ライター沖さやこの『アブストラクトマイライフ』

WRITERS' COLUMN

2020年08月号掲載

このコラムを書いているのは2020年7月24日。本来なら東京オリンピック開会式だったスポーツの日です。前日発表された東京都の1日の感染者は360人台で、Go Toキャンペーンが開始されたり、都は不要不急の外出自粛を呼びかけたりと、人の動き方も様々で、なかなかカオスな状況ですが、時代が移り変わるタイミングはだいたい混沌を極めていると、どこかの本で読んだことがあります。いつも以上に先の見えない状況だからこそ、先のことを考えて行動することが大事なのかもしれません。

7月は無料有料や生と録画問わず、加えて音楽だけでなく芸人さんのコントやトーク・ライヴなど、様々な配信ライヴを観る機会に恵まれました。自分が観てみたいなと思った配信ライヴの特徴を考えてみると、"配信でないとできないことをする"ということがわかりやすく伝わってくるものと、配信ライヴの開催目的がはっきりしている且つドラマチックなものの大きく分けて2種類でした。例えばお寺や旅館といった珍しい場所でのライヴや、星野源さんの"10周年記念配信ライヴを初ワンマンを行ったCLUB QUATTROで、同じく7月12日に行う"というコンセプト、空きっ腹に酒の"録画配信だからこそ無観客だからこそ己と向き合うことに注力した"という内容には、どんな景色を見せてくれるんだろうかと興味を掻き立てられました。

そう考えると、やはり配信ライヴは"映像作品"という観点で展開していくほうが人々の心に訴求しやすいのではないでしょうか。観たい配信ライヴを選ぶ理由が、新作映画の予告編やフライヤーをチェックして、映画館で観たい作品を選ぶ理由と少し似ている気がしたのです。そして生のライヴ以上に企画力、コンセプト、意味づけ、コンテンツ力というものが大事になってくるのではないか、そしてそれを事前に積極的に告知する必要があるのではないか、と推測します。

今後も配信ライヴの可能性は広がりそうですし、それこそその場でドラマが展開していくような、MVみたいな世界観のものが出てくるかもしれません。逆に普通にライヴが開催できるようになったとき、配信で用いた技術を生かすステージングも考えられます。今後"観客"と"視聴者"という概念も変わっていくかもしれません。まさに現在は転換期なのでしょう。自分もライターとして、やりたいこととやるべきこと、時代の流れを冷静に見極めつつ、様々な価値観に触れていきたいなと思う今日この頃であります。