ドレスコーズ) / GLIM SPANKY / TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU) ほか
ぜんぶ君のせいだ。
センチミリメンタル
LAUSBUB
Awesome City Club
NEE × CLAN QUEEN
Plastic Tree
This is LAST
LOCAL CONNECT
YOASOBI
TOOBOE
MONO NO AWARE
EGO-WRAPPIN' × 大橋トリオ
豆柴の大群
reGretGirl
cowolo
コレサワ
ExWHYZ
レイラ
INORAN
MAPA
LiSA
mudy on the 昨晩
WtB
キタニタツヤ
"ベリテンライブ2025 Special"
藤巻亮太
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.28
-
ナナヲアカリ
NEE × CLAN QUEEN/サイダーガール × トンボコープ
SCOOBIE DO
LACCO TOWER
TOKYOてふてふ
SUPER BEAVER
"いしがきMUSIC FESTIVAL"
cinema staff
ぜんぶ君のせいだ。
YONA YONA WEEKENDERS
コレサワ
SPRISE
Plastic Tree
YOASOBI
リュックと添い寝ごはん
EGO-WRAPPIN' × 大橋トリオ
Age Factory
WtB
TOOBOE
mzsrz
Broken my toybox
古墳シスターズ
RAY
"ベリテンライブ2025 Special"
"TOKYO CALLING 2025"
- 2025.09.30
-
打首獄門同好会
Hedigan's
緑黄色社会
MONOEYES
Mirror,Mirror
ヨルシカ
"LIVEHOLIC 10th Anniversaryseries~YOU MAY DREAM~"
RELEASE INFO
- 2025.09.19
- 2025.09.24
- 2025.09.26
- 2025.10.01
- 2025.10.03
- 2025.10.05
- 2025.10.08
- 2025.10.10
- 2025.10.11
- 2025.10.12
- 2025.10.13
- 2025.10.14
- 2025.10.15
- 2025.10.17
- 2025.10.22
- 2025.10.24
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
OASIS
Skream! 2025年09月号