ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2020年04月号掲載

このコラムを書いている現在は2020年3月25日の午後です。この文章が世に出ている間に、だいぶ世の中の状況も変わっているかもしれませんが、現在の状況を説明すると、前日の3月24日に東京オリンピックの延期が決定し、欧米だけでなく日本の新型コロナウイルス感染者も次々と増えています。

東京都が大規模イベントなどの自粛を4月12日まで延長したため、2月末以降に決まっていたライヴのレポートはほぼすべて中止になりました。フリーランスで動いている身としてはなかなか厳しい状況ですが、なんとかこの自粛による経済的な、何よりウイルス感染による危機的状況を乗り越えないといけません。ひとりひとりの心掛けが重要ですね。

新型コロナウイルスに関連するあれこれで感じることは、リスナーさん含め音楽に関わる人たちの温かさです。ライヴの中止や延期を余儀なくされてしまったアーティストさんへなんとか貢献しようとグッズを購入したり、クラウドファンディングに協力したり、YouTube Liveの投げ銭システムであるスーパーチャットに参加するリスナーさんも多数いらっしゃいます。

そしてバンドやアーティストにとってライヴとは表現の場のひとつ。リスナーに楽しんでもらいたいという一心で無観客の生配信ライヴを行う人々も多いです。打首獄門同好会やNUMBER GIRLなどの生配信はかなり大きく話題にもなりました。その裏には"アーティストのライヴ活動を実現させたい"と熱い心意気で動いている生配信チームの方々がいらっしゃいます。

バンドやアーティストは自分たちを育ててくれたライヴハウスの恩義を忘れません。クラスターとして大きく報道されたことで、ライヴハウスは世間的な風当たりも強くなるだけでなく、次々とライヴが延期／中止になっています。賃料、従業員の給料、水道光熱費などの支払いはすべてライヴがあるからこそ実現可能でもあります。そこでアーティストが声を上げたり、ライヴハウスを守るためのプロジェクトを立ち上げたり、ライヴハウスのYouTubeアカウントから配信ライヴを開催することも少なくありません。

それ以外にも、検温や換気、パーソナル・スペースの確保、マスクの配布など、できる限りお客さんやライヴハウスのスタッフさんの感染リスクを減らす方法で、ライヴを開催するバンドやアーティストも存在します。それもライヴハウスを守りたいという想いが根底にあるからでしょう。みんながみんな誰かを守ろうとしている。そんな義理堅さを持っている文化だからこそ、共倒れではなく乗り越えたいものです。"大変だったね"と笑い合える日を信じて。みなさまどうかお身体にはお気をつけください。