ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2015年05月号掲載

去年の秋以降、amazarashiがとても面白いです。私がメール・インタビューをさせていただいたり、原稿を書いたりするようになったのは2013年の春からなのですが、その前まではとにかく謎が多いバンドというイメージが強かったです。ライヴは映像を観ているようだし、メンバーがどんな容姿をしているかもわからない。ライターを始めて3年にも満たなかった当時のわたしは今以上に未熟で、その人の姿が見えない状態で質問をぶつけたり原稿を書くことは暗闇の空間に叫ぶような状況で、正直戸惑っていました。そしてamazarashiの表現もまた、当時はその距離感があって成立するものでした。

それが少しずつ変わってきたと思ったのが2013年の秋。"RISING SUN ROCK FESTIVAL"への出演、TK from 凛として時雨とのツーマン・ライヴ、秋田さんが中島美嘉へ楽曲提供を行うなど、外に向いた活動も盛んで、ライヴも紗幕の向こうがなんだか蠢いているようにも見えました。そして2014年秋に『夕日信仰ヒガシズム』を聴いて、amazarashiは自分自身の楽曲の世界に自分以外の人の入る余地を作った音楽を生み出したと思いました。同年12月の渋谷公会堂公演は本当に素晴らしくて、紗幕の存在など感じなくなるほど、amazarashiという生身のバンドが客席にいる我々に音を届けていました。ずっと映像の影に隠れていた音楽が、その映像を突き破って飛び込んできた感覚がとても刺激的で、とても嬉しかったです。今年1月にリリースされたシングル『季節は次々死んでいく』でも、4月に行われたアコースティック・ライヴ"あまざらし千分の一夜物語「スターライト」アンコール公演"でも、秋田さんのパーソナルな世界がバンドとチームの力でどんどん広がりを見せていることを感じました。

2年前と同じく今もお会いしたことはないし、どんな容姿なのかわからないけれど、この2年間でamazarashiにもいろんな変化があって、私自身もその都度音源を聴き、メール・インタビューをしてライヴを観に行くなど、携わらせていただく中でいろんな想いを感じました。視覚に囚われていた私を変えてくれたのは、変化を続けるamazarashiです。amazarashiに限らず、取材させていただくアーティストさんから得た刺激で自分が鍛えられているなあと、心の底から思います。

5月13日にリリースされるアンプラグド・アルバム『あまざらし千分の一夜物語スターライト』（※インタビュー記事参照）は、初回公演の模様とアルバム用にレコーディングされた音の両方で成立するものだと思うので、CD＋DVDをおすすめします。amazarashi、どんどん面白いバンドになっています。

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